十五
洞窟の内部をこれでもかという程走り回って漸く巨大岩の罠から解放された。小さな窪みが出来ていた所に二人で入って、巨大岩はそのまま俺達をスルーしてゴロゴロと転がっていき、奥の壁に衝突して止まった
二人共盛大に息を切らしながらその様子を見て……緊張の糸が解けたからか、へなへなと腰が砕けてしまった
「た、助かったぁ…」
「こ、こんなに…し、死ぬかもしれないと思わされたのは…は、初めてだ…」
二人共息が切れまくってるせいで碌な会話が出来ない。お互いに顔を見合って力無く笑うと溜め息が出た
「すみません…俺の不注意で…」
「いや、君が罠を踏んでくれたお陰であの状況を切り抜けられたんだ。むしろ感謝してるよ」
「そう言ってもらえるとありがたいです…」
「ただ…無我夢中で走り回った所為で、此処が何処に位置しているのか全く分からなくなってしまったね」
…東雲さんの言う通りだ。何回右に曲がり、左に曲がったのかなんて逃げるのに精一杯でとても覚えていない。あの口振りからするに東雲さんも同じだろう
「息は整ったかい?」
「ええ、何とか…東雲さんは?」
「うん、私も何とか整ったよ。先のように囲まれないよう注意しながら戻ろう」
そう言って東雲さんはすっと立ち上がる。ぽんぽんと服に付いた砂を払い、身辺を整える。俺も同じように身辺を整えると、東雲さんがくすっと笑った
「どうかしました?」
「いや、誰かと一緒というのはいいなと思っただけだ。今まで旅をしてきて、こんな風に誰かと一緒に危険を共にしたり、逃げ回ったりした事は無かったから」
「情けない限りです…」
「…君は面白いね暁君。気に入ったよ」
あれ?なんか知らないけど東雲さんの好感度が上がったよっしゃー!
あれか、吊り橋効果的なやつか?恐い思いをするとそれを恋愛のドキドキと勘違いするっていうあれか!?
「罠を踏んだあの一歩…私を護ろうとしての一歩だったんだろう?嬉しかったよ。無理矢理連れて来たにも関わらず、ああやって自分の命を顧みず私を護ろうとしてくれた事」
何かめちゃくちゃ好意的に受け取ってくれてる。これはワンチャンあるかもしれない(ゲス思考)
「……君は思考が顔に出易いね………簡単に籠絡出来ると思わないでくれないかな?少なくとも、私より弱い男に私は惹かれないからね」
この瞬間、この世界の大多数の男が東雲さんの候補から外れたのであった(俺含む)




