八
「父様が魔王であるから地位は確立していた。地位だけはな」
……オルガは多分、迷いの森で話そうとしなかった事を話そうとしているんだ。
裏切られても構わないと……オルガが心から思ったら話すと言っていた事を
「自分よりも遥かに劣っている者が自分よりも高い地位にいれば面白くはないだろう。それは魔族でも人間でも……どの種族でも同じだ。私でも気に食わん」
「………オルガ…」
「まあ、扱いはぞんざいだ…それは気にしなかった。私が悪いのだから……それでも少しでも認められようと磨いたのが体術だ。それくらいしか認めて貰える術が無かった」
体術…確かにオルガは素手での闘いはかなりの強さを持っている。普通に闘ってもまるで歯が立たない程に強い
唯の剣術のように小さな頃から鍛え続けたものがオルガの今の強さになっているんだろう…鍛え続けた意義や理由はまるで違うのだろうが
「その中でも私の事を気に掛け続けてくれたのが母様とその召使いとして傍に居たイザベラだ」
「………!!」
「………信じていたさ、イザベラを。イザベラは私にとって家族のようなものだった。イザベラがどう考えていたのかは分からんが……私はそう思っていた」
鼻を啜る音が聴こえる。息を吐く声も多くなっているのが分かった
それでも……オルガは話し続ける
「……父様が不在の時に魔物の大群が攻めて来た。恐らく不在を狙い、周到に計画していたのだろうな…みるみるうちに窮地に晒された。そんな時……イザベラが転移魔法を使ったんだ」
『お嬢様!ミューラ様!どちらかお一人だけでもお逃げ下さい!』
『イザベラ…これは…!?』
『今の私の魔力では一人を転移させるのが手一杯…!早く…!私の魔力が尽きてしまう前に!』
『巫山戯るな!!誰かを残して逃げるなど出来る訳がーーーーーー!!』
「……背を押された…母様に。私は転移魔法に入ってしまった。二人を残しておめおめと逃げ延びてしまった」
「………………」
「それでも……きっと生き延びてくれると信じた。信じるしかなかった。その思いは裏切られてしまったのだがな……イザベラが何故魔物に与しているのか……イザベラが生きているのに何故母様は死んだのか……考えたくもない想像をしてしまう……あの後に何があったのか私は何も知らない……何故……どうして……!!」
その言葉を聴いて俺は明かりを点けた。思った通り…オルガはぼろぼろと涙を流しながら話していた。
急に明かりが点いた事で呆気に取られたオルガだが、すぐに毛布で顔を隠してしまった
「何を考えてるんだ貴様は!!こんな…こんな顔を見るな!!!」
「オルガ!俺の目を見てくれ!!」
「巫山戯るな!今見れる訳無いだろうが!!」
「なら見なくていい!聴いてくれ!俺は絶対にお前を裏切らない!!魔族と人間の関係がどうとか関係無い!!俺はお前の事を信じるし、信じて欲しい!!」
「…俺は、というのは訂正だ。俺達、だ零也。私もオルガの事を裏切らないし、信じ続けよう。出逢ってからの時間はまだとても少ないが、私達は仲間だ」
俺の肩を叩きながら唯が続く。見れば唯の目にも涙が溜まっていた…そうか。唯も父さんと母さんを亡くしているんだ…母さんを亡くしたオルガの気持ちが分かるのか
「…ッ…!だからッ…貴様等はぁ…ッ……そんな恥ずかしい宣言を目の前でして……うううぅぅ〜〜ッ…!!!」
ダイオン城の時の繰り返しのようにオルガは大声で泣く。
ダイオン城では苦しい思いで、悲しい思いで押し潰されてしまったけど、今のオルガの心が少しでも軽くなってくれれば良い
唯の言ったように俺達はまだ出逢って本当に間もない
だけどこれだけは間違い無く言える。俺達は種族の諍いなんて無い、かけがえのない仲間なんだ




