1日目 14時から15時 異世界召喚
気がついた時、俺は見知らぬ場所に立っていた。
夢でも見ているのかと思うが、現実離れした光景も五感に訴えてくるすべてがこれがリアルだと教えてくる。
「勇者様、どうか我々の世界をお救いください」
平身低頭、頭に冠を乗せた誰かが俺に向かって首を垂れてきた。
俺が勇者だというのか。
三日連続の貫徹をさせられたときに上司のいないオフィスでマッパで見積書を仕上げていた時に、周りの連中から「お前こそ本物の勇者だよ」なんて揶揄されたが、目の前の人間が言っているのはそういうことじゃないだろう。
「これはどういう状況なんだ?」
「はい、すべて説明させていただきます」
状況はあまりにも現実離れしているが、まずは冷静になる時間が必要だと思って男の言葉に耳を傾ける。男は見た目から想像がついていた通り、この国レンブランを治める王様ってことらしい。で、この世界は魔王と呼ばれる魔族の王に侵略されているらしくて、王国に伝わる古の儀式により異世界より勇者を呼び出したんだそうだ。
それが俺ってことらしい。
ゲームやマンガじゃあるまいし、傍迷惑な話だ。大体そういうのは十代の若者が選ばれるものじゃないのだろうか。俺はもう二十歳過ぎのおっさんだぞ。
「元の世界に返してくれ、再来月には娘が生まれるんだ」
「大変申し訳ございませんが、魔王を討伐する以外に帰る方法はございません」
さっぱり意味が分からない。
魔王の討伐と地球へ帰ることがどうして結びつくというのだろう。そもそも、いきなり人をこんな世界に連れてきて魔王を倒せとは、無茶苦茶にもほどがある。
まあ、三日かかる書類の束を定時間際に明日までやれと言ってくる上司の下で働いていた俺としては、理不尽には慣れているつもりではあるが。
「で、魔王を倒すにはどうすればいい」
「倒していただけるんですね」
「ほかに元の世界に帰る術がないんだろ。魔王を倒しても元の世界に返してもらえなかったら、魔王を超える力で世界を滅ぼすが構わないよな」
「そ、それはもちろんでございます」
「よし、ならさっさと魔王を倒す方法を教えてくれ。俺には時間がない。予定日は再来月だが、予定通りとは限らないからな。俺がいなくなれば嫁もストレスを抱えるだろうし、一か月で魔王を討伐するぞ」
「い、一か月でございますか」
「それでも長いくらいなんだ。俺としては一日でも早く日本に帰りたいんだよ。わかったら全力で俺をサポートしやがれ」
王様を相手に口が悪いことは自覚している。
理不尽な上司とうまく付き合う方法は、クビにならないギリギリのラインを責めながら言いたいことはいうことだ。社畜と自負しているけども、すべて唯々諾々になるほど人間出来てないんでな。
「で、では、まずはステータスと唱えてください。それで勇者様の現状の能力がわかります」
ますますゲームみたいな世界だな。
やっぱりこれって夢を見ているんじゃないだろうかとそんな気がする。そんなことを考えながら「ステータス」とつぶやくと現状の俺の能力が数値化されたものが眼前に現れた。
名前:アキラ=オクムラ
レベル:1
称号:勇者、愛妻家、親バカ、社畜
物理攻撃力:165
魔法攻撃力:112
物理防御力:158
魔法防御力:199
敏捷性:144
スキル:言語理解5、成長補正10、親和性1、忍耐3、剣術1、体術2、回避1、火魔法1、水魔法1、風魔法1、光魔法1、毒耐性1、麻痺耐性1、混乱耐性1、精神耐性5、
不定期連載の予定
ステータスは適当ですので改変の可能性があります。