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嘘をつく子ども(オオカミ少年) その一

日曜の元気なご挨拶。

パロディ昔話第七十九弾です。

今回はイソップ童話の『嘘をつく子ども』、いわゆるオオカミ少年のお話です。

以前活動報告でバトンの回答をした際に晒した私の趣味を盛ってみました。

バッドエンドにはならないので、どうぞ安心してお楽しみください。

 昔々あるところに、羊飼いの少年がいました。

 少年は毎日羊を山に連れて行っては、羊に草を食べさせ、また村へと戻っていました。


「あー、退屈だなー。何か面白い事ないかなー」


 少年は毎日同じ生活の繰り返しに飽き飽きしていました。

 そんなある日、


「そうだ! オオカミが来たって言ったら、みんな驚くだろうなぁ!」


 少年は早速村に走って行って、大きな声で叫びました。


「オオカミだー! オオカミが出たぞー!」

「何!? オオカミだと!?」

「大変だ! 男達は集まれ!」


 村中は大騒ぎになりました。

 大人達が鋤や鍬を持って山へ向かったのを見て、少年はおかしくてたまりません。


(ぼくのウソでみんながこんなに騒ぐなんて、すっごい面白い!)


 それからたびたび、少年は「オオカミが出た」と嘘をついて、村が騒ぐのを楽しんでいました。

 その内村人達は、少年の言う事を信じなくなってきました。


「ちぇっ、つまんないな」


 そんなある日、


「あ! お、オオカミだ……!」


 山に羊を連れて行った少年は、森の中から顔を出したオオカミを見つけました。


「わ、わ、どうしよう……! このままじゃ羊が食べられちゃう……!」


 大慌てで村に戻った少年は、大声で叫びました。


「オオカミだー! オオカミが出たぞー!」


 しかし村人は「またか」といった顔をして、それぞれの仕事に戻りました。


「こ、今度は本当なんだ! 羊が食べられちゃうんだ! ねぇ! 助けてよ!」


 少年は必死に声を上げますが、


「随分演技に力が入ってるな。だがそうやってまたからかうつもりだろう。騙されんぞ」

「そ、それは、その……。で、でも今度こそ本当なんだ!」

「いい加減にしろ! 俺達も暇じゃねえんだ!」


 叱りつけられた少年は、自分が遊びのために大切な『信頼』を消費してしまった事に気が付きました。

 しかし今更どうしようもありません。


「……!」


 少年は近くにあった薪を掴むと、山へと駆け戻っていきました。

 山に戻ると、オオカミが羊にじりじりと近付いているところでした。


「お、おい! オオカミ! ひ、羊達に、て、手出しはさせにゃいぞ! ぼ、ぼくが相手りゃ!」


 噛みながらも叫んだ言葉に、オオカミが少年に向き直ります。


「く、来るなぁ! い、いや、か、かかってこい!」


 少年が怯えながら振り回す薪を意に介した様子もなく、オオカミは悠然と少年に近付きます。


「あわ、あわわ……!」


 へたり込む少年。

 一足飛びで少年に飛びかかれるところまで迫るオオカミ。

 その時です。


「ふっ、少年。格好つけるなら最後までだろ」

「!?」


 響いた声の方に目をやると、数人の村人が武器を構えて立っていました。


「え……、な、何で……?」

「ふっ、お前さんが随分必死なもんだから、ひょっとして、と思ってな」


 青年の言葉に隣の老人はふんと鼻を鳴らします。


「別にワシは助けに来たわけじゃないわい。オオカミを退治したとなれば、良い酒のつまみになると思っただけじゃ」

「おじいさん……」


 その隣の若者は、弓に矢をつがえながら軽薄に笑いました。


「僕もね、嘘つきな君の事はどうでもいいんだけどね。オオカミの毛皮の襟巻きをプレゼントしたら、村長の娘さんとデートできるんじゃないかと思い立ってね」

「おにいさん……」


 その隣の女性が、呆れた様子で息を吐きます。


「あんたら素直じゃないねぇ。素直に心配だって言えばいいじゃないか」

「ふっ、そういう君はどうして来たんだい?」

「今度こそ嘘だったら厳しくとっちめてやろうと思っただけさ」

「おねえさん……」

「そ、そんな濡れた犬みたいな目で見るんじゃないよ! さ! とっとと片付けるよ!」


 武器を構える村人達。

 それを見たオオカミは思いました。


(え、これ絶対勝てないやつじゃん。あっちの勝ち確じゃん。バックにオープニング曲流れるやつじゃん。協力技食らって派手に爆発四散させられるやつじゃん。冗談じゃないじゃん!)


 オオカミは一目散に逃げ出しました。


「ふん、逃げよったか」

「ふっ、追わないのかいじいさん? 酒場での武勇伝が行っちゃうけど?」

「尻尾を巻いて逃げるオオカミなんぞ、討ち取っても自慢にならんからな。おい若造、襟巻きはいらんのか?」

「いやー、よく考えたらね? オオカミの襟巻きって趣味悪いかなーってね」

「ほんとあんたら素直じゃないんだから。あんたもいつまでも座ってんじゃないよ。立ちな」


 呆然としていた少年が、女性の声かけに正気を取り戻し、


「うわああぁぁああぁぁん! 怖がっだよおおぉぉおおぉぉ!」


 大きな声で泣き出しました。

 その頭を女性は優しく撫でます。


「よしよし、これに懲りたらしょうもない嘘つくんじゃないよ」

「ふっ、君もその素直な感じの方が素敵だと思うけどね」

「う、うっせーよキザ野郎」


 こうして少年は嘘をつく事はなくなり、村人達と仲良く暮らしましたとさ。

 めでたしめでたし。

読了ありがとうございます。


ピンチに駆けつけるヒーロー&素直じゃないやり取り。

良いですよね。


ちなみにあの流れでオオカミが「おのれー! 人間如きが束になったところでー!」とか言ったら、普通の敵の五倍くらい攻撃されてやられてました。

「はっ! これは戦隊ものでやったところだ!」

見といて良かった戦隊もの。


来週はキリ番企画とリクエストを両方やりたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 少年のピンチに颯爽と駆けつける大人たち、お灸を据える為にも最初は信じていない振りをしていたのでしょうか? 最後は少年と羊が助かって良かったです。 [一言] 騙されんぞ、の台詞を見た瞬間、某…
[一言] 結局おいしいところを持って行ったのは、じいさんですね。
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