修行
~野原~
雷速『瞬雷』
それまで距離が保たれていた二人の距離感が才斗の技によって一気に縮まる。
そして、才斗の竹刀は次には俺の体に入っていた。
才斗「2本目。次だ、光真」
光真「あー、またか。」
俺も能力を使えるようになりてー。というか、このルールが不利すぎる
~3時間前 才斗視点~
才斗「で、実際にどう修行するんだ?」
俺がそう聞くと、光真は「考えてなかった...」
みたいな顔をしたので諦めた。当然水香もである。
才斗(大丈夫か、こいつら)
とはいえ、俺もわかるのは基礎ぐらいだしそれをやっていた上であの『呪変』には対応すらできなかった...つまり、格上もしくは技術を持つ人が指導者にいないと著しい成長は見られない
どうしようか考えていた時、光真の頭の上から光の穴ができて、そこから人が出てきた。
堕天「やっほー!久しぶりってほどでもないけど、ただいま~!」
水香・才斗「うわ!」
俺と水香は二人ですっとんきょうな声を上げた。
そりゃあ、いきなり知らないテンション高い人が来たら驚く。
光真「ルシフェル!?お前今まで何してたんだよ!」
光真の知り合い...?こいつのこと知ってる人でまともそうなのをまだ見てないぞ。
水香「えっと....光真、この人知り合いなの?」
水香の問いに光真は少し困った表情になった。訳を聞くと、自分をこの世界に連れてきた張本人であるらしい。光真も俺たちと同じで、現世からこの元雄界に移動してきた人間であった。
現世からの移動者は少ないらしいが、俺や水香はあまり驚かなかった。元々、そんな気がしていたのもあったし、ブラックエンシェントなどに狙われている時点でここの住民のはずがないことはわかっていた。
堕天「あ、ごめんね〜自己紹介もなしに。僕は、ルシフェル。魔霊混血だよ〜」
才斗「は?カオスデモンリット....って」
俺と水香は頭が真っ白になった。予想外のことが連続で起きているせいで思考が追いついていない...
光真「なあ、こいつそんなに珍しいのか?」
才斗「珍しいなんてもんじゃない....魔霊混血っていうのは、精霊と悪魔を取り仕切っていて神と同等レベルの存在だ...」
まさか、自分が生きているうちにそんな存在と会うことになるとは、想像できなかった。
ルシフェルはそれを聞いて微笑しながらこういった。
堕天「取り仕切っているって言っても、ヴァラサイドまでだけどね。デスサライズからは僕達でも統率はできないよ〜」
それでも十分だ。その時頭に一つ考えが浮かんだ。
才斗「ルシフェルさん、あなたはヴァラサイド級の悪魔と戦ったことはありますか?」
堕天「うん、幼いときからやっていたからヴァラサイドまでなら倒せるよ〜、あ、敬語は苦手だから遠慮しないで。」
才斗「じゃあ...わかった。ルシフェル、俺たちを鍛えてくれないか?」
みんなの方を見ると、うなずいてくれていた。今の話を聞けば、ルシフェルがどれだけ強いか理解できてるだろう...光真を除けば...
