八
遂に視界にダイオン城を捉える所まで来る事が出来た。だが、目に映るダイオン城からは黒い煙が立ち昇っている……攻め込まれている事は明白だ
近付くにつれて誰のものか分からない悲鳴のようなものも聴こえて来る。自然と向かう足は速くなっていた
城門へ辿り着くと、ゴブリンが複数体こちらへと向かって来た。その近くには倒れ込む門番がいる
この…野郎…!!
「…私がやる。退いてくれ」
俺とオルガが向かって来るゴブリンと対峙する前にルーギアスさんが先に出て抜刀ーーーー瞬殺。
まるで戦闘になっていない。最初見た唯とスライムのような、本当にそこにいたのかとすら思える程の速さでルーギアスさんはゴブリンを斃してしまった
そのままルーギアスさんは倒れ込む門番の身体を抱き抱え声を掛けようとしたが、声を発する事は無かった。顔を歪めながらきつく歯を食いしばり、そっと門番をその場に下ろした
「……この闘いが終わってから丁重に埋葬する…間に合わずすまなかった」
…昨日まで、あんなに元気だったのに。オルガと街への出入りの口論をしていたのに…
既に事切れた門番を見て言いようの無い悔しさが込み上げて来る。間に合わなかった…!!
「顔を上げろ。まだだ、私達がやらねばならん事がまだ有るだろう」
悲鳴は絶えず八方から聴こえている。街を破壊しているような音も
…そうだ。オルガの言う通りだ。まだやれる事はある
「街の中に入ったら三方に別れるぞ。城に向かいながら襲われている人間を助ける…既に倒れている奴等は気に掛けるな、私達は唯のような治癒魔法は使えんのだから介抱したとしても助からん。あくまで助かる見込みが高い者を優先しろ、その方が多くの数を救える」
オルガの案に頷き、走り出す。今は一秒すら惜しい
左方、右方、中央へそれぞれが散り、悲鳴の元へと駆けて行く
右方へと走った俺は襲われている人がいないか探しながら街の様子を確認する
立ち並ぶ家々は大小あるがどれも火の手が上がり、無惨に崩れた建物も見受けられた
倒れてる人も何人か目に入った。皆ぴくりとも動かず、辺りには血溜まりが広がっている
酷い…酷過ぎる。何でこんな酷い事が出来るんだ…!!
「きゃああぁぁぁぁぁッ!!!」
「!!」
悲鳴に顔を向けると女の子がゴブリン達に襲われていた。棍棒を持ったゴブリンの一撃を足に受けた女の子の苦悶の声が次いで聴こえる
笑っていた。涙を流しながら足を押さえ泣きじゃくり蹲る女の子を前にしてげらげらと
大剣を握る手に力が入る。許せない…これ以上好きにはさせない!
「止めろ!!」
大剣を振り上げ、一体のゴブリンを断頭する。女の子の方に気を取られていたゴブリンは近付く俺の事を認識していなかったようだ
身構える前に立ち並ぶゴブリン達を横一閃に斬り、一気に消滅させる事が出来た
「大丈夫!?」
「わ…わたしの事より、お姉ちゃんをたすけて!」
叫びながら女の子は指差す。指の先へ視線を向けると一体のゴブリンが女の人を追い回していた
他のゴブリンよりも倍か、それ以上に大きな個体だ。女の人を今にも捕まえてしまいそうなくらい肉薄している
「分かった!絶対助ける!」
安心させるように少しの笑みを浮かべ、ゴブリンの所へ走る。
このまま普通に走ったら間に合わない。なら…!!
ぐっと足に力を込めて、地面を弾くように蹴り飛ばすーーーー地面が僅かに凹み、蹴り込む度に走る速度はどんどんと上がる
思った通りだ!スリーアイドックに噛まれた時振り下ろした足が地面を崩落させてたからもしやとは思ったけど…上半身だけじゃなく、怪力のスキルはこういった使い方も出来るんだ!




