七
スライムに追われて逃げ回っただけで斃す事は出来なかった。というか噛まれるのが怖くて攻撃すら出来なかった。
…これハード過ぎじゃない?普通の人間がいきなり化け物相手にしろって言われても立ち向かえないでしょ
気付けば既に日は沈み始め、太陽の代わりに月が顔を覗かせ始めている。溜め息と共にその場に腰を下ろした。
俺こんなんで本当に元の世界に戻れるのかな…闘えない人間がこの世界にとってどのくらいの価値があるのか知らんけど、スライムにすら太刀打ちできない俺は確実に要らないじゃんこの世界に。この世界の不適合者だよ間違い無く
あー落ち込むわ…どうしろってんだよ俺に。この世界で何しろってんだよ。教えてくれよ誰か!
「君は宿屋の店員か?」
「え?」
俯きながら頭をぐしゃぐしゃ掻いていたら声を掛けられた。声からして女の人だ
顔を上げて見ると、そこには何とまぁ…すごく綺麗?可愛い?どちらとも取れる女の人が俺を見ていた。
赤茶色の髪色。前髪を軽く流し、サイドの長さは鎖骨辺りまで伸びている。後ろ髪を結わえてポニテのように一つに纏めている
少しツリ目がちの二重で、ぱっちりとした大きな瞳。瞳の色は……琥珀色って言えばいいのかな?そういう系統の色をしてる
すらりと通った鼻筋で、凛とした顔立ちをしている。身長は…160あるか無いかくらいか?
そしてその腰には一振りの剣が携えてあった。この子…剣士なのか?
「店員ならば、宿の手配を頼みたいのだが」
「ごめん、俺店員じゃないよ」
「そうか、それは失礼した。宿の前で座っていたものだからてっきり宿の者かと」
そう言ってぺこりと頭を下げる彼女。この子礼儀正しいな。好感持てるなこういう人は
「では」
そう一言俺に言うと彼女は宿屋の中へ入っていってしまった。いいなぁ…泊まれる所があって
野宿ですかね…野宿ですよね…あぁ…まさか異世界でホームレスみたいな真似するなんて……
いや、この世界じゃ野営とかが普通なんだろうか?普通に宿で寝れるのが稀とか?
……考えてもあの宿に泊まれる訳もないし、寝る事に集中しよう。夜中でも村の中なら安全でしょ、多分