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田舎のネズミと町のネズミ その二

日曜の元気なご挨拶。

パロディ昔話第九十四弾です。

今回は前回に続いて『田舎のネズミと町のネズミ』で書かせていただきました。

今回は前回より原作準拠です。多分。


どうぞお楽しみください。

 昔々、ある田舎にネズミが住んでいました。

 ネズミは畑の麦やとうもろこし、雑草や木の実などを食べて穏やかに暮らしていました。

 そんな時、町に住んでいるネズミが遊びに来ました。


「やぁ、よく来てくれたね! 大したものはないけど食べていってよ!」


 田舎のネズミは町のネズミに、麦やとうもろこし、そしてとっておきの甘い木の実を出しました。

 町のネズミはもてなしに感謝しながら、その食べ物を完食しました。

 満足げな笑顔を見せた町のネズミは、田舎のネズミの手を取って町の方向を指さします。


「え? 町に連れて行ってくれるのかい?」


 町のネズミはうんうんと頷きました。


「ありがとう! でも町って怖いところって聞くけど……」


 田舎のネズミの不安そうな声に、町のネズミは胸をどんと叩きます。


「任せろって……? う、うん。じゃあ行ってみようかな」


 こうして田舎のネズミは町へと行く事になりました。

 町に着いた二匹は扉の付いたネズミ穴を通り、壁の中にある町のネズミの寝床に入ります。


「へぇ、君の家にはベッドが置いてあるんだね! すごいや!」


 田舎のネズミの言葉に、町のネズミは胸を張りました。

 そして家の中に通じるネズミ穴に、田舎のネズミを誘います。


「え!? ね、ネコがいるよ!?」


 腕を組んで寝ているネコに、青ざめる田舎のネズミ。

 しかし町のネズミは涼しい顔。

 堂々とネズミ穴から出ると、ネコの前に置かれたミルクの入った皿を軽々と頭の上に持ち上げ、穴の前まで持って来ました。


「え、これ、飲んでいいの……?」


 田舎のネズミの震える声に、町のネズミは満面の笑みで頷きます。


「い、いただきます……」


 田舎のネズミは恐る恐る口をつけましたが、


「! おいしい!」


 ミルクのおいしさに、夢中になって飲み始めました。

 その様子に嬉しそうに頷いた町のネズミは、皿の反対側からミルクを飲みます。

 しかしその後ろでは、寝ていたネコが目をつぶったままミルクをなめようとして、何もない事に気が付きました。

 首を振って皿の不在に気付いたネコは、辺りを見回し、ネズミ穴の前にある皿と、そのミルクを飲む二匹のネズミを見つけます。

 ネコは怒りを露わにして、二匹に向かって駆け出しました。


「あっ! 危ない! ネコが!」


 田舎のネズミの叫びに、町のネズミはミルクを一息に飲み干すと、駆け寄るネコの顔に思いっ切り吹きかけます。

 走った勢いの付いていたネコは、思わぬ反撃にもんどりうって倒れました。


「す、すごい……! なんて言ってる場合じゃないや! 早く穴に逃げ込もう!」


 しかし町のネズミは落ち着き払って、空になった皿を持ち上げると、口笛を吹きます。

 犬にするようなその動作に、顔を振ってミルクを払ったネコは、前脚を上げて舌を出しました。

 フリスビーのように投げられた皿。

 それを追いかけたネコは、


「うわっ……!」


 派手な音と共に、家具へと突っ込みました。

 その隙にと、町のネズミは田舎のネズミに手招きをします。


「え……、台所?」


 恐る恐るついていった田舎のネズミに、町のネズミは冷蔵庫を開けて大きなチーズを取り出すと、半分に割って渡しました。

 いつネコが戻ってくるかと気が気ではない田舎のネズミでしたが、一口チーズを食べると、


「わぁ! 初めて食べたよこんな美味しいの!」


 と夢中になって頬張ります。

 その背後に、腰に手を当てたネコが立ちました。

 爪の先でとんとんと肩を叩かれ、


「あわ、あわわ……!」


 真っ青になる田舎のネズミ。

 そこに町のネズミが冷蔵庫から魚を取り出しました。

 不機嫌そうだったネコの顔が、一気に笑顔になります。

 その隙に町のネズミは冷蔵庫からチーズやら卵やらパンやらを取り出して、田舎のネズミと共に寝床に戻りました。

 しばらくして、


「あんたって子は! また盗み食いをして!」


 と家の奥さんの怒りの声と、どたばたという音、そしてネコの悲鳴が響き渡りました。

 そんな音は聞こえないといった様子で、町のネズミは田舎のネズミに戦利品を勧めます。


「あ、ありがとう……。ははは……」


 その豪華な食事を食べながら、田舎のネズミは曖昧な笑みを浮かべるのでした。




 食事を終えた田舎のネズミは、


「ありがとう。ごちそうさま。じゃあ僕は田舎に帰るよ」


 と言いました。

 町のネズミは驚いた顔で田舎のネズミを見つめます。


「もっといたらいいのにって? ありがとう。でも僕にはあんなにスリリングな生活は無理だよ。ご飯はすごくおいしかったけどね」


 田舎のネズミの言葉に、一瞬顔を曇らせて、すぐに優しく微笑む町のネズミ。


「でも暮らすのは難しいってだけで、遊びには来たいからまた呼んでもらえると嬉しいよ。僕の方もあんな質素な食事でよければ、いつでも歓迎するから」


 その言葉に、町のネズミはうんうんと頷くと、その手を固く握りました。


「ありがとう親友! また会おうね!」


 こうして田舎のネズミは、食べ物は質素でものんびりした田舎に帰っていきましたとさ。

 めでたしめでたし。

読了ありがとうございます。


前回ネコを出した瞬間に閃いておりました。

なぜこれよりも先にざわ……! ざわ……!したのか、これがわからない。


次回は『さるかに合戦』で書こうと思います。

よろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 一言もしゃべらない町のネズミくんとネコさん。 ネコさんは良く飼い主さんにお尻ぺんぺんされていそうですね(笑) 町のネズミさんはときどき洒落にならないエグイ悪戯をネコさんにしていそうですし、…
[一言] うーん… 前回のほうが、教訓的でしたねえ。 これは、要領がよいだけでは?
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