六
「はい終わり。余計な手間掛けさないでねぇ」
ルーギアスに斬られた箇所を軽く叩き、イザベラは立ち上がる。カーズは軽く舌打ちをしながらバツが悪そうに頭を掻いた
ダイオン城では無い何処かの城の中に二人はいた。薄暗く明かりは差さず、気味の悪さを覚える
その内部は二人しかいないのも相俟って余計に広く感じられた
「状況はどうなってんだ」
「別に変わってないわ。好き勝手に暴れ散らかしてるわよあの化け物」
呆れ返ったように視線を落とす。城の外からはまるで戦争でも起こっているかのような激しい戦闘音が聴こえている
その中心にいるのはーーーー…八雲であった
「あれじゃじきにこっちの兵隊が尽きちゃうわ。あれだけ魔法乱発してれば普通すぐに魔力切れ起こすのに」
「で、魔法使わなくなったと思ったら殴り蹴りの大暴れか…。魔法しか使えねぇんじゃなかったのかよ」
オルガのように武器を使う事なく八雲は敵をーーー魔物を次々に屠っている。違うのはその威力、そして速さ。一撃を入れるだけで魔物が原型を留めない程に変形してしまっている
八雲の周囲を囲んでいた魔物達は一瞬でばらばらになり消滅していた
不敵に笑いながら八雲は恐らく自分の事を見ているであろう城の方へ視線を向ける。と同時に顔を顰めた
「……まさか単独で転移魔法使える奴がいるなんてなぁ。計算間違えた……」
頭を掻いて向かって来る魔物の頭を蹴り飛ばす。蹴り飛ばされた魔物の頭は身体と離され、ごろごろと転がり消滅する
魔法も体術も全て一撃。同じ魔物に八雲が二撃目を放つ事は無い
一撃で雌雄が決している。数では圧倒的に不利な筈なのに、それを全く感じさせないどころか圧し始めてすらいる
「零也大丈夫かなぁ。成長するまで敵を足止めすると大見得切っといて普通にすり抜けられるとか私ダサ過ぎないか?」
「ガアアアァァァァァァァァ!!!!」
「今日辺り首尾を訊きに行こうか…?いやでもそこ指摘されたらなんて答えよう…笑って誤魔化そうか?」
敵前…というか、前も後ろも左右でさえ常に魔物が囲んでいるというのに八雲はそんな事を考えている。次々と絶え間無く来る敵の攻撃を避けながら思考し、唸り、頭を抱える
「……やーめた。魔法陣が選んだ男だ、上手く立ち回っているだろきっと」
自分を都合良く納得させ、八雲はまた攻撃へと移る。それを見ていた城の二人は思わず互いの顔を見合わせた
「…どうすんだよ」
「頃合い見て逃げるに決まってるでしょ。敵う訳無いもの」
「なら何でここ連れて来たんだよ」
「一応様子見。それと貴方の怪我治さなきゃいけなかったじゃない」
「……ああ、そう」




