五
「治癒魔法を使っているのを見たのも受けたのも初めてだが…凄まじいな」
感心したようにルーギアスさんはそう言って自分の身辺を確認している。見る限り、破れた服以外身体の損傷は見当たらない
俺達に散々ごちられながら最優先に自分の事を完治させた唯は怪我の程度が重い順にどんどんと皆を治癒させて回った。オルガ、ルーギアスさん、ダイオン王…そして街の人達。全ての怪我人を完治させてしまった
流石にこれだけの人数を治癒した事が無いらしく、最後の方の唯は完全に疲れ切って萎びれてしまっていたのだが……今はというと椅子に身体の全体重を預けて真っ白な灰になっている
精神的なものは回復出来ないって言っていたし、恐らく肉体的に問題は無いんだろうけど魔力が枯渇するとあんな感じになるんだろうな…
「お前は治癒を受けんのか?」
声を掛けられ顔を向けると、全快したオルガがいた。血の痕は拭い切れずに残ったままだが、火傷も両手も痕も残らずに治っている。本当に良かったと心から思った
「…うん。これ以上唯を疲れさせたくないし、俺はそこまで酷い怪我じゃないから」
「カーズとやらに思い切り脇腹に蹴りを食らっていたが?」
そう言うやごすっ、と脇腹を小突かれた。堪らずに脇腹を押さえて蹲る
痛ってぇぇぇぇ…!!!!?何やってくれちゃってんの!!!?
「無駄に強がりおって…唯の魔力が全快したら治してもらえ。いいな」
「…うぃ」
本当は治して貰うのが一番なんだろう
……けど、治して貰おうとは思ってない。きっとこの痛みは忘れちゃいけない痛みなんだ
弱い自分の戒め…っていうと聴こえが良くないのかもしれないけど、痛む度に今日のこの事を思い出させてくれる
裂けた拳の痛みは、僅かな自信を
蹴られた脇腹の痛みは、自分の弱さを
いずれは自然に完治してしまうのだろうけど、これはきっと今後の糧になる
そう思いながら拳を握り締めた
「お兄ちゃん!」
「おっ!歩けるようになったんだ!」
「うん!あのお姉ちゃんが治してくれたの!」
にこにこと笑いながら助けた女の子が唯の事を指差している。相変わらず唯は灰になったままだ
…唯のあんな姿を見るのも貴重なのかもしれないな
「あ、あの…」
「お兄ちゃん!わたしとお姉ちゃんを助けてくれてありがとう!」
「あ!私が先に言おうとしていたのに…!」
……良かった。
街や城はかなりの被害を受けて酷い有様で、亡くなった人達もいてこんな事を思うのは不謹慎なのかもしれないけど。
それでも、その中でこうして助けられた命もある。この子達の笑顔を護る事が出来た
今はほんの少ししか護れないけど。きっとその裏で泣いている人が沢山いるんだろうけど。
そんな泣いている人が誰もいない……俺の目に映る人達が誰も悲しまない……大勢の人を護れるようになりたい。その為にはもっと…もっともっと強くならないといけない




