【混ぜるな危険】◯◯◯の恩返し
色々あってこんな形で更新する事になったのは、私の責任だ。
だ が 私 は 謝 る 。
本当にすみませんでした!
明日、ちゃんと予告のパロディ昔話は更新しますので、どうかお許しください……!
昔々、あるところに一人の猟師がおりました。
ある日、山の中を歩いていると、猪用の罠に何かがかかっているのを見つけました。
「くっ! 放せ! こんな事で私は屈しないぞ!」
鎧の紋章を見る限り、現在国境を挟んで軍の睨み合いが続いている、隣国の女騎士のようでした。
猟師は女騎士を罠から外してあげました。
「おめおめと敵の手に落ちるとは騎士の恥……! さぁこの首を取って手柄にするがいい!」
「いや、面倒なんで結構です」
「何だと!?」
猟師は自国の状況を話しました。
貴族が平民を見下している事。
もし猟師が女騎士を引き渡したとしても、何の報償も得られない事。
それを聞いた女騎士は、深々と溜息をつきました。
「隣国の前線の連携に違和感があり、原因を探れと言われて来たが、そうだったのか……。そんな貴族が指揮官では、前線の兵も士気が上がるまい……」
「なのでしばらくここで休まれたら、見つからないように国に帰ってください」
「なっ! 貴様、私をここに留め置く気か! 籠絡して本国に戻らせない気だな!」
気色ばむ女騎士に、猟師は曖昧な笑みを浮かべます。
「……だって、あんな動物しかかからないようなあからさまな罠に引っかかるくらい弱っていたんですよね?」
「くっ……!」
「そんな状態でお帰ししたら、さくっと捕まって僕まで連座でお咎めを受けますよ。どうか元気になるまでうちにいてください」
「おのれ……! 今は貴様の提案に乗ってやろう……! だが忘れるな! あの罠の餌が美味しそうだからかかった訳ではない事を!」
「今ご飯用意しますねー」
そうして女騎士は猟師の家にしばらく滞在しました。
温かいご飯と柔らかい寝床、そして優しい猟師のもてなしに、女騎士はみるみる元気になりました。
そして一月後、女騎士は猟師の元から去る事になりました。
「大変世話になった。しかし私は国の為に働く義務がある。……済まない」
「元気になって良かったです。どうかお気をつけて……」
「……かたじけない」
そうして女騎士は去っていきました。
しばらくして、森の中に住む猟師の元にも、隣国との間に和平条約が締結され、関係が改善されたという話が届きました。
あの女騎士がいる国と戦争にならなくて良かったと、猟師は安心しました。
そんな猟師が一日の仕事を終えてくつろいでいたある日、家の戸を叩く音がしました。
「くっ、すまない! 旅の者だが、道に迷った! 一晩宿をお借りしたい!」
猟師はどこかで聞いた事のある声だなと思いながら、戸を開けました。
そこには一人の美しい女性が、顔を真っ赤にして立っていました。
「その、世話になる!」
「どうぞゆっくりお過ごしください」
猟師は別室に布団を敷き、そこに女性を案内しました。
女性は何か肩透かしを食らったような顔をしながら、別室で休みました。
そして翌日。
「一晩世話になった! 何か恩返しがしたいが、何か望みはないか!」
「そうですね。特には」
「そ、そんなはずは……! ほら、こんな山奥で、女手がないと、男性は、その、困る事も、あるとかないとか……!」
「あぁ、じゃあ猟に行っている間に、ご飯とか作ってくれていると助かります」
「ごは……!? あ、あぁ、任せておけ!」
そうして猟師は猟に行きました。
夕方、獲物を抱えて家に帰ると、
「うぅ……、すまない……」
台所で項垂れている女性の姿がありました。
周囲には悪戦苦闘の跡が見られました。
「戦場では簡易な食事しかしていなかったから、本格的な料理となると勝手が分からず……」
「戦場にいた事があるんですね?」
「あっ! ち、違う! えっと、その……、そう! 厨房は戦場のようだというあれだ!」
「そうですか」
猟師は優しく頷きました。
そして台所を手早く片付けると、さっと夕食を作りました。
女性はバツが悪そうにその夕食を食べました。
食後の片付けを終えたところで、女性が思い詰めた顔で猟師に言いました。
「ほ、他に何か望みはないか! ……その、せ」
「洗濯ですか。助かります」
「洗濯!? あ、あぁ、任せておけ! ……はぁ」
元気よく答えた後、女性はがっくりと肩を落とすのでした。
そして案の定翌日洗濯物を泡まみれにして、猟師にリカバリーしてもらうのでした。
「……なぁ」
「はい? ご飯ですか? 今日は山猪の燻製肉を……」
「待ってくれ!」
「あ、嫌いでしたっけ? そしたら今から川魚を獲って」
「違う! 山猪は好きだ! そうじゃなくて……!」
「……」
女性の思い詰めた顔に、猟師は居住まいを正しました。
「……ここで世話になって、もうすぐ一年経つ……」
「そうですね」
「その間、たまに行商人が来たりはするが、基本二人きりだ」
「そうですね」
「なのにお前には、その、女の影は、えっと、そんなにないというか……」
「全然ないって言って構いませんよ」
「そ、そうか……。それは良かっ……、じゃなくて! わ、私に、その、な、何もないのは、その、私に、魅力がないからからかなって、ちょっと、その、不安に……」
「……」
猟師は女性の手をきゅっと握りました。
「な、な!?」
「……ずっと、ずっと我慢してきました。あなたはり、旅の方ですから。でもあなたがそれを求めてくれているのなら……!」
「えっ、ちょっ、何を……!?」
「……わかっているのでしょう? 『我慢』という意味を……」
「……ぁ、ぁぅ……」
「……嫌なら嫌と言ってください」
「い、嫌な訳があるか! 私は、その、お、恩返んぐっ!?」
「……っぷは。……じゃあ、恩返しをしてもらいましょうか……」
「……はぇ……? えっ!? ちょっ、待っ、その、い、嫌ではないけど、その、は、恥ずか」
猟師は美しい奥さんと沢山の子宝に恵まれて、いつまでも幸せに暮らしましたとさ。
めでたしめでたし。
読了ありがとうございます。
……寒村に嫁が来る。
これだけで全てが救われると思わんかね……。
嫁不足は何も寒村だけの話じゃないんですよ本◯先生!
明日こそ『食わず女房』で書かせていただきます。
よろしくお願いいたします。