三
俺と東雲さんは同時に駆け出す。東雲さんはトロルの真正面へと、俺はトロルから逃げるように大きく右へ、弧を描くように逸れて。
トロルは真正面に向かって来た東雲さんに標的を絞り、先と同じように棍棒を振り上げ攻撃を掛ける。だが、東雲さんにはトロルの力任せの攻撃は当たりはしない
華麗に身躱し、反撃。攻撃を躱し、反撃。先までと全く同じ光景だ
違うのは攻撃の手数。俺に目がいかないように力を温存する事なく次々に剣の雨を降らせている
「ゴアアアアアァァァァッ!!!」
東雲さんの連撃に苛立ったトロルが棍棒を振り回す。素振りのようにぶんぶんと、四方八方に破れかぶれの攻撃だ。だが、あれだけの力で振り回した棍棒に当たりでもすれば致命傷は避けられないだろう
それすら東雲さんは見切り、躱していく。動体視力がいいからとか、そんなんじゃない。攻撃の軌道を先読みして躱している。どれだけの鍛錬を積めばあのレベルに辿り着けるんだろう
「グオアアァァァァ!!!」
「なっ…!」
東雲さんに攻撃を当てる事が不可能と判断したのか、トロルは洞窟の天井へと棍棒を放り投げた。棍棒は凄まじい轟音を立てて天井へとぶつかり、落下していく
破壊した大小様々な洞窟の破片と共に、だ。破片は東雲さんの真上に…東雲さんを潰そうと落ちて来ている。
それを逃れようと駆け出そうとした東雲さんに今度はトロルが東雲さんの動きを先読みして立ち憚る。トロルの動きで足を止めてしまった東雲さんに破片が次々に降り注ぐ
「……ッ…ぐ……!」
破片をもろに受けた東雲さんはボロボロになりながら破片を退かし、刀を構える。その足元は覚束ず今にも倒れてしまいそうだった
今すぐ駆け寄って助けに行きたい。だけどここで俺が戻ればこの策は失敗に終わる。それは俺達二人の死を意味する
だから俺は戻らない…東雲さんを助ける為にも…!
「…どうした!まだ私は生きているぞ!」
満身創痍の状態で東雲さんはトロルに攻撃を仕掛ける。しかし…攻撃の手数は圧倒的に減り、最初と比べると攻撃の速さも雲泥の差だった
「がはっ!!」
トロルの反撃を躱す事が出来ず、東雲さんは洞窟の壁に叩き付けられる。ぼたぼたと身体中から血が零れ落ち、東雲さんはその場に崩れ落ちてしまった




