十二
振り上げ攻撃して来るカーズの動きは変わらなかった。少なからず動きが鈍くなる筈の攻撃を受けても全く意に介さない…というよりは、機械のように命令を受け入れている
自分がどんな状態になろうと与えられた命を忠実に熟す機械のように…それが例え自分を壊すとしても
攻撃を躱す度に、攻撃を掛ける度にカーズは吐血を繰り返している。地面に大小…様々な斑点を作りながら私へと向かって来ている
苦しい筈だ、こんな動きなど出来はしない筈なのに…彼の顔は虚と同じく何も変わらない。無表情のまま口から血を流している
彼を殺す事は容易い…だが……それで良いのか?
彼自身の意思で行動しているのでは無い。それは今の硬一朗君やシノノメと同じだ
そんな状態の彼を殺す…本当にそれで良いのか?
「…つまんない」
ぼそりと虚が呟いた。私へと掛けていた攻撃を止めると…
……虚はカーズへと攻撃を掛けようとした。恐らくは私が攻撃を躊躇している原因の排除をしようとしたのだろう、自分がより楽しむ為に
振り上げた虚の腕を掴みその攻撃を止めると、虚はほんの僅かに目を瞬かせた。初めて見る彼の表情の変化だったかもしれない
「………くくっ……!!」
ラベジェンドが顔を俯かせながら嗤っている。その隣でカープリートも…げらげらと
「本当に莫迦な男だ!!それが貴様の選択か!!」
「アヒャヒャひゃヒャひャッッ!!!!!!バか!!!あホ!!!ほ〜ーンと何考えテんでしョ!!!」
「……何してるの?この子が大事なの?竜王サマを殺そうとしてるのに」
私を見上げる虚の顔に血が溢れる
一滴、二滴と…私の口から血が溢れ落ちていく
虚の攻撃を止めた事でカーズの攻撃を避ける事が出来なかった。私の腹へと放った一撃は深々と突き刺さり…腕を引き抜かれると同時にばたばたと血が地面へと流れ出て行った
不覚を取った。私はどこまでも甘さを捨てられなかった
目の前の命を見捨てる事が出来なかった。操られたまま命を喪おうとする彼の事を庇ってしまった
その結果がこれだ。明らかな私の失態だ
「ヴェルファウド!!!」
背後から声が聴こえる。声の音はあの時とは違っても、それが誰なのかは分かる
懐かしい。と…こんな時に、そんな事を思ってしまった