一章 始動編15
「行くぞ。霊装、ミカエル」
「少しだけ見せてやるよ。来い、ガブリエル。霊装」
燐は既にラファエルを霊装していた。よって二体同時のの霊装である。
後ろの三人だけで無く、横にいる海音も驚いていた。
「二体同時の霊装出来たんですか」
「うん、出来るよ」
「でも、あの時驚いてませんでした?」
「そりゃ驚くよ。二体以上を同時に霊装するには一定量の霊力が必要なんだから。まあ、今はそんなこと置いといて目の前に集中するよ」
そう言ってカグツチに向き直した。
カグツチは全く霊力の制御が出来ておらず、攻撃の一発一発がとてつもない威力だった。
周りに見境なく攻撃をする為、校舎は少しづつ破壊されてしまいこの騒動が秘密裏に終わっても大事になるのは明白だった。
しかし、その状況に感心することもできずただひたすらにカグツチに魔法を放つしかなかった。
「アイシクルコフィン」
「セイクリッドフレイム」
魔法と魔法のぶつかり合いで途轍もない爆音と共に空気が張り詰めていた。
二人が魔法を連発しても尚、後一歩のところで魔法が届かず二人は苦戦を強いられていた。
しかし、攻撃は絶え間なく続いている。
「もう少しなんですが、どうしますか」
「流石にこうなるとは思ってなかったな。しかし、攻撃を当てられなければトドメに繋げることすら出来ないからな」
話しながら攻撃をいなし続けていたらカグツチの攻撃の一つが二人の弾幕をすり抜けてしまった。
決して油断をしていたわけではない。むしろ、集中していたぐらいだ。
しかし、このような結果になってしまった。
「「!!!!」」
「やばいっ!」
二人は攻撃が当たると確信してしまった。
しかし、それは現実にはならなかった。二人の周りを包み込むようなシールドが展開されていた。
二人は後ろを見ると楓が手を翳していた。
楓は笑いながら怒っていた。
「二人とも焦り過ぎ。闘えるのは自分達だけじゃなくて、私も居るんだから攻撃が抜けてしまったぐらいで狼狽えない」
その言葉で今の状況を落ち着いて理解する事が出来た。
楓は既に三人の回復を終えて、出来るだけ周囲に被害が出ないように防御をしてくれていた。
既に壊れてしまった校舎は戻らないが、それ以上の被害を出さないために頑張ってくれていた。
私も闘うと言い一体の星霊を呼び出した。
「久しぶり、玄武。元気にしてた?」
「はい。お久しぶりでございます、楓様」
楓は更なる最上位星霊を呼び出していた。
そして、その星霊を霊装していた。
楓も二体の星霊を平気で霊装していた。
燐ができた時点で予想は出来ていたが、実際に目の当たりにすると驚きが優ってしまう。
しかし、その驚きを誰も口には出さなかった。
三人は直ぐにカグツチに向き合い戦闘を再開した。
再開した際に燐は一本の剣を取り出した。
その剣は刀に近いもので、燐はその刀について説明をした。
「その刀は、星霊を斬れる刀だ。星霊に魔法以外でダメージを与えるには、特定の武器しか与えられないんだ。だからこれで海音、お前がトドメを指すんだ。それが一番カグツチにとってもいいんだよ。だから頼むぞ」
「ああ、分かった。絶対にこれで終わらせよう」
「私が出来るだけ護るから、二人は目の前のルートだけに集中してね」
「「了解」」
そう言って二人は真っ正面に向かって全力で飛び出した。
真っ正面以外は楓が全力で護る。
正面の攻撃も八割は燐が対処をしていた。
二人の全力のサポートの有り難さを感じながら海音は進んで行き、ようやく刀がカグツチに届いた。
「「「いっけぇー!」」」
後ろで見ていた三人の声と共に、海音はしっかりと刀を握り全力で振り切った。
刀はカグツチの右肩付近から斜めに通った。
カグツチの攻撃が止んだ。カグツチが倒されたからだ。
海音は倒した後、全力を出し切ってしまいそのまま気を失った。
そして海音の頭の中でカグツチと少し会話をした。
(よくやってくれた。ありがとう。
これで私の役目も果たせたと思っている。
後は、君にこの力を託すことにするよ。
時が来ればこの力は絶対に必要になるだろう。
その時にまた会おう。
では、さらばだ)
こうして海音とカグツチの繋がりが一時的に終わった。
そして海音は意識を取り戻した。
気を失っていたのはわずか五分程だったが、海音にはもっと長い時間に感じられた。
しかし、カグツチとの会話はどうしても思い出せなかったがいくら考えても仕方が無いと思いとりあえず忘れる事にした。
勝利を喜び合っているとその場に今回の事件の元凶である保科麻美が現れた。
その瞬間、その場が一気に凍り付いた。
何故、今になって現れたのかわからなかったが全員が一気に戦闘体制に入った。
しかし、戦闘する気はないと言ってきた。
「どう言う事だ。なんで今更ここに現れた。目的はなんなんだ」
「もう、急に幾つも質問しないでよ。戦闘する気が無いのは本当だよ。それに目的もほとんど果たせたんだけどね。これだけはこの子に渡したくて」
そう言って海音にカグツチから抜き取った星霊結晶を手渡した。
「私達にはもう必要が無くなったから君にあげるよ。君に渡したほうが面白そうだしね」
そう言うと、急に保科の背後から新たにフードを被った人物が現れた。
フードの人物は小声で保科に何かを話していた。
そして二人は帰り際に、
「また何処かで会おうねー。さあ帰ろうか。じゃあね」
燐は保科と一戦交えようとしていたが交えなくて正解だった。
後から出て来たフードの人物は、保科以上に強い人物と感じたからだ。
しかし何が目的だったのか分からなかった為、考えようとしたが今はそれどころではなかった。
既に夜は明けてきており、太陽が見え始めていた。
この惨状にいる姿を見られるわけにはいかない為、直ぐに現場から離れないといけなかった。
楓は直ぐに結界を解き、六人は体を支えながら急ぎながらもゆっくり帰路に着く事にした。
カグツチとの戦闘が終わった後、六人は気が付いていなかった。
そこには六人の他にも一人、その場にいた事を。
「今のはなんだったんでしょうか。それにあの六人はうちの生徒でしたが、何を隠しているんでしょうか。それにしても...この状況どうしましょうか」
今後のことを考えながら、その人物は帰路についた。




