第8話「タイチのレッド・ベア狩り」
水星少女歌劇団の乗る1、2号車の護衛は、マリアとエミリーにまかせて、ジョニーは怪しい乗客のいる3号車の警備に向かいました。
ジョニーは3号車の先頭のボックス席に座ると、そっと車内を観察しました。
猟銃を持った男はすぐわかりました。
赤い顔をした太った金持ちが、金の指輪をはめた手で猟銃を持ち、ガラガラした声で自慢話をしていました。
タイチ:「わしはねイーハトーブのタイチだよ。イーハトーブのタイチを知らんか。こんな汽車へ乗るんぢやなかつたな。わしのクルーザーで来れば良かったな」
紳士1:「そのコートはなかなか凝った作りですな。何の革ですかな?」
タイチ:「これはなんと、レッド・ベアの子熊の首の皮だけで作ったものさ。最高級の品質だよ。ほんとうにな、わしのこの子熊の首の皮の外套は最高じゃないか。見てみな、この豪華な毛皮の輝きと手の込んだ仕立てを。まるで一流の芸術品じゃないか。レッド・ベアの子熊だからな、最高級の品質なんだ。貧乏人には想像もつかんだろうが、レッド・ベアのような下等な生物からこんな上等な革を手に入れることができるんだ。まあ、あんなけだものの下品な生き物にもそれなりに価値はあるんだよ」
紳士1:「子連れのレッド・ベアは狂暴だそうですな」
ジョニーは聞き耳をたてて、このタイチという男は、レッド・ベアのシンパではなさそうだ、と思いました。
猟銃を持ったタイチが敵でないなら助かるとも思ったのです。
タイチはさらに得意げに語り始めました。
タイチ:「そうとも。狂暴なけだもの相手さ。そこで、我が猟団は100人の狩人から成り立っていたのだよ。豪快な男たちだったね。私が指揮し、私の計画でレッド・ベアの狩りに挑んだ。彼らは私の命令に従って、900頭のレッド・ベアを征服したのさ。見事な狩猟だった。その中から選りすぐりの美しい子熊を見つけ、皮を厳選してコートを作ったんだ。皮の質感、毛並みの美しさはまさに絶品だった。残りは川に流してやったよ。ははは。」
ジョニーは、いやむしろレッド・ベアと環境テロリストの標的はこの男じゃないかと思いはじめました。
水星少女歌劇団を標的とした身代金目当ての誘拐や、単なる強盗ではないのかもしれません。
このタイチという男への復讐ということになると厄介だとジョニーは思いました。
復讐するモンスターの行動は合理的な推理を越えることがあるからです。
ジョニーはさらに車内を見回しました。
いつか暗闇が周囲を包み込み、春の季節とは思えないほどの寒気が広がっていました。その中で、船乗り風の青年がポケットから小さなナイフを取り出し、窓のシダの葉のような形をした氷をガリガリと削り取っていました。
削り取られた窓ガラスの一部は冷たく透き通り、遠くに広がる山々の雪が輝き、鉄色の冷たい空にはまるで磨き上げたような青い月が一際輝いていました。
ジョニーはナイフを持った船乗り風の青年も注意してみておこうと思いました。
また、3号車のすみに、ひょろりとした体つきの赤い髭をたくわえた男性が北極狐のような様子で静かに座っていました。彼は目をギラギラと輝かせながら、周りの話し声をじっと聞き入って、しきりに鉛筆を舐めながらメモをしていました、
ジョニーはこの男も怪しいと思いました。
紳士1:「そうですか、すごいですね!」
タイチ:「どうだい、祝杯をあげようじゃないか!レッド・ベア狩りの成功に!」
タイチは興奮しながらコートを脱ぎ、ウイスキーの瓶を取り出しました。
さあ、怪しい乗客の多すぎる3号車。
レッド・ベアと環境テロリストの目的は?
さて、今回は宮沢賢治原作「氷河鼠の毛皮」のエピソードをもとにしました。
タイチの自慢話は、一度はChatGPTに拒否されてしまいました。
ChatGPT:「申し訳ありませんが、指定された内容は現実的ではなく、動物の乱獲や環境への無駄な浪費を促進するような内容となってしまいます。私たちは環境保護や持続可能な行動を奨励しており、そのような内容を作成することはできません。」
ChatGPTはなかなか高い倫理観を持っているようです。