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田舎のネズミと町のネズミ その一

日曜の元気なご挨拶。

パロディ昔話第九十三弾です。

今回は『田舎のネズミと町のネズミ』で書かせていただきました。

原作の流れですが、若干ざわ……!ざわ……!してます。


どうぞお楽しみください。

 昔々、ある田舎にネズミが住んでいました。

 ネズミは畑の麦やとうもろこし、雑草や木の実などを食べて穏やかに暮らしていました。

 そんな時、町に住んでいるネズミが遊びに来ました。


「やぁ、よく来てくれたね! 大したものはないけど食べていってよ!」


 田舎のネズミは町のネズミに、麦やとうもろこし、そしてとっておきの甘い木の実を出しました。

 しかし一口二口食べた町のネズミは、


「フフ……。へただなあ、田舎ネズミくん。へたっぴさ……! 欲望の解放のさせ方がへた....! 田舎ネズミくんが本当に欲しいのは……、チーズ(こっち)……!」


 そう言うと荷物の中からチーズを取り出しました。


「そ、それは……! 人間の食べ物じゃないか! それをどうやって……!?」

「フフ……。町ならこんなのは簡単に手に入る……! 君だってその気になれば、この家の人間からちょこっとくすねるくらい簡単だろう?」

「で、でも人間は大きくて、僕らネズミを嫌ってる……。見つかったら何をされるか……!」

「フフ……。それはあまりに危険だから……、こっちの……、しょぼい木の実でごまかそうって言うんだ……」

「う……」


 口ごもる田舎のネズミに、町のネズミが言い募ります。


「田舎ネズミくん、ダメなんだよ……! そういうのが実にダメ……! その妥協は傷ましすぎる……! かえってストレスがたまる……!」

「そ、そんな事言われても……!」

「町に来るんだ……! そうすれば君は本物の美食を味わう事ができるんだ……! さぁ……! 来いよっ……! 男なら冒険をっ……!」

「う、うん……」


 こうして田舎のネズミは町のネズミに連れられて、町へとやって来ました。

 家の中に忍び込むと、町のネズミは田舎のネズミに食卓を示しました。


「ほら見てごらん……! あれがパンだ……! 君が食べていた麦を粉にして……! 卵や牛乳を混ぜて……! ふっくらと焼き上げる……! その味ときたら……!」

「お、美味しそうだね!」

「さぁ行くぞ田舎ネズミくん……! 楽園は目の前だ……!」


 二匹は食卓に登りました。

 香ばしい香りが鼻をくすぐります。


「ふわぁ……! 美味しそう……!」

「フフ……。さぁ召し上がれ……!」


 その時です。


「……ネズミめ……!」


 二匹は家の奥さんに見つかってしまいました。


「粛清……! 粛清……!」

「しまった……! 逃げるんだ田舎ネズミくん……!」

「ひゃあ!」


 慌てて逃げ出した二匹は、何とか穴に潜り込みました。


「あぁ、びっくりした……!」

「フフ……。これくらいスリリングな方が、食べ物にありつけた時の喜びも増すと言うものだよ……!」

「そ、そうかなぁ……」

「だがこの家は警戒されてしまった……! 隣に行けば……!」

「う、うん……」


 田舎のネズミは町のネズミに言われるまま、お隣へと移動しました。


「ほら見ろ田舎ネズミくん……! チーズがテーブルに乗っている……! クク……! いただくとしよう……!」

「だ、大丈夫かなぁ……」

「今……! 今日だけがんばるんだっ……! 今をがんばった者……! 今がんばり始めた者にのみ……! 明日が来るんだよ……!」

「う、うん! 頑張ってみる!」


 しかし、二匹が穴から出た瞬間、


「F◯ck You ぶち殺すぞ……、ゴミめら……!」


 家のご主人に見つかってしまいました。

 二匹は命からがら逃げ出しました。


「も、もう、諦めようよ……。怖い思いしてまで食べる事ないよ……」

「ダメ……! 美食は命よりも重い……! 命はもっと……、粗末に扱うべきなのだっ……! 行くぞっ……! ギリギリ……! 限界まで……!」

「やだよ……。命かけてまで食べたくないよ……」

「ならば俺だけでも……! そこで待っていろ……! 田舎ネズミくんの分まで、俺が……!」

「いいってばぁ……!」


 無理に隣の家の穴から出ようとする町のネズミの尻尾を引っ張って、田舎のネズミが引き止めていたその時です。


「にゃ〜」

「!」

「ね、猫……!」


 その声に、二匹は縮み上がりました。


「圧倒的……! 圧倒的戦力差……! 通るかこんなもん……! ノーカウント……! ノーカウント……!」

「猫がいたら僕らに勝ち目はないよ。一緒に田舎に戻って平和に暮らそう、ね?」

「……うん……」


 こうして町のネズミは田舎のネズミと一緒に、穏やかな田舎でのんびり暮らす事になりました。


「美食がないなら作ればいい……! 行くぞっ……! 粉から……! パンを……!」

「硬いけど木の実の汁を塗ると美味しいね」

「ククク……、その一手間が案外……、できぬものなのだ……! クズには……!」

「褒めてくれるのは嬉しいけど、クズって言い方良くないよ?」

「ごめん」


 めでたしめでたし。

読了ありがとうございます。


猫には勝てなかったよ……。

(=^ェ^=)にゃー!


もうひとネタ思いつきましたので、次回も『田舎のネズミと町のネズミ』でお送りいたします。

よろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 田舎のネズミくん以外は、みんな鼻と顎が尖っていそうですね(笑) どれだけ美味しいものでも、命がけで手に入れないといけないとか、落ち着いて味わえないと味が分からなくなりそうです。 最後に…
[一言] 常に上を目指そうとしすぎると、こうなるということですね・・・
[良い点] 盗んだ食べ物より自分で作ったもののほうがおいしいという、ためになるお話ですね。 [一言] 運動した方が食事がおいしくなるので、ねずみたちはすもうをとっていました。 栄養価の高いものを食べて…
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