光真「ヴァラサイドってそんなに強いのか?」
光真がそう言うとルシフェルは脅すような顔で、光真に手をかざした。
完全に最初のテンションじゃなくなっている。
堕天「じゃあ、光真試してみる?」
光真「あ、遠慮します。」
彼は、笑ってその手を戻すと『行こう』と言って意気揚々と外に歩きだした。
~現在~
光真「で、何をするんだ?」
堕天「そうだね、とりあえずみんなのリファイメントを見るね」
ルシフェルの右目が青く光る。
堕天(水香ちゃんは...3800かこの状態でこれは鍛えようがあるね。才斗くんは、3500か。水香ちゃんに比べて能力の質は劣るけど基礎力はある。そして、光真は...200か...まあそりゃあそうか~)
光真「なんだよ、どうした?」
さっきからうねうね光真を覗き込んでいるこの人は、何を考えているのか...才斗には何となく理解できた。
(光真を覗き込んでいることから察するに、まだ何も知らないようだ。ってことは、光真は知識からか)
堕天「光真、リファイメントはもう見える?」
光真「?...ああ、一応。右目に映る数字のことだろ?」
ルシフェルはそう聞いて頷くと、俺と水香に視線を向けた。
堕天「才斗、水香ちゃん。リファイメントを解放してみて。多分できるはずだよ~」
解放か...修行していて一応できるようにはなっているはずだから多分俺も水香もできる。
俺はルシフェルに相づちを返すと、水香と並んだ。
俺たちはお互いに顔を合わせ、まったく同じのタイミングで始めた。
久しぶりのリファイメント解放だ。
体の感覚が研ぎ澄まされて行くのがわかる....
俺と水香の周りの草は激しく揺れている。
木々も枝葉も同じようにうねっている中でルシフェルただ一人が平然とそこに立っていた。
体の周りにはリファイメントのオーラが漂っていた。
堕天(なるほど、今までに解放をしたことはあるね。リファイメントのオーラ的に二人とも自然系能力っぽいね~)
リファイメントのオーラの色は能力によって変わるらしいが、主に3つに別れている。
・概念系能力=白色、黒色
・自然系能力=赤、青、緑、黄色(それの混色)
・回復系能力=ピンク色
堕天(この子たちは、ブラックエンシェントと戦えるようにならなければならない...だとしたら、まだまだ足らないな~)
俺たちの様子を見て光真は、とても感心しているようだった。手を握りしめてリファイメントの眼を抑えているが、別にオーバーヒートではない。そもそも、リファイメントを見るのが人生でまだ二回目だから感覚になれていないんだろう...
堕天「じゃあ、二人とも!僕に向けて今の全力の攻撃をだして!」
水香「え?!なんで?」
堕天「今の全力を見ておきたい。その上でこれでもブラックエンシェントには勝てないってことを光真にわからせないといけないからね。」
才斗「なるほど、そういうことなら...やるぞ水香」
俺の言葉に水香は頷いた。
(いくぞ...)
解放したリファイメントを剣も含めて体全体で纏う。
『雷霆剣』を鞘から抜いて、力を込めた。
雷王『雷霆界王 ~千鳥~』
海王『海嵐激流 ~トライデント~』
雷を纏った鳥と三ツ又の矛はルシフェルめがけて、一瞬のうちに距離を詰め、攻撃がルシフェルに当たったと思った時には、激しい爆発音と砂煙で辺りはいっぱいだった。
物陰に隠れていた光真は、顔を上げて肺の中に入ったものを一気に咳き込んで吐き出した。
(とんでもない爆発音だったな...あんなの食らってあいつ大丈夫なのか?)
だが、この不安は杞憂どころか大きな誤算となる。
砂煙が収まってくると才斗の姿が見えてきた..
そして、全てが見えるようになって光真は声もでなかった。
才斗「な!....片手で...」
水香「うそ..でしょ..」
そこには、あの攻撃を食らって意に介していないルシフェルの姿があった。
しかも、あれを片手で止めてやがる..化け物か?
堕天「ふ~~ん、まあこんなものか~。」
(最大時のリファイメントの膨れ上がりは大したもんだね。水香ちゃん、才斗も共に5000を越えていた。奥義としては申し分ないがまだ火力が足らないね)
光真「お、おいルシフェル...」
狼狽した光真が寄ってくる...
堕天「そう、これでも足らないんだよ光真..
よし!じゃあ、ちゃんと修行と行こうか!」
ルシフェルの号令に才斗も水香も手を上げて倒れ込んだ。息づかいが荒いのはよほどの全力なのだろう。
水香も才斗も「ちょっと待って..」と倒れ込んでいる。