二十
「…お前からは何も話せねぇか?」
沈黙に耐えかねたライオネルが零也に訊いた。対して零也は難しそうな顔をして腕を組むと唸ってる
話す事を躊躇ってるのは分かる…というより自分から話して良いのかを迷っている感じだ
「お前もこいつが誰なのかもう分かってんだろ?」
「…うん。修練場で話されたし、顔も見た」
…ゼロに顔を向けて仮面をじっと見つめる
近寄り難い印象を受ける恐々しい夜叉の仮面…仮面の横に付いてる長く太い紐でそのまま髪を縛ってる。纏めた長い髪は唯を連想させる
仮面が絶対外れないようにする為にこんな縛り方してるのかな…オレ達に絶対顔を見せない為に
「そんな仮面付けたままじゃ息苦しいだろ、外してやれ」
「………怒られるよ俺」
「もうバレてんだよ、俺とリオには」
「……やっぱそうだよね。二人には多分バレるって言ってたし」
苦々しくそう言って零也は紐を髪から解いてゼロの仮面を外す…観念したって感じだけど
……やっぱり…そうだった。仮面の下に隠されていた顔は…零也と同じ顔をしていた
髪は今の零也よりも凄く長く伸びてるし、やつれている印象を受けるけど…間違い無く零也だった
「リオ、一応部屋の鍵掛けとけ」
ライオネルに言われて鍵を掛ける。見られたく無いなら配慮はしておかないと…それこそ零也が起きたら怒られちゃう
「……やっぱり俺からは何も話せないよ」
「それで良い。こいつが起きたら話聴く」
「……まあ、バレたら話すって言ってたし大筋は話してくれるだろうけど」
「何にせよこいつが起きるまで待つしかねぇな。つーか何だよゼロって」
「それは俺も思った。多分俺の名前を変えて出た咄嗟の名前なんだろうけど…」
ああ…零也の〝零〟は〝ゼロ〟っても読めるから…名前訊かれる事考えてなかったのかな?
咄嗟に考えたとは言え安直っていうか……零也らしいけどさ。そういう所は変わってないんだ