24.言葉に尽くし難い ***SIDEル・ノートル伯爵
ルフォルの本家筋である殿と姫を守る。それがル・ノートル伯爵家の誇りだった。本国に残る貴族も多い中、このお二人に命運を賭けたのは、間違いではなかった。確信をもってご先祖様に誇ることのできる功績だと、自負している。
姫が己の心を引き裂くように嫁ぎ、ようやく自由になられた。ルフォルの誇りを取り戻す時が来たと歓喜に沸いた我らは、正装で駆けつける。招待された事実に感激し、姫に戻られたセレスティーヌ様の幸せをお祝いするために。
妻も息子達も、誰もが浮かれていた。王妃であられた時も美しかったが、今は最愛の騎士の隣で美しさを増しておられるはず。女神を崇めるような心境で到着した門前で、目に入れたくないゴミを見つけた。
金にあかせて品のない馬車は、ゴテゴテと飾りが多い。門を開かず、槍の穂先を向ける兵士に感動した。ここは誇り高きルフォルの騎士団長を拝命する俺が、蹴散らしてやろう。
「父上が出るまでもありません。ここは僕が」
息子が先陣を切ろうとするが、首を横に振った。
「そなたは母上をしっかり守れ。よいな」
言い聞かせて馬車から降りる。大股に歩み寄ったところで、屋敷内から侍従が走り出た。兵士に何かを告げると、彼らは嫌そうに道を開ける。何らかの指示が出たのか。国王アシルなど、己の幸運を理解せず害しからもたらさぬゴミだ。
ムッとしながらも、ル・ノートルの家紋を掲げる馬車に乗り込む。当然のように門番からも歓迎されて通過した。
「父上、何があったのですか」
「わからん。だが本家の指示らしい」
到着したアプローチには、ル・リボー伯爵もいた。先日の王宮以来か。さほど前でもないのに、懐かしく感じるほど忙しかった。息子と参加した狐狩りを思い浮かべ、友人であるル・リボー伯爵と挨拶を交わす。先に来た彼は、貴重な情報をもたらした。
「阿呆が通過しただろう。見せつけるおつもりで、姫様が許可を出されたとか」
「なんと! さすがはルフォル本家の姫様だ」
後ろの妻子が順番に挨拶し、互いの家族が揃って披露宴会場へ向かう。アシルが暴れた場合を想定し、武器の携帯許可を申し出た。執事が恭しく一礼し、会場の警護の一端を任される。
整えられた会場は、白と金で美しく纏められていた。参加を許されたルフォルの貴族は、揃って一族の正装キトンを纏う。そのため、神話の一場面のような荘厳さが漂っていた。使われる花はすべて白、緑の葉と相まって清楚な雰囲気を醸し出す。
ヴァレス聖王国の一行だけが、妙に浮いていた。アシルに側近や侍従、数人の貴族が同行する。正装ですらなく、無礼だと眉を顰めるルフォルも多かった。隠すまでもなく、俺もその一人だ。
「姫様だ」
「セレスティーヌ姫がおいでになられた」
会場に歓喜と歓迎の声が広まり、すぐに静まり返る。美しさに息を呑んだ我々に、衰えぬ美貌で微笑みを向けるセレスティーヌ姫。
「なんて……お美しい」
妻の呟きに、掠れた声で「ああ」と同意する。王妃として人前に立たれた時に思った。隣に立つのが、あの騎士であれば……姫はどれほど輝くだろうかと。過去に歯噛みした悔しさを溶かすように、姫は極上の微笑みで会場を魅了した。




