異世界転生したら男性から求婚が絶えない私ですが、絶対元の世界に帰るんです!
遅くなりましたが日曜の元気なご挨拶。
パロディ昔話第七十弾。
キリ番なので、元話は伏せてお送りしたいと思います。
どうぞお楽しみください。
「はぁ、困ったわ……」
私はもう何度目かかわからない溜息を漏らす。
この世界に転生してもう何年経っただろう。
あぁ! 元の世界に帰りたい!
最初は元の世界のしがらみから離れた、のどかで良いところだと思っていたけど、今はスローライフどころじゃない!
何で私なんかに求婚が殺到するの!?
髪が痛むの嫌だから、元の世界の知識でシャンプーを作ってそれで洗ってただけなのに!
何なの!? この世界の男の人が、みんな重度の髪フェチって!
断り続けていたら噂が広がって、貴族まで私に求婚してくるし!
穏便に断るために、伝説級の宝物を要求したら諦めてくれたけど、今度はこの国の王様的な人まで私に会いたいとか言い出すし!
もうやだ!
そんな髪の事しか見てない人と結婚して幸せになれる訳ないじゃない!
「神様……! 私をこの世界に連れて来た神様……! 私を助けて……!」
『あれ? モテモテスローライフ、楽しくないですか?』
! 神様の声!
「神様! スローライフの部分は良かったんですけど、モテモテを何で付けたんですか!?」
『良かれと思って』
「そのせいでスローライフの部分までめちゃくちゃですよ! 元の世界に帰してください!」
『そっかー。ごめんね。じゃあちょっと準備するから、一月後に迎えを出すね』
「ひ、一月!? もっとぱっとできないんですか!?」
『いやー、元の世界に君の居場所作んないと。いきなりぽんと戻されても厳しいでしょ?』
「た、確かに……」
『その間に身近な人達にお別れしておいてねー』
「わかりました! 一月後、よろしくお願いします!」
あぁ良かった。
これで私は元の世界に帰れる。
子どもに転生した私を育ててくれた二人には、ちょっと申し訳ない気持ちもあるけど、今の求婚者が毎日のように押しかける現状が続くよりは良いはず。
あ、神様に頼んで元気で長生きできる薬を餞別に用意してもらおうかしら。
お金は私のシャンプーの売上でたくさんあるものね。
空に輝く大きな満月に向かって、私は憂鬱ではなく安堵の溜息を漏らしたのだった。
読了ありがとうございます。
もう今回はヒントも何もいらないと思うあのお話です。
逆ハーレム展開も、本人が望まなければただの地獄……。
次回は『笠地蔵』で書こうと思います。
よろしくお願いいたします。