一章 始動編14
燐がカグツチとの戦闘が始めてから5分が経過していた。
四人は息を呑む攻防から目を離せずにいた。理由は明確で、燐がカグツチの攻撃を全て同じ力で相殺し、更にダメージまで与えていた。
「すごい。あの速さで戦闘を行うなんて」
「それに完全にカグツチを圧倒している」
四人は自分達との差を感じながらもその戦闘に集中した。
しかし、カグツチを圧倒していると四人には思われていたが、楓だけは遊んでいるようにしか見えなく、早く終わらせろと思っていた。
カグツチとの戦闘が始まって10分が経過したところでカグツチが片膝を付いた。
ようやくカグツチに限界が訪れたのだ。
無理もない。全力で10分もの間、魔法を連発していたのだから流石は星霊と言うべきだ。
それでもカグツチ以上に魔法を連発していたが平然と立っている燐も相当な化け物だと思えてくる。
「二人とも化け物すぎるだろ」
「それでも勝ったのは燐でしたね。あのレベルの戦闘を間近で見る事ができて良かったと思いますよ」
楓の言葉に四人は頷くだけしかできなかった。
そして、全員の目標が明確になった瞬間でもあった。
燐は最後にカグツチとの契約を行おうとしていた。これで終わりだと誰もが思った。契約も途中までは何事も無く進んでいた。
しかし次の瞬間、カグツチの胸元から手が飛び出していた。
その手には赤色の結晶体が握られていた。
「ダメですよ。あなたが契約しては意味がないじゃないですか」
その声の主はカグツチの後ろの黒いモヤからしていた。
その人物はカグツチから手を引き抜くと黒いモヤの中から姿を現した。その人物は封印を解いて消えたはずの保科麻美であった。
「流石に封印を解いたばかりの星霊では貴方の相手にはなりませんでしたか。しかし、ありがとうございます。これで、手間が省けました。さあ、最終ラウンドですよ。あなた一人では難はないでしょうが彼らと一緒ではそうもいかないでしょう。楽しんでください。では、失礼します」
そう言うと黒いモヤの中に消えていった。
消えた後、カグツチの様子が一変した。自分の霊力を制御する事が出来なくなっていた。
「これ、今までよりも格段にまずい状況になってませんか。僕たちはまだ動けませんし、そんな僕たちを守りながら闘うのは難しいです。なので私達には構わないでください」
「そうだよ。私たちに構わずに全力でやってください。私達なら大丈夫だから」
「構わずになんて出来るわけがないだろ。そんなことをしたらまた失う。だから全員を護らなくちゃいけないんだよ」
その強いまでの決意、そして悲しみを四人は感じ、楓の目からは一粒の涙が溢れていた。
四人は動けないなりに何かをしようと試みた。その時、海音の頭の中に声が聞こえた。
“助けてください。そして、貴方が私を倒して”
その言葉に後押しされたかのように動かない体に力が入り、自然と立ち上がった。そして燐の肩に手を触れた。
「待ってください。僕も一緒に闘います」
「無理に決まってるだろ。それに既にボロボロだろ。そんな体で闘わせるわけにはいかないんだよ」
「それに関しては否定はできません。既にボロボロです。
ですが僕がやらなくてはいけないんです。
それに、頭の中で言われたんです。
助けて、そして私を倒してって。
そんなこと言われたら、引き下がることなんてできません」
頭の中に響いた言葉を言った。その言葉を聞いた瞬間、燐は驚いたような顔をしていた。
(まさか、選ばれたのか。それなら)
少し考えたのち、結論を出した。
「分かった。一緒にやろう。その代わり最上位星霊と仮契約をしてもらう。それが条件だが、仮契約が終わった後にデメリットがある事だけは忘れるなよ」
「そんな事、大丈夫です。僕は、カグツチを助けたい。今はその気持ちだけが有ります」
「分かった。じゃあ星霊を呼び出す」
そう言って燐が星霊を呼び出そうとしたら、魔法陣から自ら星霊が飛び出してきた。
「カマエルちゃんとーうじょーう。君の事見ていて面白そうだったから、私が仮契約してあげるよー。これでも最上位星霊の中では強いから期待してくれて良いよー」
「げっ、カマエル。なんで出てきた。呼んでねえだろ」
「げっ、てなんなのさ。相変わらず失礼だね。しょうがないじゃんか。面白そうな人を見つけたんだから」
「面白そうってどう言う事だよ。まぁ、仮契約してくれるならちょうど良いか。すまないすぐに取り掛かってくれ。左手で行うから左手を出してくれ。仮契約をしている間は、俺が全員を護る」
そう言うと燐はカグツチに向かった。
海音は言われた通りに左手を差し出した。本契約では名を交換し合い右手での契約だが、仮契約では左手を出すだけだった。
仮契約は一分程で終わった。終わると直ぐに燐の元へ向かった。
「お待たせ。仮契約が終わったよ」
「出来たか、これで全力で闘える。付いてこいよ」
「ああ、やってやるよ」
こうして燐&海音VSカグツチの闘いが始まった。




