第2話 マギアエデンにて
陸からおよそ120km離れた太平洋の上。埋め立て地にも見えるが、巨大な船や古代の要塞にも見えるその地——マギアエデンに、1人の少女型ゼノマギアは降り立った。
そのゼノマギア、マキナ・デックスは改めてその土地を不可解に思った。
200年前、<マギアウォー>が始まってから太平洋に突如として現れた陸地であるマギアエデンは、地表やそびえ立っている摩天楼までも鋼鉄でできており、青色のヒビのような模様が施されていた。
マキナがここに来たのは、妹であるリオンを助ける為であったが、このマギアエデンは広い上に前人未到の地である故に警戒して進まねばならなかった。
マキナが周りを警戒しながら進んでいると、早速異形、蜘蛛型ゼノマギアが飛び出してきた。
蜘蛛型ゼノマギアは、前足2本から弾丸を連射してきたが、戦闘用ゼノマギアであったマキナはそれを軽く躱し、背後に回り込んで回し蹴りをし、頭部パーツを粉砕した。
「一体、どこにいるのやら…」
敵意を放つゼノマギアたちを認知することはできるのに、姿は見えない。様々な型の異形のうごめく気配はしても、物音がしない。
そこは、本当に不可解な場所だった。
このままでは、正気を取り戻していることを気づかれてはリオンが危ない。そう感じたマキナは、足裏の小型ブースターを起動させ、駆けた。
その動きには迷いがなく、摩天楼の角を幾つか曲がり、道を塞ぐ異形のゼノマギアを撥ね飛ばし、そしてとある一角に辿りついた。
そこには、マキナに似た容姿の、同じ薄水色の髪をした、マキナが14歳くらいなら12歳くらいに見える少女が座り込んでいた。
「マ、マキナ!!思ってたより早かったじゃない」
「200年も自我がなかったんじゃ状況もろくに分からなかっただろうと思ってできるだけスピード出してきたんです」
「ホントは私のことが心配でたまらなかったんじゃないの~?」
「そ、それも一理ありますが…」
「やっぱりマキナは寂しがりだな~」
そんなことを言って屈託なく笑うその顔を見るのも実に200年振りで、マキナはなんだか懐かしいように感じた。
「相変わらずお姉さんぶろうとするんですね。お姉さんは私ですよ」
「わかってる。それより、今の状況知りたいな~」
「はいはい、今教えますから」
「教えられたって理解できないよ!私はこの目で、この耳で体験したいの!」
「そんなこと言われたって困ります」
「じゃあこうすればいいじゃん!【プログラム起動】!」
リオンのその声と同時に、2人は青い光の空間に飛ばされていた。
「こ、これは何ですか!?」
「これは私が開発したプログラムで、対象の指定した時間に辿った経験を見ることができるの。」
「へぇ…。まさか、それで私のしてきたことを覗き見するのですか!?」
「覗き見だなんて人聞きが悪いよ。さて、まずは200年前くらいから見てみよう!」
そして、空間は変化していった。