四
オルガと俺の涙が止まるまでにどれくらいの時間が経ったんだろうか…片膝を立たせながらオルガがゆっくりと上体を起こし俺を見る。その目は真っ赤に腫れてしまっている
「………随分と酷い顔だな…」
「………だろうな…」
「……そこはお互い様と言わんのか。私も負けん程の酷い顔をしているのは分かっている」
「オルガ…怪我は」
「…問題…無くはない。死ぬ程では無いが、こうして話すのがやっとだ」
「早く治療しよう」
そう言って俺はオルガの目の前で屈み、背を向ける。僅かな沈黙の後にその背中に重みが掛かった
立ち上がり、玉座を後にしようとすると目の前にルーギアスさんとダイオン王、街の人達がいた
…ああ、そうだった。皆いたんだった
怪我の酷い二人は血だらけではあるものの、ルーギアスさんもダイオン王も命に別状は無いようだった。大分気まずそうに顔を顰めながらルーギアスさんが口を開く
「……声を掛けようにも、掛けられる雰囲気では無かった」
「…ですよねぇ……」
滅茶苦茶に大泣きかましてましたもんねぇ、二人で。周りが見えなくなるくらい
オルガはというと、俺の背中に顔を隠して耳元で早く行けと囁いて来る。余程今の顔を見られたくないか、さっきの泣きを見られた事が恥ずかしかったんだろう
「…一先ず脅威は去った、と言えるだろう。二人とも、助力心から感謝する」
「私からも重ねて感謝させてもらう。一刻も早く治療を」
そう言いながら二人は深く頭を下げる。ぼたぼたと頭から血を地面に垂らしながら
…一刻も早く治療しなきゃなのは二人もなんだけど…大丈夫なのか?
「治療…と言う事は、私の出番…かな…?」
「………唯!!」
聴き慣れた声に目を向けると街の人達の後ろから唯がゆっくりと歩いて来る
その姿を見て俺はあの状況から生きて帰って来てくれた事の安堵と共に言葉を失った。今にも死んでしまうんじゃないかと思う程に唯は手酷く遣られていた
纏めていた髪は解かれ、身に付けていた防具は無惨に壊れてしまっていた。頭や身体から血を流して一歩歩く毎に血の斑点を作っている
歩みも足を引き摺り、覚束ない。ここにいる誰よりも群を抜いての重傷だった
堪らず駆け寄ると、唯は安心し切ったように俺の胸元へ倒れ込んだ。気絶か、最悪死んでしまったのかと肝を冷やしたが、意識は有るようで単に歩く事に限界が来ただけのようだった。
いや、今の唯は来た〝だけ〟で済ませられない状態なんだが
「……街に重傷者が大勢いると思ってね…少しでも魔力を温存しようとしてたんだが……自分の事を蔑ろにし過ぎてしまった」
そう言って自嘲するように渇いた笑みを浮かべる。全く笑えない
「いいから一刻も早く治療してくれ!!!最優先に自分を!!!!」




