大きなかぶ その一
日曜の元気なご挨拶。
パロディ昔話第七十二弾。
今回は「大きなかぶ」です。
おじいさん、おばあさん、孫、犬、猫、ネズミが力を合わせてかぶを抜くお話。
しかし何故最後にネズミが加わったところでかぶは抜けたのでしょうか?
その疑問を私なりの解釈で書いてみました。
どうぞお楽しみください。
昔々、あるおじいさんが、畑にかぶの種を蒔きました。
「大きな大きなかぶになれ。甘い甘いかぶになれ」
おじいさんがせっせと世話をしていると、それはそれは大きなかぶが実りました。
「よし、抜くとしよう。うんとこしょ、どっこいしょ」
しかし、かぶは抜けません。
そこでおじいさんはおばあさんを呼びました。
二人は力を合わせて引っ張ります。
「うんとこしょ、どっこいしょ」
「うんとこしょ、どっこいしょ」
まだかぶは抜けません。
そこでおばあさんは孫を呼びました。
三人は力を合わせて引っ張ります。
「うんとこしょ、どっこいしょ」
「うんとこしょ、どっこいしょ」
「うんとこしょ、どっこいしょ」
まだまだかぶは抜けません。
そこで孫は犬を呼びました。
三人と一匹は力を合わせて引っ張ります。
「うんとこしょ、どっこいしょ」
「うんとこしょ、どっこいしょ」
「うんとこしょ、どっこいしょ」
「わんとこしょ、どっこいしょ」
それでもかぶは抜けません。
そこで犬は猫を呼びました。
三人と二匹は力を合わせて引っ張ります。
「うんとこしょ、どっこいしょ」
「うんとこしょ、どっこいしょ」
「うんとこしょ、どっこいしょ」
「わんとこしょ、どっこいしょ」
「にゃんとこしょ、どっこいしょ」
それでもまだかぶは抜けません。
そこで猫はネズミを呼びました。
三人と三匹は力を合わせて引っ張ります。
「うんとこしょ、どっこいしょ」
「うんとこしょ、どっこいしょ」
「うんとこしょ、どっこいしょ」
「わんとこしょ、どっこいしょ」
「にゃんとこしょ、どっこいしょ」
「ちゅーとこしょ、どっこいしょ」
するとかぶがすぽーんと抜けました。
「おお、みんなのお陰でかぶが抜けた。ありがとう。今晩はお祝いじゃ」
おじいさんの言葉に、みんなは手を叩いて喜びました。
「……」
ただ一匹、ネズミを除いて……。
お祝いが終わり、それぞれが部屋に戻った夜。
ネズミはおじいさんの部屋に入っていきました。
「おや、ネズミじゃないか。こんな夜中にどうしたんじゃ?」
「……」
ネズミはしばらく黙った後、意を決して口を開きました。
「……今日のかぶ、おじいさん、本当は一人でも抜けたんじゃないか? ボクがいつも犬や猫に追いかけ回されているから、それで……」
「そんな事はない」
おじいさんはネズミの頭を撫でて、優しく言いました。
「あのかぶはみんなの力がなければ抜けなかった。おばあさん、孫、犬、猫、そしてお前さんがいてくれたから抜けたんじゃよ」
「おじいさん……!」
ネズミの表情が明るくなったのを見て、おじいさんは満足そうに頷くと、百キロのダンベルを片手で持ち上げ、トレーニングを再開しました。
「ボクもいつかおじいさんみたいに、優しくて強いネズミになるんだ……!」
そう言いながらネズミは見事に仕上がっているおじいさんのマッチョな肉体を、うっとりと眺めるのでした。
めでたしめでたし。
読了ありがとうございます。
やはり筋肉……!
筋肉は全てを解決する……!
この後ネズミは体格差などものともしない、超パワーを身につけます。
しかしおじいさんに憧れるネズミは、犬や猫に復讐などせず、優しく許す事でしょう。
次回は『食わず女房』で書こうと思います。
どうぞよろしくお願いいたします。