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桃太郎 その四

日曜の元気なご挨拶。

パロディ昔話第七十五弾。

今回は『桃太郎』でお送りします。

よくある『おばあさんが桃を拾わなかったら……』的なネタを私なりにアレンジしてみました。


どうぞお楽しみください。

 昔々あるところに、おじいさんとおばあさんが住んでいました。

 おじいさんは山へ芝刈りに、おばあさんは川へ洗濯に行きました。

 おばあさんが川で洗濯をしていると、上流から大きな桃がどんぶらこどんぶらこと流れてきました。

 しかしおばあさんは洗濯に夢中で、桃に気が付きません。

 桃はおばあさんの前を流れて行きます。

 あ! 桃が川の流れに身を任せず、抵抗しています!

 頑張れ桃! 頑張れ桃!

 しかしおばあさんは気が付きません。

 力尽きたのか、桃はまたどんぶらこどんぶらこと流れて行きました。

 川は大きな河へと繋がり、河はやがて海へと流れて行きます。

 大きな桃も流れに乗って、海へとたどり着きました。

 大波小波に揺られながら、やがて桃は一つの島へと流れ着きました。


「何だいこの馬鹿でかい桃は」


 桃を拾い上げたのは、角の生えた鬼女でした。

 そう、ここは鬼の住む島、鬼ヶ島だったのです。

 鬼女は浜辺で見つけた桃を、家へと持ち帰りました。


「おい何だ。その馬鹿でかい桃は」


 鬼女の旦那である大鬼は目を見開きました。


「浜辺に流れ着いていたのさ。割って食おうじゃないか」

「うむ、そうだな」


 鬼女が桃を切ろうとしたその時、桃はひとりでに割れ、中から元気な赤ちゃんが飛び出してきました。

 これには流石の大鬼も鬼女も驚きました。


「な、何で桃から子どもが……?」

「そ、それにこの子どもは人間だよ!」

「人間の子どもなんて、この鬼ヶ島で育てられるわけがない……」

「じゃ、じゃあどうするんだい……?」


 二人は赤ちゃんを見つめました。

 赤ちゃんは二人を見てきゃっきゃと笑っています。


「……可愛いな」

「……うん」


 思わず大鬼が手を伸ばすと、赤ちゃんの手がその指をきゅっと掴みました。


「わ、な、何だ」


 赤ちゃんはその指を口元に持ってきて、ちゅうちゅう吸い始めました。


「ちょ、あんた、何してるんだい!?」

「い、いや、分からん。この子が勝手に……」

「お腹が空いているのかねぇ。……人間は確かこうやって……」


 鬼女が胸をはだけて乳を口に含ませると、赤ちゃんは夢中になって吸い始めました。


「わ、わぁ……。吸ってる……」

「それで腹が膨れるのか……?」

「ど、どうだろう……。何も出やしないんだけど……」


 その時、鬼女は赤ちゃんが出てきた桃に目が行きました。

 何故か無性にそれが食べたくて仕方がありません。


「あんた! その桃を食べさせてくれないか!?」

「え? あ、あぁ、わかった」


 大鬼が一口大に切った桃を口に含むと、鬼女の身体に力が溢れてくるような感覚が満ちてきました。


「あ! 胸から何か出てる感じがする! 赤ちゃんが吸いたかったのはこれかも知れない!」

「そ、そうか! 良かった!」


 夢中で乳を吸った赤ちゃんは、満足そうな顔をした後、とろんとした表情を浮かべたかと思うと、そのまま眠ってしまいました。


「……寝ちゃった……」

「……めちゃくちゃ可愛いな……」

「……そうだね……」


 鬼女はこの上なく優しい眼差しで、赤ちゃんの頭を撫でました。

 それを見ていた大鬼は、一つの決意を固めました。


「……俺達には子どもがいないから、この子に飾りの角をつけて、鬼として育ててはどうだろう」

「! あんた、いいのかい!?」

「……あぁ」

「……でも、人間だよ?」

「関係ないさ。この愛おしさに、鬼も人間も関係ない」

「……ありがとう、あんた……!」


