五
異世界にトリップしたのは分かった。いやこんなあり得ない現象分かりたくもないけどさ
感性が磨かれてないからか知らないけど…この理不尽な状況に怒るも悲しむも出来ない。ただ呆然とするしか出来なかった
「なあアンタ、あるぺじって一体何だ?何かの魔法かい?」
「魔法…」
ああ魔法ね…異世界じゃ定番だよな魔法って。何も無い所から炎を出したり雷出したり氷出したり風出したり…
後は傷を治したり死んだ仲間を復活させたりさ。あれ?もしかしてこれ俺も出来んじゃね?
「ファイヤー!」
「何やってんだアンタ?」
出ませんでした。出たのは俺の口からファイヤーという二十歳を過ぎた大人が言わない、いや言っちゃいけない厨二満載な言葉だけでした
手より先に俺の顔から炎が出そう。恥ずかし過ぎる、死にたい
「魔法を使うなら詠唱しなきゃ使えないだろ?まあ経験を積んだ奴なら詠唱無しでも使えるみたいだがな」
馬鹿にされると思ったけどおっさんは真面目にこう返してきた。普通ならこいつヤベェ奴だってなって絶対逃げられるのに。
ノリが良いとかそんなんじゃない。この人は本当に真面目に答えてる。それが然も当然と言ったかのように
「疲れてるなら宿屋で休んだらどうだい?宿屋はあそこにあるからさ」
そう言っておっさんは建物を指差す。重ね重ね申し訳無いおっさん。何から何まで説明してくれて、本当に感謝します。
「泊まるお金が無いんですけどどうすればいいと思います?」
「そんなもん近辺の魔物斃して金貨稼げよ」
やっぱそうなりますよね。