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アリとキリギリス その三

日曜の元気なご挨拶。

パロディ昔話第九十九弾です。

歳なら白寿。

今回は『アリとキリギリス』で書かせていただきました。

若干原作準拠で書いたはず……(震え声)。


どうぞお楽しみください。

 昔々あるところにキリギリスがいました。

 キリギリスは夏の間、毎日歌ったり楽器の演奏をしたりして暮らしていました。

 その隣をアリが通りかかりました。

 アリは冬に備えて食べ物を集めている最中でした。


「キリギリスさんキリギリスさん、歌ったり演奏したりしているけど、冬の備えは大丈夫なの?」


 キリギリスは笑って答えました。


「僕は君達のようにコツコツ食べ物を集めるのは向かなくてね。まぁ何とかなるよ。それより今は、この力強い季節を、熱い太陽を、歌い上げたくてね」

「……ふーん」


 言っても無駄だと思ったアリは、食べ物探しに戻りました。




 秋になりました。

 様々な果物が実り、冬を越す動物達は、こぞって食べ物を集めています。

 しかしキリギリスは相変わらず、歌ったり楽器の演奏をしたりして、のんびり過ごしていました。

 またアリが通りがかりました。


「キリギリスさんキリギリスさん、もう秋だよ。今なら食べ物も簡単に見つかるから、冬の支度を始めなよ」

「いや、僕は今秋を奏でたいんだ。生きる力にあふれた夏が終わり、その力を次に繋ごうとする秋。別れの予感が寂しさを誘うけど、それでも確かな強さがあるこの季節を……」

「? ? ? ……まぁキリギリスさんがそれで良いなら……」


 アリは説得を諦めて、食べ物探しに戻りました。




 秋の終わり。

 北風には冬の匂いが混じり始めています。

 そんな折、森の真ん中で毎年恒例のコンサートが開催される事になりました。

 森の虫達が集まって、開演を今か今かと待っていました。

 アリも姉達と一緒に、初めてのコンサートに胸を躍らせていました。


「姉様! 私コンサートって初めて! すっごい楽しみ!」

「そうね。私達が春夏秋と働き続けられるのは、この年の終わりのコンサートがあるから、と言っても過言じゃないからね」

「ホントホントー! 勿論家族とお母様のためだけど、それだけじゃ辛くなるもんねー」

「あ! 始まるわよ!」

「! あ、あれは……!」


 アリが驚きで目を見開きました。

 そのステージの真ん中には、あの食べ物を集めようとしないキリギリスがいたからです。


「え、な、何であのキリギリスさんが……?」

「あら、会った事あるの?」

「う、うん。夏も秋も歌ったり演奏したりしてて、全然働いてなかったのを見たの……」

「それは違うわ。このコンサートのために一年中練習をしたり、歌を作ったりしているのよ」

「い、一年中!?」

「すごい努力と覚悟よねー。一年かけてもこのコンサートに失敗したらー、来年からお客が来なくなってー、冬が越せないかもしれないからさー」

「……!」


 アリは自分の考えが間違っていた事に気がつきました。


(そうか……。私達みたいにこつこつ食べ物を集めるのも、キリギリスさんみたいに、自分の芸で食べ物を集めるのも、どちらも頑張ってる生き方なんだ……!)


 そうして見ると、ステージの上のキリギリスが何だか輝いて見えました。


「みんなー! 今日は集まってくれてありがとうー! まずは今年の新曲を一つ聴いてねー!」


 地面が揺れるような歓声と拍手。

 それが止んだところで、キリギリスは朗々と歌い始めます。




 夏が問いかける

 「君は何をしているの?」

 秋が問いかける

 「食べ物を探しもしないで」


 僕は答える

 冬の寒さに心が凍えないように

 君達の欠片を集めて

 みんなの心に届けるんだ


 夏の力強い太陽

 火傷しそうな命の力

 秋の落ちる葉と木の実

 別れの切なさと再会の約束


 冬の白と灰色の世界に

 その彩りを残して

 長い寒さの後に来る春まで

 暖かさを残して


 歌おう 強く歌おう

 北風に灯火が吹き消されても

 歌おう 強く歌おう

 春の再会の約束を力にして


 ありがとう 可愛らしい問いかけ

 僕は改めて歌う意味を見つけた

 ありがとう 懸命に生きる命

 その力を分けてもらい 僕は生きる




 曲が終わりました。

 一曲目とは思えない歓声と拍手。

 その中で、アリは顔を真っ赤にして頭を抱えていました。


(今の歌……、私の事じゃん……! は、恥ずかしい……!)


 恐る恐る顔を上げると、客に手を振るキリギリスと目が合いました。


「ふふっ」

「!」


 悪戯っぽいウインクに、アリの顔の温度が更に上がります。


「今私にウインクしたわよね!?」

「あたしにだよー! キリギリス様サイコー!」


 隣で騒ぐ姉の声も耳に入らないアリは、他の客へと手を振るキリギリスをぼうっと見つめるのでした。

読了ありがとうございます。


何に力を注ぐか、それはそれぞれですからね。

アリギリス カメウサギ あると思います。


次回はいよいよ百回目。

リクエストするなら今のうち……。


早くしろっ!!

間にあわなくなってもしらんぞーっ!!


次話もよろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
[良い点] キリギリスさん、格好良い! 怠惰に過ごしているように見えて、一年に一度の大舞台に備えて練習して、失敗できない舞台を、努力の痕跡を見せないようにこなすなんて、プロの鑑ですね。 そしてキリギ…
[良い点] 最高!でした! こんな仕掛けがあるなんて、作者様の発想は素晴らしいですね。 [一言] 100話楽しみにしています(^^) 何がでるかな?何がでるかな♪
[一言] ほう… このような「料理法」があるとは…
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