十
唯が風呂から上がり、髪をタオルで乾かしている。まあ、タオルとかはやっぱ普通にあるんだな。風呂も多分普通のホテルとかにあるユニットバスみたいなやつだろうし…この世界は俺のいた世界と非常に似通っていて、非常に似通っていない世界なようだ
そんな事を考えながら服を脱いで風呂に浸かる。やっぱり考えていた通り風呂はユニットバスだった
これからどうなるんだろうな…。俺はこれから一人でこの世界でやっていけるんだろうか
スキルのお陰で類い稀な怪力は身に付いた。これなら武器が重くて持てないなんて事はないだろう。ただ、持てるのと扱えるのでは意味が違ってくる
唯のような剣捌きなんて俺にはとても出来ない。戦闘経験皆無な俺じゃ武器を振り回して戦うのが精一杯だ…唯と闘ったトロルがやったみたいに
だけど唯はその攻撃を一撃も貰わなかった。この世界を生きて行くって事はあんな風に相手の動きを読んで闘わなきゃならないんだろう
そしてその唯の剣を通しもしなかったトロルの防御力…
あー…駄目だ、考えれば考えるほど憂鬱になってくる
「…唯…これからどうすんのかな」
結論。このままじゃどうしようもない
とはいえ、このまま何もしないんじゃ何も変わらない。一生俺はこの世界から抜け出せないままだろう
そんなのは御免だ。俺は一刻も早く元居た世界に帰りたい。こんな毎日命を張り続けるような世界じゃなく、平和で毎日仕事に追われる日々ーーーー…
あれ?身体を酷使するって所はあんまり変わって無くね?
「さて、これからの事を決めなければいけないね」
宿屋から用意されたかなり遅めの夕飯を食べ終え二人で他愛もない話をしていた中、唯が切り出した
「唯はこれからの事何か決めてるの?」
「父の行方を探る為にここまで来たんだけれど、父の安否が分かった以上ここに留まる意味も無い。住んでいた街に戻ろうと思うのが半分、鍛錬の為に旅を続けるのがもう半分といった所かな」
……そりゃそうだよな。唯はここの村の人じゃないんだし、何か理由が無い限り留まる事は無いだろう
「零也、君もこの村の人間では無いんだろう?君はどうするか決めているのかな?」
…信じてもらえるかな…俺がこの村どころかこの世界の人間じゃないって事。頭のおかしい奴だとか思われたりしないだろうか
…いや、話してみよう。明日には唯はここを発つと言ってるんだ。だったら理由を話してダメ元で一緒に付いていってもいいか訊いてみよう。足手纏いが付いていってもいいかって




