一章 始動編12
楓達が来る30分前、いつきが少し用事が出来たとその場から離れている時、いつき達が護っている結晶にフードを被っている子供と思しき人物が正面から堂々と歩いて来た。その姿を見た一人が注意をする為に向かった。
「こらこら、此処は危ないから他の場所に行きな。お兄さんが向こうまで連れて行ってあげっ」
最後まで言う事が出来ず右の壁に叩き付けられていた。その手には大鎌が握られておりその峰で殴られたようだった。この場の隊長であるいつきが居なかった為、副隊長が指揮を取りながら戦闘を開始した。しかし、侵入者に攻撃を当てるどころか周りには何人もの隊員が倒されていた。
圧倒的なまでの力の差に諦めかけていたその時、いつきが帰ってきた。
帰ってきたいつきはその場の状態を見ると直ぐ様この状況を理解し、戦闘モードに入った。
「力を貸してください。纏え、『リヴァイアサン』」
「少しは楽しめそうだ。来なよ」
「言われなくても参ります。『海竜の嵐獄』、『テンペスト』」
莫大な霊力と共にとてつも無い雨風が起こった。
周りにいたものは今の攻撃を見て勝ったと思っていた。ただは二人を除いては。
一分が経ったであろうその時、斜めに一閃亀裂が走ったかと思うと敵を囲んでいた嵐が消し飛んだ。中から出て来て無傷という結果だった。
「まさか、此処までできる人が居るとは思って無かったから油断してたよ。
でももう終わりなのかな?
まだあるなら見せてよ」
自信があった分、少し悔しかったが下を向いてられる程甘い敵ではないと分かっていた為、更にギアを上げた。
「喜んで見せてあげるわよ。『海竜の激爪』」
するといつきの腕に海竜の鉤爪が形作られた。
次の瞬間いつきが消えたかと思うと鉤爪と大鎌が対峙していた。いつきは何度も攻撃を繰り返し、侵入者は防御に徹していた。
しかし、それは長くは続かなかった。突如いつきが吹き飛ばされた。すると攻守が逆転した。防戦一方になってしまったいつきを助ける為に周りの仲間が攻防に割り込んだ。周りを見渡した侵入者は明らかに不機嫌になった。
「白けたことしてんじゃねえよ。まあいいや。そろそろあっちも終わった頃だろうしこっちも終わらせるか」
そう言うと侵入者が消えたかと思った次の瞬間、自分を除く周りの人間は全員倒され、侵入者は結晶の前に立っていた。
「これで終わりだよ」
結晶は綺麗に砕かれた。
「そんな、護れなかった。でも、彼らが来るまで貴方を足止めします」
もう一度戦闘を再開しようとしたが叶わなかった。今までの全開戦闘で霊力が尽きていた。霊装は消え立つことすら出来なかった。
薄れゆく意識の中で侵入者はいつきに伝言を伝えたところで意識が途切れた。
楓達が到着するとそこには意識を失った人達が沢山いた。その中に居たいつきに駆け寄り回復魔法をかけた。少しすると意識を取り戻し事の詳細を話した。
化け物じみた戦闘力がある事を聞きあの場から直ぐに離脱したのは正解だった。
いつきの回復を終えるとちょうど燐が合流した。
燐は焦っており、六人に直ぐに敵を追わなければ大変な事が起きることを伝えるといつきは意識を失う前に言われた伝言を思い出した。
「そういえば、あの侵入者から皆んな宛に伝言を預かったのよ。内容は“全てが交わる場所で待ってるから楽しみにしているよ。”って言ってたわ。正直言って罠である可能性がゼロでは無いから行くなら気を付けてね」
その伝言を聞いて深月はタブレットを取り出した。
そして地図を表示し、何かを書き込むととある所を指差した。
「恐らくすべてが交わる場所ってここの事じゃない?」
「まさかここって私達の学校!」
「うん。今までに起きた場所を対角線上に線で結ぶと中心が重なるの。それを今の地図に合わせるとピッタリなんです」
「ありがとう。直ぐに向かうぞ。早くしないとまずい事が起きる」
すると燐は直ぐに扉を開いた。
楓は燐がこちらに連れて来ていた男をいつきのそばに連れて行き、
「いつきさんはこの男を拘束しておいてください」
「わかったわ。でも大丈夫?無理だけはしないでね」
「心配しないでください。私達でなんとかします」
そう言うと燐の元に向かった。
「全員しっかりコートに霊力を通せよ。扉の向こう側がどうなっているかわからないからな」
「大丈夫。全員準備は出来てるよ」
「よし、行くぞ」
燐の声に合わせて全員が扉を潜った。
(皆んな、無事で帰って来てね。)
扉を潜った先は学校の正門だった。
六人は正門を飛び越えると、二手に分かれて捜索を開始しようとした時、グラウンドからとてつも無い霊力の波動が流れて来た。
「くそっ、遅かったか。行くぞ!」
グラウンドに着くと、コートに霊力を通していなければ意識を失ってしまう程の霊力よ奔流が迸っていた。
その中心には今までより大きな結晶が煌めいていた。
「やあ、遅かったね。燐くん。待ってたよ」
そこにはいつきを倒し、燐でさえ取り逃してしまった人物が立っていた。
「ごめんね、そういえば名乗ってなかったね。私の名前は保科麻美、燐くんや楓ちゃんと同類だよ」
「おい、どこでそれを知ったんだ。さっさと答えろ」
「その質問に答えることはできないよ。それにこんな話をしていて良いのかな。そろそろだよ」
そう言うと奴の上にあった結晶が崩れ落ちた。
一足遅かったのである。
六人が来た時点で結晶は壊されていた。
「さあ、これで封印は解けた。目覚めよ『カグツチ』」
その声と同時に地面には巨大な魔法陣が浮かび上がるとそこには星霊が立っていた
「さあ、第一ラウンドの始まりだ。直ぐに負けてくれるなよ」




