第一章 始動編19
次の日、朝陽たちはコロニーから離れた場所に来ていた。
軽く準備運動をすると早速訓練を始めた。
「よし、始めようか。とりあえず今から俺がする事をじっくり見ててくれ」
そう言うと霊力を練り始めた。練り始めた霊力は次第に拳に集約され、その場に止まった。そして、止まると同時に目の前の岩を目掛けて全力で殴った。すると岩は粉々に砕けたが、拳は無傷だった。
朝日が驚いていると笑笑っていた。
「びっくりしたか。今のが教える技で『武装』って技だ。これは俺たちがあいつらと戦う為に編み出した対抗策だ。普通に魔法を使うよりも霊力の消費も少ない。気合い入れろよ、俺もこれを習得するまで一ヶ月掛かったんだ。それを三日で習得となると寝る時間なんて無いとお前よ」
「上等、それぐらいやらないとあいつには勝てない。だから早く教えてくれ」
「よし、まず初めに練った霊力を放出せずに体の周りに止めるところから始めろ」
朝陽は早速霊力を練り始めた。しかし、霊力を一定以上練ったところで霧散してしまった。その後も何度も何度も霊力を練ったが体の周りに止めようとすると霧散してしまう。
特訓を始めてから三時間が経った。一向に前進する気配がなく、疲労だけが溜まっていた。
「少し休憩するか」
「いえ、まだ大丈夫です。それに何か掴めそうな感じがするんです」
そうして朝陽は特訓を続けた。
一時間程経った時、ようやくうっすらとだが拳の周りに霊力を維持する事が出来るようになった。
「はぁ、はぁ。ようやくスタートラインに立てた」
「流石だな、星霊は霊力の流れを掴むのが早いな。次の訓練だが纏った霊力を変質させる事だ。変質化させれば最初に見せた硬質化させた拳で岩を砕くだけではなく軟化させる事で魔法を吸収する事もできる。だが霊力の変質はさっきの比では無いほど難しいぞ」
「わかりました」
そしてすぐに取り掛かった。
だが今回はあまり時間が掛からなかった。
最初の霊力を纏う段階で変質化がほとんど出来ていた。その為、纏う霊力の量が増えただけで流動的に変質化も出来るようになっていたのだ。
少し驚いた顔をしていたが、最後の特訓を始めた。
特訓といっても来る日まで練度を上げる事だ。
「まさか一日でここまで形になるとはな残りの時間で練度を上げるぞ。練度を上げればただの武器にも纏わすことが出来るようになる。後二日で出来るところまでやるぞ」
そして、二人はそれから時間になるまでひたすら特訓を続けた。
そして当日になった。時間の少し前にその場に着いた。朝陽は目を瞑り気持ちを落ち着かせた。
そして時間になった。朝陽の目の前に黒い影が現れ、そこから待っていた相手が現れた。
「ようやくこの時が来たね。私も待ち侘びたよ。さあ、決着を付けようか」
「あぁ、本気でやり合おう」
二人の全力の勝負が始まった。
「アマテラス!」
「*****!」
霊装と同時に二人はぶつかった。
二人の剣が交わった瞬間、大きな音と共に強い衝撃波が周りに伝わった。
最初は二人とも魔法で作った剣で戦っていた。二人の剣撃が段々と早くなっていった。だが、力が拮抗しているせいで決着が付かなかった。
二人は決着が付かないと感じ、即座に魔法に切り替えた。
だが、魔法同士でも全くといっていい程差が無かった。
「あれから三日でここまで成長しているとは、予想より遥かに高いなんて嬉しいよ。これでもう少しだけ本気を出すことが出来る」
黒い星霊はそう言うと霊装が変化した。
「さぁ、第二ラウンドの始まりだ」
その言葉に朝陽は、より一層気を引き締めた。
引き締めたはずだった。だが次の瞬間、黒い星霊は目の前から消えていた。朝陽はすぐに霊力の流れを追って防御した。何とか守る事はできたが、その後も防戦一方になっていた。
「ここまで全力の力を出すまでもなかったかな」
「そろそろ私も新しい力を使わないといけないかな。
『武装・纏』」
「なっ何故その星霊の君がその力を使っている。人間の力を借りてまで何で」
驚きの表情をした後目からはハイライトが消えていた。
「人間の力に頼ろうとするなんて星霊として失望したよ。さぁ、続けようか」
失望と怒りと共に、さらに全力を出した。しかし、追うことができないほどの速さで動いていたはずだが、朝陽には追うことが出来ていた。
それもそのはず、練度を上げていく中で研ぎ澄まされ局所的に複数箇所の武装に成功していた。その為、今は霊装を纏っている中でも腕と脚、そして目といった局所的に武装をする事によって霊力の消費を抑えながら身体能力すら上げている。
またお互いに差が無くなってしまった。
だがその状態は長くは続かなかった。朝陽の一太刀が入った。
傷は浅かった為すぐに回復した。しかしその事実は、黒い星霊にとっては受け入れ難い事だった。
「私が、切られた?そんな事あるはずが無い。あってはならないんだよ」
そして、更に攻撃を激しくさせたが朝陽はそれを全て捌ききり、追い討ちとなる斬撃を数撃与えた。
黒い星霊は見るからに回復速度が下がっていた。
「なぜ、何故こんな奴に負けている。人間に力を与えられ星霊の風上にも置けない奴を見上げなければならない」
「それは君とは君達とは違い人間の手を取ったから強くなったんだよ」
「何だと、人間は悪だ。俺たち星霊は何度も何度も人間によって私達の世界を侵されてきた。そんな奴らと手を取り合うなんて出来るわけがないだろう」
