表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】もう結構ですわ!  作者: 綾雅「可愛い継子」ほか、11月は2冊!


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

66/80

66.ヴァレス聖王国の後始末

 王女が役に立たないなら、とジュアン公爵は自らの血統を主張し始めた。生まれを疑われる王女を盾にするより、王妹が降嫁した自分の方が確実だと判断したようだ。ある意味、正しい選択だった。


「最初からそうすればよかったのよ」


 私は溜め息を吐く。王女を引っ張り出すから話が拗れるの。肘をついた姿勢を、さり気なく注意される。セレーヌ叔母様は、私に注意した後……視線を伏せた。隣のユーグ叔父様が気遣わしげに叔母様の表情を窺う。


 セレーヌ叔母様に誘われ、四人で庭のガゼボでお茶を飲む。それぞれに特徴的な忠犬を連れて。


「シャル、このまま潰して構わないんだよな?」


 レオはそわそわしながら確認した。私に相談する前に、貴族に許可を出したのね? 悪い子だわ。ぺちりと頬を叩く仕草をした。困ったように眉尻を下げるから、おかしくなって笑ってしまった。


「任せるわ。でもあの子は見逃しなさい」


 言葉を濁しながら、王女は対象外と指示する。逃す先は私が心配する必要はないわ。どこかの貴族に悪用されなければいいだけ。そんなことは言わなくても理解する男だった。


「家族が一緒に暮らすのもいいさ」


 ユーグ叔父様の言葉に、レオは驚いた顔をした。私も正直、驚いたわ。あのユーグ・エナンがセレーヌ叔母様以外を気にするなんて。叔母様は知っていたように、くすくすと笑った。


「意外でしょう? でもこの人って昔からそうなの」


 子供が危険にさらされると助けようとする。何度もそんな場面を見てきた、と叔母様は教えてくれた。騎士の正義感とも違うようで、幼い頃に弟を失った経験のせいだろうと。叔母様があれこれ暴露しても、ユーグ叔父様は動かなかった。


 制止することもなく、けれど同意するでもなく。ただ無言を貫いた。レオは途中で興味を失ったようで、私の毛先を弄り始める。相変わらず、興味の向く先が限定される男ね。


「レオ、ちゃんと聞いて。あの子の行き先、理解した?」


「前王とそのバカ息子のところに置いてくればいいんだな」


「ふふっ、合ってるじゃない」


 私より先に叔母様が笑う。自分の元夫と、バカ呼ばわりされた息子。どちらももう関係ないと笑い飛ばす豪快さは、ルフォルらしいわ。


 王女の行く末は決まった。同時に、切り札を失くした愚かな公爵の未来も……。彼らをどう処分するか、ルフォルの貴族が決断する。私はもう関与しないわ。


 だって、民の生活を豊かにするのが王族の役割でしょう? 大公女である私は、同時にルフォルの姫でもあるの。


「奥様がお呼びです」


 呼びにきた執事に頷き、四人で囲んでいた円卓から立ち上がる。レオがさっと手を差し伸べ、私を支えた。きっと発掘した魔法道具の話ね。私の中で、すべてが切り替わっていく。滅びた国の後始末から、新しい暮らしに向けて――すべては、明るい未来を得る手段だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
回るよ回るよ世界は回る( *´艸`)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