61.悪役が似合うのよね
国王アシルがいれば、自分の子だと宣言したのか。王の権威がある間に認知されていたら、話は複雑になっただろう。けれど、国王はすでに地位を追われて追放され、国は空中分解した状態だった。
ジュアン公爵が動いたのも、それが影響しているはず。今なら、王位を狙える。王家に近い血筋の公爵家が、保護していた愛人の子である王女。最高の切り札になると思った。その切り札に傷がないか、よく確認して動くべきだったの。いいえ、傷があっても動いたわね。
強欲な公爵の思惑は読みやすい。噂を一蹴して摂政の座に就いたら、息子か親族の男と結婚させて孫を産ませる。その子が男児なら、王女はもう不要なのよ。気が触れたとか、病を得たとか。理由をつけて監禁して地位を奪えばよかった。
次の王は孫で、傀儡として育てるには最適だわ。ルフォルの貴族以外が従えば、簡単に国盗りが叶う。ルフォルと敵対する気がないなら、私達を独立国家で隣国として扱えばいいの。
オータン子爵令嬢が亡くなったとき、セレーヌ叔母様が言った通りよ。
――忘れ形見が、宝物である証拠などないのに――
本当に王の血を引くと証明する方法はなかった。王女は正当な王子であったジョルジュと同じ、金髪碧眼よ。国王陛下の色を受け継いだのね。子爵令嬢は銀髪碧眼で恋人の子爵も金髪……ただし目の色は暗赤よ。
瞳の色が僅かでも暗ければ、赤が入った紫に光れば、浮気の子と呼ばれる。青い瞳って、他の色が混じりやすいの。現時点で金髪碧眼でも、幼少期を過ぎると色が変わってくるなんて……よくある話だわ。事実、右目がほんのり赤いと噂されていた。
「なるほど、恋人の子である可能性が……」
「だが本来の恋人の子と考えれば、子爵令嬢は喜んだのでは?」
「顔立ちで判断できないのか」
憶測も交えて話が膨らんだところで、私はにっこりと微笑んだ。ルフォルの貴族会議は、いつも自由に意見が飛び交う。この点は誇るべき特徴だった。萎縮して言葉を呑み込む者は、ルフォルではないと言われるほど。爵位が影響する社交の会話と、会議での議論は別だもの。
「この噂はまだ消えていない。熾火に風を送ったら、どんな火が燃え上がるかしら……ね」
すっかり悪役だけれど、ルフォルの貴族はにやりと笑う者が大半だった。王女にはお気の毒だけれど、滅んだ国の王位を押し付けられる人生よりマシだと思うわ。役立たずと判断され、ジュアン公爵が彼女を見放したら、保護して生活を保証すればいい。
まだ幼いと呼べる年齢の王女が、傲慢な子でなければいいけれど。保護した後のことを考えながら、私は盛り上がる貴族を見守った。




