十七
適当に座れる岩を見つけると俺はそれに腰を下ろして溜め息を吐いた
辺りを窺うとは言ったけど、東雲さんを一人にしてあげる事が本心で言葉は飾りだったから辺りを散策する気は無かった。下手に散策して魔物に出くわしたりでもしたら、東雲さんにまた迷惑を掛けてしまう。そんな事は絶対にしたくない
…覚悟はしていたと東雲さんは言っていた。でも、いくら覚悟していたとはいえいきなり非情な現実を叩き付けられて人はそれを受け止められるのか?
答えはノーだ。現に東雲さんは受け止めきれずにいる。辛い現実を叩き付けられて動揺してしまった
普段の凜とした東雲さんが泣くんだ。どれだけ辛い思いをしたのか、悲しい思いをしたのかなんて俺には到底測り得ない。東雲さん……大丈夫かな…本当に…
暫く座ったままそんな事を考えていると、東雲さんがこちらへ歩いて来た。その目は…赤い
「すまなかったね暁君。要らぬ心配を掛けてしまって」
そう言って東雲さんは笑ってみせた。取り繕った精一杯の笑みだったんだろうが、こんなに力無く笑う顔を俺は今まで生きて来て見た事が無かった
「東雲さん」
「…何だい?」
「無理しないで下さい。強がらないで下さい。泣きたいなら思いっ切り泣いてもいいじゃないですか」
「…何を言ってるんだい暁君。私はもう大丈夫だよ」
「大丈夫な人はそんな顔で笑いません。俺なんかに取り繕って見せないで下さい。この現実に直面して平気な人なんていません。平気な人は人間なんかじゃない、ただの心を持たない機械と同じです」
失礼な物言いだったかもしれない。東雲さんの俺への配慮を無駄にする最低な言い方だったかもしれない。それでも俺は、東雲さんにあんな顔をさせたくなかった
東雲さんは驚いたように目を少し見開くと唖然としたように口を開いたまま放心してしまう。やっぱり言い方がまずかったんだろうな…
「……少し、だけ……弱音を吐く…」
俺に近付いて、東雲さんは俺の肩に顔を埋める
「……信じたくなかった。あの父がこんな事になるなんて」
やがて、ぽつりと呟くように東雲さんが口を開く。消えてしまうんじゃないかと思ってしまう程のか細い声だった




