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第9話「あやしい火」

3号車の怪しい乗客の監視を続けるジョニー。

窓の外にあやしい火があらわれて、車内は騒然となります。

タイチは猟銃を網棚に上げると、そこでぐいぐいとウイスキーの小さなカップを12杯も飲み干しました。酔いがまわって、もう目を細めて唇をなめながら、周りの人々を見つける度にからみ始めました。


タイチ:「ねぇ、おい、子熊の首のところの毛皮だけだぞ。ええ、上等さ。

君、君、君のその外套は全然毛じゃないよ。どうしてどうしてちゃんとわかるよ。それは本物の毛じゃないよ。本物の毛皮じゃないんだよ」


紳士2:「失礼なことを言うな。失礼な」


タイチ:「いや、本当のことを言うけどね、確かにそれは偽物だ。絹糸で作り上げたんだ」


紳士2:「失礼な奴だ。君はそれでも紳士かい」


タイチ:「いいよ。僕は紳士でも商人でも何でもいい。君のその毛皮は偽物だ」


紳士2:「野蛮なやつだ。まさに野蛮だ。どうせそのレッド・ベアだって毒か電気で捕ったんだろう」


タイチ:「貧乏人になにがわかるもんか!」


紳士2:「あっちに行け!」


その紳士はすっかり怒って、それでもなにかきまり悪そうにまた寝たふりをしました。


タイチはその後も乗客にからみましたが、こんな赤ん坊のような困った酔っぱらいの相手をする人はありません。


タイチ:「こんな汽車乗るんじゃなかった、わしのクルーザーで来れば良かった」


そうつぶやくと、タイチは猟銃を網棚に置いたまま、イビキをかいて寝はじめました。


すると、突然電灯が薄暗く赤くなりました。窓の外は月の光に照らされ、まるで琥珀のように青びかり、一瞬で皆の顔が寂しげに見えました。


乗客1:「まっくらでござんすな、モンスターが出そう」


ひとりの乗客が少し身をかがめて、若い船乗りののぞいている窓から外をちょっと見ながら言いました。


乗客1:「おや、変な火が見えるぞ。誰か焚火をしているのかな。おかしいな」


乗客2:「レッド・ベアの襲撃かもしれない」


乗客1:「モンスターが火を焚くかな」


乗客2:「人間の仲間もいるって聞いたぞ」


車内は騒然となりました。


その時、電灯が再び明るくなりました。あやしい一列の火は遠いままで近づく様子もなく、乗客たちは不安な気持ちのまま、寝る準備を始めました。


しかし、さっきの窓の近くに座る船乗りの若者と、客車の隅で鉛筆をなめながらじっと耳を傾け、何かをメモしているあの痩せた赤ひげの男性だけはしっかりと目を覚ましていました。


ジョニーは寝たふりをしながら、車内の監視を続けました。

いよいよ、レッド・ベアの襲撃が迫っているのでしょうか。

ジョニーたちと水星少女歌劇団一行の運命やいかに。


今回は、宮沢賢治作「氷河鼠の毛皮」をもとにしています。本作ではレッド・ベアの毛皮のコートに改変しましたが、原作では氷河鼠の毛皮の外套です。ChatGPTにライトノベル風にと指示して、かなり短縮してしまっています。原作のタイチと乗客のやりとりはとても面白いので、ぜひ原作をお読みください。

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