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1日目 20時から21時 報酬

 目の前から迫ってくるのは剣を持ったスケルトンと弓を持ったスケルトンの二体。魔物の接近に気がつくと同時に俺は構えて一気に前に出る。


「アキラ様!!」


 エリノスの悲鳴のような声を背中に受けながら、視線は弓を構えるスケルトンに合わせる。矢をつがえた弓がしなり、かすかにスケルトンの深い闇のような眼窩が光ったような気がする。

 次の瞬間、空を切り裂く音が耳朶をかすめる。

 首を30度ほど傾けた横をスケルトンの放った矢が通り抜ける。後ろでキンと金属の弾く音が聞こえるる。ボーグが矢を払ったのだろう。

 

 弓を持つスケルトンが後衛とするなら、剣を持つのが前衛に当たる。初撃を躱されたスケルトンは骨の体とは思えぬほどしっかりとした足取りで接近してくると剣を横凪に振るってきた。剣を弾き返す刃でスケルトンの頭蓋を叩き割る。

 生き物でないスケルトンだが、頭蓋を砕くか胸の中にある魔石を斬れば活動を停止する。それ以外、腕を斬っても足を切り落としてもスケルトンは動き続ける。


 剣を持つスケルトンを無力化した俺はすぐさま弓を持つスケルトンに向き直る。剣使いと戦っているうちに、次の矢を装填していたらしい。しかし、その動きは俺の目には緩慢に映る。弓を引く腕の動き、狙いを定める一挙手一投足が手に取るように分かった。

 俺の方が先に一太刀浴びせることができる。

 その確信を胸に、弓使いのスケルトンに叩ききった。

 

「アキラ様。あまり無茶をしないでくださいまし」


 駆け寄ってきたエリノスは大きなハシバミ色の瞳をウルウルとさせている。王族でありながら現場に出ているお姫様には感服するけど、やはり刺激が強すぎるのかもしれない。


「無茶っていうほど敵のレベルは高くないだろ」

「そうかもしれませんが、アキラ様は元々戦いとは無縁の世界に生きていたとおっしゃったではありませんか。人並外れたステータスとスキルをお持ちでも油断は禁物です。駆け出しの冒険者が命を落とす原因の多くは油断だと聞きます」

「それは、まあ……そうだな」


 余りに手ごたえがなさ過ぎて調子に乗っていたかもしれないと自分を戒める。会社で失敗するのは新人よりも2~3年目の慣れてきたものの方が多いと言うし、少し気を引き締めた方がいいかもしれない。俺に失敗は許されないのだから。

 そうだな、魔王討伐を仕事と考えてみよう。

 上司に大きなプロジェクトを任されたと思えばいいのだ。普通なら1年は掛かる工期を1か月でやれと無茶ぶりされるのは今に始まったことじゃない。

 どれだけ工期を短縮されてもやるべきことは変わらない。

 一歩ずつ仕上げていくしかないのだ。


 っていうか、仕事だと?


「一つ聞いてもいいか」

「どうなさいましたか」

「魔王討伐の報酬みたいなものはあるのか」

「もちろんでございます。世界を安寧に導いた暁には欲しいものは何でも手に入りますよ」

「はは、それ聞くのいまなの?」

「アキラ殿は本当に無欲なのですな」

「いや、うっかりしていただけだ。よく考えれば、元の世界に戻ったら、確実に会社はクビになってるだろ。妻と子供を抱えて無職というのは流石に不味い。貯金だってそんなにないからな。だからせめて再就職できるまでの間のお金が欲しい。金塊なんか持ち帰って換金できるかわからんが、その手のものは用意できるか」

「やはり帰ってしまわれるのですね」

「当たり前だろ」


 何でそんなに悲しそうな顔をする。まさか本当は帰れないなんてことは言わないでくれよ。もしもそうなら、魔王討伐に力を貸す理由もないんだからな。


「わかっています。もちろん、アキラ様のご希望には全力で応えさせていただきます」

「それを聞いて安心したよ。よし、このまま6階層まで突入しよう」


 若干、疲れ気味の「おー」という声を聞きながら、俺たちはさらなる深部へと潜っていく。レベルはいまだに4のままだ。

 敵が強くなって経験値も増えていると思うが、レベルは徐々に上がりにくくなっている。それを解消するためにはひたすらに敵を倒す以外にないのだ。

 角を曲がった所に現れたスケルトンの群れに俺は剣を構えて突っ込んでいった。

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