03 びっくりするほどユートピア
今日も人間拡張の実験室で、
リュウホウとブレンダがイチャイチャと談話をしている。
「リョウホウ、今日は、いかに人間拡張が優れた技術で
世界が平和なユートピアになるかを主張したいと思います」
「どうぞ、どうぞ」
「えー、それでは、人間拡張の技術を使えば人間の思考さえ
操作できます。 思考や行動も監視できて、不正な利益や、
密漁や悪戯や交通違反、全て監視され、信用スコアで
善人が得をする社会になり、大きな犯罪は未然に防ぎ、
何をやりたいかさえ操作でき、操作された事さえ
気づかないでしょう」
「ほほー、それはすごい」
「つまり、犯罪を起こしそうな人も、ある程度までなら
思考操作で、犯罪に走らないよう抑制でき、制御できるのです!」
「思考制御で操作できないほどの悪人や反政府的な人はどうするの?」
「残念ながら正解平和のために、人間拡張で操作できる人達を
使って事故などにみせかけて暗殺されます」
「ひどい話だな。 ものみの塔の冊子の1ページ目に書いてある
ような、びっくりするほどユートピアな世界になると?
人間には自由意思というものがあって、
誰がその意思を束縛すると言うのか。 本当に善人や寛容な人が
決める分には、ユートピアかもしれないけど、悪党が決めた世界は
ろくでもない世界になるぞ!」
「そんな事は……、ないと思うよ……、私のパパが酷い事を
するわけないじゃない……」
「そんな保証はどこにもないと思うけどな。 今日は、もう帰る!」
「リュウホウ! 待って……」
リュウホウは、さっさと帰ってしまった。
「バレンタインデーのチョコレート……、渡しそびれちゃった……」