 こうして鬼に育てられる事になった赤ちゃんは、百鬼ももきと名付けられ、すくすくと育ちました。

 大鬼と鬼女はその成長を喜びながらも、百鬼が人間である事に言い知れない不安を抱えていました。

 何故なら鬼達は、時折人間の村から食べ物や宝物を奪っていたからです。


「……今までは人間から奪う事など何とも思わなかったが、百鬼と出会ってからは、何とも後味が悪く感じる……」

「……そうだねぇ。人間も鬼も変わらないと知っちまったからね……」


 溜息をつく二人の元に、百鬼がおぼつかない足取りで歩いてきました。


「とーたん! かーたん!」

「おぉ百鬼! 抱っこか? よーしこっち来い!」

「わー! きゃはははは!」

「あんたばっかりずるいよ! 百鬼、かーたんのとこにもおいで!」

「かーたん!」

「あー! 百鬼は本当に可愛いねぇ!」

「お、おい、そろそろ交代しろ!」

「あんたの方が長かったから、もう少しあたしの番だよ! ねー百鬼ー? かーたんの抱っこの方が好きだよねー?」

「しゅき!」

「! ほ、ほらご覧! い、今百鬼がす、『好き』って……!」

「い、いや、俺の事見てす、『好き』って言ったぞ!」

「だ、抱っこしてるあたしに言ったんだよ!」

「いーや! 完全にこっち見てた! 俺に言ったんだ!」

「しゅき! しゅき!」


 こうして百鬼にめろめろになった大鬼と鬼女は一念発起。

 鬼ヶ島の食料自給率を高めると共に、人間への意識改革を行い、これまで当然のように行われていた人間への略奪行為を廃止しました。

 その上、これまでに奪った宝物を返却し、人間の村々との友好条約も締結しました。

 これにより鬼ヶ島と人間の村々との間で交易が行われるようになり、鬼ヶ島で取れる希少な鉱石と人間の食糧や衣服を交換する事でお互いとても豊かになりました。

 大鬼と鬼女は満を辞して百鬼の出生について鬼達に話をしたところ、鬼達は責めるどころか人間と仲良くなるきっかけをくれた存在として、百鬼をとても大事に扱いました。

 こうして百鬼は優しい大鬼と鬼女、鬼達に囲まれて、いつまでも幸せに暮らしましたとさ。


 めでたしめでたし。

読了ありがとうございます。


赤ちゃんの把握反射(手のひらぎゅ)と吸啜反射(何でもちゅうちゅう)の可愛さは異常。

ただし指で試す際には、必ず手を綺麗にしてから行おう!

お兄さんとの約束だ!


なお、赤ちゃんが好きという動機だけで保育士資格を取るレベルの赤ちゃんスキーなので、前に育休中の職員が職場に手続きに来た際に抱っこさせてもらったら、

「オキシトシンの存在が! 『言葉』でなく『心』で理解できた!」

となりました。マジで感じました。どばっと。

しかし最近は仕事でもプライベートでも、コロナの関係でおいそれと赤ちゃんを抱っこできないので、オキシトシンが足りてません。

なので機会を見つけて赤ちゃんを抱っこしなくては……(使命感)。

……違いますお巡りさん。法には触れません。


次回は『姥捨山』で書こうと思います。

どうぞよろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 赤ちゃんの可愛さは種族を超えて、架け橋になる! とても可愛い百鬼ちゃんに絆されて人間と仲直りをして、両者が繁栄するのが素敵ですね。 [一言] 百鬼ちゃん、年頃になったら鬼族と人族から恋人…
[良い点] 人間からの略奪を当然としていた鬼が、子育てを経験する事で優しさに目覚めていく過程が良いですね。 桃を食べた鬼女が授乳出来るようになったのは、生を司る霊薬としての桃の機能が作用したからとも取…
[一言] まさかの「鬼」ルート!? でも、この「鬼」って、実は外国人海賊が「妖怪化」したと神話で言われていた連中がモデルだったようです。
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