十八
「優しくも厳しかったんだ、父は。剣を教えてくれていた時は鬼のように恐かったのに、剣から離れると私の事を第一に考え、私の我が儘にも文句一つ言わずに付き合ってくれた」
僅かに、東雲さんの肩が震える
「母は私を産んで間も無く、魔物に襲われ亡くなった。私にとっては父が世界でただ一人の父親で、ただ一人の家族だった」
…嗚咽が聴こえる。東雲さんの肩の震えが大きくなっていく
「信じたくない…認めたくない…!父がもうこの世に居ないなんて…!もう二度と会えないなんて…!そんなの嫌だ…嫌だよ…!」
気付けば東雲さんは大粒の涙を流しながら俺の肩を強く握っている。俺は何も言わずにただ東雲さんの言葉を聴いていた。それで東雲さんの心が少しでも軽くなるなら…
「本当に見苦しい所を見せてしまった…」
気恥ずかしそうに視線を逸らしながら東雲さんが言う。そんな東雲さんに俺は小さく笑って返す
「あれが当たり前なんですよ。どうですか?少しは気が紛れましたか?」
「正直、ちゃんと心の整理がついたかと言われるとしっかりとした答えは返せないけれど、君の肩を借りる前と比べると随分と楽にはなったよ」
「なら良かったです。東雲さん、さっきより大分マシな顔になってますよ」
「む、それは随分失礼な物言いじゃないかな?」
「いやいやいや。さっきまでの顔は口から魂出るんじゃないかってくらい弱々しかったですもん」
「…そんなに酷い顔をしていたのか」
東雲さんはバツが悪そうに頭を掻きながらパンパンと二度自分の頬を叩き、俺の事を見る。うん、いつもの凜とした東雲さんに戻ってくれたみたいだ
「あの大剣は持っていかないんですか?」
「父にはすまないと思っているが、あれを持ちながら闘うのは酷だ。君が持ってくれるのかい?」
あ、馬鹿にしてるな?いいさいいさ、持ちますよ!大剣っつってもあれだろ?重くてもそんな持ち上がらないとかそのレベルじゃないっしょ。持って行くくらいなら俺だって出来る。こんな所に置きっぱなしにしていくのは可哀想だしな
「いいですよ、持ちますよ。戻りましょう」
「…気持ちは有り難いんだが、父の大剣は本当に重たいんだよ?大丈夫かい?」
「大丈夫です!俺だって男ですよ?任せて下さい!!」




