四
荒くなる息をそのままに東雲さんはトロルを殺気立たせて睨み付ける。トロルはそんな東雲さんを見てへらへらと笑っている。ここから自分の勝ちは揺るがないとでも思っているのだろう。余裕の笑みとでもいった感じだ
ーーーーーその余裕の笑みを、ぶっ壊してやる。
東雲さんの目の前に立ち、トロルはゆっくりと棍棒を振り上げる。振り下ろされたら最後、今の東雲さんでは避ける事は出来ずミンチにされてしまうだろう
しかし、東雲さんはトロルを見て笑った
「上を見て見たらどうだ…?」
指で上を指しながら東雲さんはトロルに言う。言葉の意味を理解したのか、東雲さんのジェスチャーを理解したのかは分からないが、トロルは言われるまま顔を上げた
何かが上から落ちてくる。結構な大きさの瓦礫…のような何かが
否、瓦礫じゃありません。俺です
「当たれえええぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!!!」
落ちながら振り上げ、トロル目掛けて振り下ろした棍棒は見事にトロルの一つ目にクリーンヒットした。東雲さんに言われるがままに上を向いたトロルの致命的なミスだ
「ギアアアァァアァァァァァァアアッッッ!!!!!」
振り上げた棍棒を手放し、トロルは両手で顔面を覆いながらゴロゴロとのたうち回る。鍛えようもない粘膜に思いっ切り叩き込んだんだ。想像もしれない激痛がトロルを襲っているだろう。
まあ、落下してきた俺も今想像もつかないくらいの激痛に襲われているんだが
ヤバイヤバイ痛すぎる軽く死ねるこれ!!トロルにやられなくても死ねるわ!!!
「あ、暁君…!大丈夫か…!?」
「し、東雲さんこそ…」
「グオアァァアァァァ!!!ア、ァァァアア…」
ゴロゴロとのたうち回っていたトロルが動きを止め、覆っていた両手をドサリと地面に投げ出した。程なく、トロルの全身から黒紫色の煙のようなものが上がると、トロルはその場から消え失せた。忽然と消滅してしまった
「…私達の勝利だ、暁君」
「トロル…斃せたんですか…?」
「魔物は命を喪うと今のように黒紫色の煙を出し、消えてしまう。冥界に送られるだとか、俗説は様々だが…消えてしまう理屈は不明なんだけれどね…」
「そう、ですか…」
「…!あれは…!」
東雲さんが驚いたように声を上げた。俺も東雲さんの視線を追うようにその方に顔を向けると、トロルのいなくなった中心が淡く光っていた




