七
あれから襲撃された街に上がった火を鎮火させ、亡くなった人達の埋葬を行い、俺達はまたルーギアスさんとダイオン王の厚意によって昨日と同じ宿を取る事が出来た
幸運にもこの宿の周囲の建物まで火の手は回っておらずに無事だった。宿屋の店主も是非使って欲しいと逆に頭を下げられたくらいには俺達に感謝してくれてるみたいだ
…生き残った街の人達は皆、城の中で一夜を過ごすとの事だ。ダイオン王とルーギアスさんの二人が寝ずの番をして警戒に当たると言っていた。それなら俺達もと話したんだけど……恩人にそんな事させる訳にはいかない、少しでも良い環境で休んでくれ、と押し通された。
ダイオン王はルーギアスさんに剣を教えた人だそうで、剣の腕はかなり立つのだそうだ。と言っても王職に就いてからは剣を握る機会が減り、もう一度鍛え直すと結構な剣幕で話していた
…悔しかったのは俺だけじゃない。皆、誰しもがそう思っている筈だ
ベットに寝転がりながらそんな事を思っていた。オルガも唯も何も話さず、明かりの消えた部屋を静寂が包んでる
…今日は色んな事が起こり過ぎた。特にオルガにとっては頭の整理が追い付かないくらいに起こり過ぎている
「………唯、零也。まだ起きているか」
不意にオルガの声が聴こえた。それに対しての唯の返答が次ぐ。俺も起きていると答えるとオルガの方から身体を起こしたような寝具の軋む音が聴こえた
「……見ていろ」
そう言ってオルガは詠唱を唱え始める。何をしようとしてるんだ…?
……あれ、オルガって魔法使えるのか?使ってる所まだ一回も見てなかったけど…そりゃ使えるか。魔王の娘なんだし魔力も凄いんだろう
やがてオルガの掌から小さな火が現れて来る。暗い所に一つだけ明所が出来た所為でオルガだけが照らされている
……しかし、その火はいつまで経っても大きくならなかった。拳くらいの大きさを歪な形で保ちながら…やがて消えてしまった
明かりの消えた部屋にオルガのものと思われる落胆の溜息が一つ聴こえる
「………唯。この世界で一番簡易な魔法は何だ」
「……万人が使える魔法は……火を現出させて放つ魔法…だと思うけれど…」
「……そうだろうな。今私が使おうとしたのが一番簡易な魔法だ。唯、魔族の特長を知っているか?」
手で顔を覆いながら話しているのか、オルガの声は籠っていた。俺の頭の中で最後にイザベラが俺に言った言葉が反芻される
魔族の落ちこぼれ……イザベラはそう言っていた
「…………高い身体能力。そして強大な魔量。魔法の精度は大雑把だが、威力の高い魔法を使える……」
「………私はな、魔法が使えないんだ。魔族なら当たり前のように持つ魔力と魔量を私は持っていない……簡易な魔法とされるものですら今のが精一杯だ。何だあれは……松明の火にすら劣っているではないか……」
自身の事を嘲笑するかのようにオルガは自虐的に笑う。それからまた深い溜息が吐かれ、言葉が続けられる
「魔族は魔量と魔力の大きさでその者の強さと地位を決める。その中で私は最下層の最下層……魔王の娘がだ。笑ってしまうだろう?」
言葉を返す事が出来ない。何を言ってもオルガの慰めにはならない…唯も同じ気持ちなのか言葉を返せないでいる。オルガは更に言葉を紡いでいく




