十九
「ぬぅんッッッ!!!」
「……………」
「ふううぅぅぅぅんッッッ!!!」
「……………」
「ほわぁぁぁぁぁっ!!!!」
「あ、暁君、大丈夫だよ。君の気持ちだけ受け取っておくよ。だからもう諦めよう?」
ウッソだろマジかよ…大剣が刺さった所に戻って大剣を持ち上げようと思ったら全く持ち上がらなかった。盛大に力んでるのに大剣はピクリとも持ち上がらない。なにこれ人が持つ剣の重さじゃねーよ
「東雲さんのお父さんって魔物?」
「失敬だな。歴とした人間だよ」
人間がこんなもの持ち上げられるのかよ…持ち上げる且つこれで闘ってたとか、俄かに信じらんないんですけど。化け物じゃん東雲さんのお父さん
「さあ、戻るよ暁君」
「でかい口利いてすみませんでした…」
「いいんだよ。こんな重い武器を振り回して闘えるのは父くらいだから。普通の人じゃまず持ち上げられないからね」
非常に口惜しいが、諦めるしかないか。せめて形見の剣だけでも持って行ってあげようと思ったのに…
「しかし暁君。妙だとは思わないかい?」
「…?何がです?」
「今君は大声で叫びながら父の剣を持ち上げようとしていたね?」
「ええ、全く持ち上がられなかったですけど」
「その前に私は…その、なかなかに大きな声で泣いてしまったよね?」
「ええ…まあ、なかなか…」
…東雲さんは何を言おうとしてるんだ?意図が掴めずに首を傾げると東雲さんは口を閉じ、やがてこう呟いた
「ーーーーこれだけ音を立てているにも関わらず、何故魔物が一匹たりとも襲ってこないんだろう」
…本当だ。注意力が散漫になっていた
ここはクロコ洞窟。凶悪な魔物が巣食う洞窟…現に俺達は入ってすぐに魔物の群れに囲まれて死に掛けた。此処へ来るまでにも魔物には何度か会っていた……なのに今は……
そう思うが先か、ずしん、ずしんと重たく響く音が聴こえて来た。これは…足音…なのか?
足音と思われる音はどんどんと大きくなっている。間違いなく此方へ向かって来ている
「成る程。魔物達が来なかったのはこいつが居たからか」
「……が、が、が……」
……やがて俺達はその足音の主と対峙する事となった。
俺達の身の丈を遥かに超えた筋骨隆々の身体。俺の持っている棍棒の数十倍もの棍棒を肩に担ぎ、一つしかない爛々とした大きな目で俺達を見据えている。トロルのご登場だ