「本当はそうなんだろうね。私も君達が間違っているなんて言うつもりはないよ。でもねだからといって戦い合うのは共感出来ない。だから私はこの戦いを止める為にも人間なの手を取った。星霊と人間の力の両方を持つ存在として」
「そうか、なら最後の勝負だ。個の力と多の力どちらが強いか白黒はっきりさせるぞ」
そう言うととてつもない霊力の集まりを感じた。
それは、目の前の景色が歪んで見えるほどのエネルギーだった。
朝陽は対抗するかのように霊力を集めた。
そして、二人は一斉に解き放った。
『極光』
『極黒』
二つの魔法がぶつかり合う。最初はどちらも拮抗していたがやがて朝陽の魔法が押し始め、徐々に間を詰めそして遂に黒い星霊を飲み込んだ。
巨大な爆発と共に土煙が舞い、次第に晴れてくると黒い星霊の胸が貫かれていた。
黒い星霊はその場に崩れ落ち、朝陽はすぐに駆け寄った。
「何で来た。私は戦いを挑みそして負けた」
「そうだね。でも、私は貴女を助けたい」
朝陽はすぐにアマテラスの治癒の力で回復しようとした。
しかし、治癒の力が霧散した。
「なんで」
「知っているだろう。星霊は体の中にある結晶を完全に消滅させられるとどうすることも出来ずに消滅する。最後に戦ったのが君でよかった。次に生まれた時は人を信じてみようかな」
そう言って黒い星霊は光の粒となって消えてしまった。
朝陽は最後の一粒が消えるまで空を見上げていた。
星霊の消滅は以前のカグツチとの戦闘の際に見ていた。
その時は離れたところから観ているだけだったが今回は違った。
自分の力で星霊を消滅させた。朝陽は感傷に浸り気持ちを落ち着かせた。そしてコロニーに戻り始めた。
皆んなを守れた喜びと悲しい結末による辛い気持ちに戸惑いがあったがもうすぐでやっと戻れる、その時だった。
朝陽の胸が魔法によって貫かれていた。すぐに後ろを振り向くとそこにはあいつより遥かに強いであろう黒い星霊が立っていた。
「まさかこの世界に君が来ているとは思わなかったよ。それに*****が消滅させられるとはね。それでも君はこの世界の住人ではない。ここで退場して貰おうか」
朝陽はその言葉を聴きながらゆっくりと消滅していった。
朝陽は目を覚ますとそこは最初に気を失った時の神殿だった。そこでは隣にアマテラスと楓が座っていた。
「終わったか。早速だがお腹を満たせ。あれから十日程が経っている。食事が済んだら次は向こうで手に入れた力を見せてみよ。楓、朝陽の相手をしてやってくれんか」
「良いですよ。私も気になっていましたから。目つきも変わって居ますので少し楽しみですよ」
そう言うと三人は食事を手っ取り早く済ませ訓練所に向かった。
「早速始めましょうか。来てください」
「わかりました。『武装・纏』」
朝陽が身に付けた力を見たアマテラスは少し嬉しそうに
「それが答えか」
嬉しそうなアマテラスを他所目に楓との戦闘のが始まった。
朝陽は一瞬で楓との距離を詰めると硬質化させた拳で殴った。しかし、楓もすぐに『結界』を張っていた。しかし、砕かれた。楓は驚き咄嗟に後退した。
楓も嬉しくなり、少し本気を出す事にした。
「霊装・ウリエル、少し本気を出すので気をつけてくださいね」
薄っすらと笑いながら手を前に向けた。
『大地の裁き』
突如として地面から無数の槍が朝陽を襲った。
だが、朝陽は状況を一瞬で読み取り全てを裁き切った。
楓は捌き切った姿を見て目を丸くして驚いていた。結構本気で撃った魔法だった。それを綺麗に捌かれてしまうとなると笑うしか無かった。そして、そこで戦闘は終了した。
「合格じゃな。まさかここまでやるようになるとは思わなかった。この分だと契約出来るだろう。左手を出すが良い」
朝陽は左手を差し出すとアマテラスは左手に重なるように手を重ねた。
手の甲が熱くなりそして契約が完了した。
「さて、契約はこれで完了だがまだ少し時間がある。更に力をなじませる為に少しここで修行していくと良い」
「ありがとうごさいます」
朝陽は、期日まで武装を馴染ませる為に訓練を続けた。
契約をした日の夜楓とのアマテラスは二人で会話をしていた。
「ここまでの力を付けるとは予想外じゃったが嬉しい誤算だった」
「どう言う事ですか?」
「楓だから話すが、私はもうすぐで自然に消滅してしまうだろう」
「なっ、何でですか」
「知っておろう。私があの人達と戦った時に負傷した事を。その時に結晶が割れてしまっていて騙し騙し過ごしていたが限界が近い」
「そんな、ってまさか」
「あぁ、そのまさかだよ。私は次のアマテラスに朝陽を推薦したいと言うよりも既に大半の力を彼女に渡した。時が来れば選択をする時が来るだろう」
「わかりました。貴女がその選択をされたのでしたら選択の時は私が朝陽を支えます」
「ありがとう」
「そんな大事な事何で私に言ったんですか?」
「楓だからだよ。燐は嫌いだからね」
笑いながらアマテラスは言った。
数日後、朝陽が戻る日が来た。
「完全に力を自分のものとしたな。だが、自分の力を過信するではないぞ」
「わかりました」
二人は感傷に浸っていたところ、扉が開いた。
「時間じゃな、別れるのはちと寂しいがまたすぐに会えるじゃろう。またな」
「ありがとうございました」
朝陽は振り返ると扉を潜った。
時は戻り、深月の試練が始まった。




