表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/80

18.猛犬ばかりの我が家

 早朝から一騒ぎあったものの、ル・フォール大公家は平和だった。問題があるとれすれば、叔母様の体調がよくないことくらい? でもご機嫌はいいと思うのよ。


 夜通し駆けて到着した愛犬を侍らせ、セレーヌ叔母様は自室でゆっくり過ごすそうよ。これは体調不良が延長される予告ね。執事に命じて、使用人が近づかないよう手配した。もちろん護衛の騎士も不要だ。


 お姫様を守る、最強の騎士が室内どころか同じベッドで警護しているんですもの。


「羨ましい……」


 一緒に散策するレオの、心からの声に苦笑する。


「あら、叔母様相手に浮気?」


 綺麗な人だから一般的に有りだけど、レオは首が落ちそうな勢いで横に振った。


「だったら、今の状況かしら。あなたも私が他の男に嫁いで二十年近く我慢してみる?」


 現状だけではなく、全体を見るのよ。危うくその状態になりかけた私が、笑顔で現実を突きつける。レオの顔色がさっと青ざめ、青い瞳が見開かれた。想像したのか、眉間に皺が寄る。


「羨む前に、想像なさい。私が誰の手を取っているのか、忘れたの?」


「ごめん、シャル。つい」


 まだお父様の許可が出ないから、結婚できない。婚約者としてのお披露目は、この状況だから書面による通達だけ。不安なのはわかるけれど、あなたまで猛犬では困るのよ。


「今日の午後はリュシーに付き合うわ。約束通り、わかっているわね?」


「ああ、任せてくれ」


 私のそばを一時的に離れることになるが、レオはあっさりと承諾した。ヴァロワ王家から放逐された元王子を処分するらしい。浮き足だったルフォルの貴族も、参加を表明する。彼らを率いて追いかけるほどの獲物とも思えなかった。


「……なんでもないわ」


 ここでジョルジュを庇う発言をすれば、より残虐に処理されるだけ。何も言わず無関心を貫く方が、彼の死は穏やかだと思う。ここで生き残れる可能性は考えなかった。


 私のレオが動くんだもの。


「お昼は食べていくの?」


「いや、もうすぐ出るよ」


 名残惜しそうにしながらも、私を屋敷の中へ送り届けた。そのまま出て行く。お昼を食べると言ったら、逆に驚いたでしょう。だって、貴族の昼食は午後のお茶会と同じ時刻だもの。今夜中に帰れなくなるわ。


 屋敷の中を抜けて、裏庭へ出る。馬小屋の隣に、木造の小屋が設置されていた。急拵えなのに、想像より立派だわ。急がせちゃったから、職人の報酬を弾むよう伝えなくちゃ。


「リュシー」


 ちらりと鼻先が覗き、ひくひくと動いた後で飛び出してくる。作ったばかりの小屋の壁が、一部破損した。飛び出した巨大過ぎる犬型ドラゴンは、きゅーんと鼻を鳴らして伏せる。撫でてくれと甘えるリュシーへ、私は抱き着いて両腕で撫で回した。


 癒されるわ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
ヤンデレ忠犬(獰猛)は三匹でしたねw敵には獰猛!主人には超超超!忠実!愛情重々!
[良い点] 小人は針でチクチク狼の着ぐるみを作りました。猫作者さんに着せて一息付きます。一仕事終えたあとはミルクコーヒに限ります。狼猫作者さん、出番ですよ(*≧ω≦)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