六
ルーギアスさんと二人でダイオン城へ戻る道を駆ける。当たり前だが、大剣を持ちながら走る俺の方がルーギアスさんよりも走る速度は遅い。俺に走りを合わせてくれているんだろうが、少しずつ距離が開いていく。
ダイオン城は今走っている森を抜ければもはや目の前に見えて来る……だけど足場は手入れがされておらず、お世辞に良いとは言えない
こういった地形を走り慣れていない俺が完全に足を引っ張ってしまっている。ルーギアスさんは直ぐにでも城へ着きたいと思っている筈なのに
「ルーギアスさん!俺は後から追い付きます!だから先に!」
「…すまない!君も気を付けろ!奴等が辺りに何か罠を仕掛けているかもしれない!」
「はい!」
短いやり取りの後、ルーギアスさんはオルガと同じように一気に走り出す。オルガにまでは及ばなくても人間とは思えない程の速さだ
あの速さで走り続けられるのか…?この世界の人の身体能力って俺の世界よりもずっと高い水準なのか…それとも一部の人達が突出しているんだろうか
いや、今は余計な事考えるな。今は一刻でも早く城に戻る事だけ考えよう
「……は…!?」
後もう少しで森を抜けられる筈だった。目の前にダイオン城が見えてくる筈だった
それなのに…木々が薙ぎ倒されて道を塞いでしまっている。並大抵の力ではびくともしないくらい木々は幾重にも重なり、それを避けて進もうにも、その辺りは底の見えない程深い穴が掘り込まれていて進めないようにされている
こんなもの一日二日で掘れるような大きさじゃない。多分隠していたんだ、自分達が城を落とせる好機を確実にする為に。どこまでも周到に狡猾に
先に行っていたオルガも、ルーギアスさんもそこで足を止めるしかなかった
オルガは怒りをぶつけるように木を殴っているがオルガの力でも木を退かすには至らず、額から汗を垂らしオルガは息を切らしている。どれ程殴っていたのか……その両手からは血が伝い、地面に垂れていた
「……やってくれた。奴等はどうあっても私達を城へ戻させたく無いらしい」
「糞がぁッ!!あぁああぁぁぁぁぁ苛々する!!!この糞がぁぁぁッ!!!」
暴言と共にオルガがまた殴り始めるが、木は手前にあるものがめしゃりとへこむだけで奥までは力が伝わりきっていない。殴った木にオルガの血が付き、酷い光景になってしまっている
…街や城の人を助けるよりもオルガはただゴブリンをぶっ倒したいだけなんだろうけど、こんなになるまで必死に殴っているんだ。俺だって力になりたい
いや、力になれる。俺のスキルなら…!!
「もういいから止めろオルガ!俺がやる!」
「馬鹿も休み休み言え!!私でも退かせないーーーーーー…いや………やってみろ」
迷いの森の一件を思い出したのか、オルガは案外すんなりと退いてくれた。
…行けるんだろうか?啖呵切ってみたはいいものの、スキルだけで本当に退かせられるんだろうか
迷いの森ででかい木を殴り倒したオルガでさえ出来ない事を…
…さっきと同じだ。余計な事は考えない。目の前のやらなきゃいけない事をやるんだ




