オオカミと七ひきの子ヤギ その三
日曜の元気なご挨拶。
パロディ昔話第七十八弾。
今回は『オオカミと七ひきの子ヤギ』です。
前半のまどろっこしいやり取りをすっ飛ばして、シンプルに遊んでみました。
どうぞお楽しみください。
昔々あるところに、お母さんヤギと七匹の子ヤギが住んでいました。
ある時お母さんヤギは、町に買い物に行く事になりました。
「お母さんが帰ってくるまで、お留守番ちゃんとしててねー」
『はーい!』
子ヤギ達は元気にお返事しました。
そうしてお母さんヤギは、町へと出かけて行きました。
それを見ていたのがオオカミでした。
「くっくっく……。今あの家は子ヤギだけか。ならば一匹残らず食ってやる……!」
オオカミはそっと子ヤギ達の家に近付きました。
扉に手をかけると、鍵がかかっていませんでした。
「こりゃあいい。さぁご馳走の時間だ……!」
オオカミはにやにやと笑い、扉を開けました。
「さぁ子ヤギ達、食っ」
「あ! おじさんだれー!?」
「こんにちはー!」
「わー! しっぽふさふさー!」
「せーおっきー!」
「ねーねー、おままごとのおとうさんやくやってー!」
「たたかいごっこしよーよ!」
「おえかきしよー!」
「え、あの、ちょっと……?」
フレンドリーな子ヤギ達の距離の詰め方に、オオカミは戸惑いました。
(お、俺はお前達を食おうと入って来たんだぞ!? 何だその警戒心のなさは!)
しかしそんな内心の動揺など、子ヤギ達には関係ありません。
「ねー、あそぼうよー!」
「わたしがさきー!」
「おまえばっかりいつもずるいぞー!」
「ずるくないもん! おにいちゃんのほうがずるいもん!」
「おまえのほうがずるい!」
「おにいちゃん!」
「おまえのほうがすっごくすっごくずるい!」
「うー! おにいちゃんのほうがずるいもん! うわーん!」
子ヤギの泣き声に、オオカミは自分のせいかと錯覚して、さらに混乱が深まります。
「わ、わかった。順番に遊ぶから……」
「ぼくがさき!」
「わたしがさき!」
「えっと、じゃあ先に十分遊んで、順番我慢できる子とは十五分遊ぼうか」
「じゃあぼくあとでいい!」
「わーい! おままごとー!」
「他におままごと一緒にやりたい子はいるかな? ……わかった。じゃあ役割を決めよう。戦いごっこしたい子は、今のうちに新聞紙で武器を作っておいて、ね?」
『はーい!』
オオカミはパニックの頭で必死に七匹の子ヤギをさばく方法を考えるのでした。
「ただいまー。あら?」
町から帰ったお母さんヤギは、扉を開けて驚きました。
「……おじちゃーん、だっこぉ……」
「……ひっさつ、なんでもぎりぃ……」
「……はーい、ごはんですよぉ……」
「……しっぽ、もふもふ……」
「……おんぶぅ……」
「……おじちゃんのえ、かくぅ……」
「……おじちゃんだいすきぃ……」
「ぐかー、ぐがー……」
大の字になって眠るオオカミの腕やら脚やらお腹やら尻尾やらを枕に、お昼寝している子ヤギ達の姿を見たからでした。
「あらあらー、どなたか存じませんが、うちの子達がお世話になったみたいねー」
お母さんヤギはのんびりそう言うと、掛け布団を優しくかけて、お夕飯の支度に取りかかりましたとさ。
めでたしめでたし。
読了ありがとうございます。
複数の子どもの面倒を見る時は、主導権を渡してはいけない(戒め)。
そういう意味では、このオオカミ、良い保育士になるかもですね。
次回は『嘘をつく子ども(オオカミ少年)』で書こうと思います。
よろしくお願いいたします。