人魚姫 その二
日曜の元気なご挨拶。
パロディ昔話第六十六弾。
今回は『人魚姫』でお送りします。
悲しい結末はありません。
力強いハッピーエンドをお楽しみください。
昔々ある海の底に、海の生き物の国がありました。
その国には美しい人魚姫がいました。
人魚姫は時々海を通る船から落ちる、人間の世界の物に興味津々。
様々な物を集めてはコレクションにしていました。
そんなある日の事。
「嵐だわ。こういう日には、人間は積荷を海に渡してくれる事があるのよね」
人魚姫は海の上に顔を出してみました。
折しも大きな船が、近くを通っているところでした。
「あ! 人が!」
人魚姫は嵐に荒れる海をものともせず、波間でもがく青年を助け上げました。
「わぷっ! はぁ、はぁ……。た、助かった……?」
「わ、素敵な人……」
人魚姫はその青年の美しさに目を奪われました。
すると船から叫び声が聞こえました。
「王子ー! 大丈夫ですか王子ー! 誰か! 早くお助けしろ!」
「まぁ、あなた王子様なのね」
「き、君は……? 何故海に……?」
人魚姫は意識が朦朧としている王子様をじっと見つめると、悲しそうな顔をしました。
「このまま一緒にいたいけど、あなたは海の中じゃ暮らせないものね……。だったら、そぉい!」
「うわぁっ!?」
人魚姫は王子様を船の上まで放り投げました。
王子様は見事船の上に着地しました。
「お、王子!? い、一体何が……!?」
船の上から王子様の部下が海を見下ろすと、人魚姫は海の中へと潜っていきました。
それからというもの、人魚姫は明けても暮れても王子様の事で頭がいっぱいです。
何とかもう一度王子様に会いたいと、海の底の魔女に相談しました。
「ねぇ魔女さん! 私王子様に会いに行きたいの! 良い方法はないかしら!」
「はっはい! この薬をどうぞ!」
人魚姫が力強く頼むと、魔女はヒレを足に変えて地上に出られる薬を渡しました。
早速それを飲んだ人魚姫は、勢いよく地上へと飛び出しました。
その頃王子様も、海で自分を救ってくれた女性を探していました。
「何としてでも探し出せ! あの美しい方を何としても将来の妃として迎えたい!」
何隻もの船を出して人魚姫を探す王子様の船に向かって、水柱を蹴立てながら人魚姫が海の上を駆けて行きます。
「おぉ! あの美しく鍛え上げられたシルエット! 間違いない! あれこそ探し求めていた女性だ!」
「はっ!」
海面を蹴って王子様の前に降り立った人魚姫は、その入道雲のような身体をかがめて王子様の手を取りました。
「お会いしとうございました、王子様!」
王子様は目を輝かせてその手を握り返します。
「僕もだ! どうか私の妃になってほしい!」
「喜んで!」
こうして人魚姫は王子様と結ばれました。
その後、王子様の国は何故か周りの国との争いがなくなり、また何故か盗賊などの悪い人が急速にいなくなり、とても平和になったという事です。
めでたしめでたし。
読了ありがとうございます。
やはり筋肉……!
筋肉は全てを解決する……!
ちなみに盗賊達は人魚姫(筋肉)を見て「もうだめだぁ……。おしまいだぁ……。勝てるわけがない……」と全速力で逃走しました。
物理的に消したわけではないのでご安心を。
次回は『ヘンゼルとグレーテル』で書こうと思います。
よろしくお願いいたします。