四
走って洞窟の中を戻りながら俺の推理を話すと皆顔を顰めながら唇を噛む。起こりうる事なのだと思っているんだろう
「最初から洞窟の中にはあの数体のゴブリンしかいなかったという事か…!!私達と入れ違うように城に攻め入っているとしたら…!」
そう言ってルーギアスさんは怒りに満ちた顔を隠す事なく強く唇を噛む
最初の奇襲から洞窟の最奥までは結構な距離を歩いたと記憶してる。俺達が洞窟を進んでいる最中にゴブリン達が最短で最速で襲撃に向かっているのならもう街に着いていてもおかしくはない
「零也の予測が当たっていたのなら私はまたしても出し抜かれた訳か…。ふ、ふふっ…!!下衆な魔物に二、二度も連続で…!!!」
顔を盛大に引き攣らせながらオルガは笑う。もちろん俺の顔を弄り倒した時のような笑いではなく、怒りを通り越した先に思わず出てしまう笑い…なんだろう。顔変形しかけてるし
荒々しく舌打ちするとオルガは一気に走るスピードを早めた
「貴様等は後から来い!!先に城に行っている!!」
そう吐き捨てるように言うとオルガはあっという間に見えなくなってしまった。薄暗い洞窟をモノともしないオルガだから出来る走りだ
いや、それ以上に物理的に速いんだけど。チーターみたいにぶっ飛んで行きやがった
「流石は魔族の娘だな…!先も今も頼もしい限りだ…!」
「オルガならきっと心配要らないでしょう。私達も急いで戻らねばいけないな」
頼むから間に合ってくれ…!!なんなら俺の予想した事が悉く外れててくれ…!!
「…足止めか…!!」
洞窟から抜けて来た俺達を迎えたのは昨日の倍、倍、倍……森の中からわらわらと沸き出るゴブリンの群れだった
こうして俺達が洞窟から出るのを待っていたのなら、俺の予想はほぼ的中してしまっているのだろう
ゴブリンの群れの中に気絶したゴブリンが十数体いるのはオルガが走りながら殴り倒していったものだろう。尤も、絶命させるのも惜しいほど急いでいたから止めを刺していないんだろうが
こいつ等を相手にする時間なんかねぇってのに…!走りながら相手にするにしても数が多過ぎて余計な体力を使ってしまう…立ち止まったらコイツらの術中通りに足止めを食らう…どっちにしても不利な状況にしかならない
そう考える俺の前に唯が立ち、すらりと腰の剣を抜いた
「二人は先に城に行ってくれ。ここは私が相手になる」
「な、に…言ってんだよ唯!?この数一人って…!!」
十や二十なんて数じゃない。どこに隠れていたのか不思議なくらいぞろぞろと徒党を成してゴブリンは殺気立たせて俺達の前を憚っている
この数を一人で相手になんかしたら無事じゃ済まない。最悪死ぬって事も充分に考えられる
「ここで三人が留まっていたら留まるだけ城や街の人達が犠牲になる人数が増える。行くんだ。道は作る」
「けど!!」
「零也、君が残ってもこの数相手じゃ太刀打ち出来ない。いずれ数に圧されて殺される。ルーギアスは街を護らねばならないだろう。恐らくあちらには今ここにいるよりも強いゴブリン達が襲っている。だから」
瞬く間に目の前のゴブリンが一閃、二閃、三閃ーーー……
オルガに似た突進と共に剣を振るい、一瞬でゴブリンを斬り斃す。あまりの一瞬の出来事にゴブリン達は怯み、たじろぐ。その隙間にほんの僅かだが道が出来た。
その道を剣先で示すと唯は息を吸う
「行け!!!」




