桃太郎 その三
日曜の元気なご挨拶。
パロディ昔話第六十五弾。
今回は久々初心に返って『桃太郎』で書きました。
前回の『桃太郎』はだいぶ遊びが過ぎたので、今回は原作に寄せてみました。
……寄せただけです。
どうぞお楽しみください。
昔々あるところに、おじいさんとおばあさんが住んでいました。
ある日おじいさんはいつものように山へ芝刈りに、おばあさんは川へ洗濯に行きました。
おばあさんが川で洗濯していると、上流から大きな桃がどんぶらこどんぶらこと流れてきました。
「おぉ、これはなんと大きな桃じゃ。じいさまと一緒に食べるべ」
おばあさんは桃を家に持って帰りました。
「ばあさま、今帰ったぞ」
「おぉ、じいさま。川で大きな桃を拾ったんじゃ。二人で食べるべ」
「それはえぇ。早速切ってみるべ」
おじいさんが桃を切ると、中から元気な赤ちゃんが出てきました。
おじいさんとおばあさんは驚きましたが、赤ん坊があまりにも可愛いので、『桃太郎』と名付けて大事に育てる事にしました。
桃太郎はすくすくと大きくなりました。
ある日の事。
桃太郎は近くの村々が、鬼ヶ島から来た鬼に襲われ、宝を奪われたという話を聞きました。
村の人達はいつこの村が襲われるかと怯えておりました。
そこで桃太郎が立ち上がります。
「おじいさん、おばあさん、私は悪さをする鬼達を止めに行きたいと思います」
「そんな! 鬼は大層乱暴と聞く! 可愛いお前が怪我でもしたら……!」
「どうか考え直しておくれ桃太郎!」
おじいさんとおばあさんは必死に説得しましたが、桃太郎の決意は固く、二人は仕方なく鬼退治の旅に出る事を受け入れました。
それでも可愛い桃太郎が傷付かないようにと、おじいさんは軽くて丈夫な鎧兜を用意しました。
おばあさんは日本一のキビ団子を用意しました。
「必ず鬼の悪さを止めて参ります」
桃太郎はそう言って村を後にしました。
しばらくいくと犬がいました。
犬種はポメラニアンでした。
大層もふもふしていて可愛らしい姿でした。
「わぁ、可愛いなぁ。よーしよしよし」
「わふぅ〜ん……。何て絶妙な撫で心地だわん……」
桃太郎に撫でられ、ポメラニアンはうっとり。
その上キビ団子までもらってすっかり懐いたポメラニアンは、一緒に行く事にしました。
また少し行くと猿がいました。
ショウガラゴ、またの名をブッシュベイビーという種類の、目のくりっとした小型の猿でした。
「わぁ、可愛いなぁ。よーしよしよし」
「きぃ〜……。たまらない撫で心地だきぃ……」
桃太郎に撫でられて、ブッシュベイビーもうっとり。
その上キビ団子までもらってすっかり懐いたブッシュベイビーも、一緒に行く事にしました。
また少し行くと、鳥がいました。
『可愛い鳥』で検索するとトップに出てきて、雪の妖精とも言われる白くてまん丸なシマエナガでした。
「わぁ、可愛いなぁ。よーしよしよし」
「ちぃ〜……。何て見事な撫で心地だちぃ〜……」
桃太郎に撫でられて、シマエナガもうっとり。
その上キビ団子までもらってすっかり懐いたシマエナガも、一緒に行く事になりました。
海を渡り、桃太郎一行は鬼ヶ島にやって来ました。
「鬼達よ! 悪さを止めて、村人達に宝物を返すんだ!」
「あぁ!? この鬼ヶ島に乗り込んで来るとはどこの馬鹿……、はぁん! めっちゃ可愛いわんちゃん!」
門番の鬼は重度の犬好きでした。
ポメラニアンは首を傾げながらお願いしました。
「門を開けてほしいわん。そしてボク達の仲間になるわん」
「はっ。仰せのままに」
門番が仲間になりました。
その上キビ団子までもらって、忠誠心はマックスです。
「何だ!? 侵入者か!? 門番は何をやって、はぁん! 昔アニメで観た天使! ブッシュベイビー様ぁ!」
見回りの鬼は、ブッシュベイビーのヘヴィなファンでした。
ブッシュベイビーは見回りの鬼に、大きな瞳を潤ませてお願いします。
「悪い事をやめて、仲間になってほしいきぃ」
「イエス、マイエンジェル」
見回りの鬼も仲間になりました。
その上キビ団子までもらって、忠誠心は振り切れました。
「何者だ! ここはお頭のお屋敷だ! 何人たりとも通、はぁん! シマエナガちゃん! 数万の画像と数千の動画でしか見た事のなかったシマエナガちゃんが現実に!」
屋敷を守る鬼は、同好の士からも若干引かれるレベルのシマエナガラブでした。
シマエナガはちょんと鬼の肩に乗ってささやきます。
「頭っていう人のところに連れて行ってほしいちぃ。あと私達を守ってほしいちぃ」
「貴方様の為に死する事こそ我が喜び」
屋敷を守る鬼も仲間になりました。
その上キビ団子までもらって、忠誠心は限界突破しました。
他にも鬼は多数いましたが、皆同じ末路をたどりました。
そしてとうとうお頭の部屋までたどり着きました。
「……うちの部下共が全員寝返るとはねぇ」
にやりと笑ったお頭は、妖艶な女鬼でした。
部下を失ったにも関わらず、その余裕は崩れません。
「まぁいいさ。そいつら全員が束になったって、あたしには敵わないんだからな」
金棒を手に立ち上がったその身体からは、絶対強者のオーラが立ち上っていました。
「……お頭に敵わないのは百も承知!」
「俺達は盾になりさえすれば良い!」
「肉体は滅びても捧げた魂は永遠に不滅!」
「小動物の可愛さに屈した馬鹿共が、偉そうに吠えるんじゃないよ!」
一触即発の空気が満ち満ちます。
そこに、甲冑姿の桃太郎が前に出ました。
「お? 一騎討ちかい? そういうのは嫌いじゃないよ! かかって来な!」
「いえ、私は悪さを止めてくれさえすればいいのです。貴方と戦う気はありません。話し合いたいのです」
「何だい? 怖気付いたのかい? なよっちい声しやがって! 話し合うって言うんなら、まずその鎧兜を外してツラを見せな!」
「……わかりました」
お頭の言葉に、桃太郎は兜の紐を緩めました。
「な……!」
兜を下ろしたその顔に、お頭も鬼達も、お供のポメラニアンとブッシュベイビーもシマエナガも絶句しました。
涼やかな瞳。
整った鼻筋
たおやかな唇。
丸く小さな顔。
きめ細やかな肌。
あどけなく、かつどことなく色気漂う紅の頬。
全てが完璧に調和し、美を体現していました。
「……これで話し合いに応じてく」
「話し合います! 話し合うどころか全面降伏します! 悪さも止めます! 何でも貴方の言う通りにいたします!」
「そうですか。ありがとう」
「はぁん!」
輝くような桃太郎の微笑みに、お頭は胸を押さえて倒れました。
こうして鬼達は悪さを止め、村々に宝を返しました。
そしてそのまま村に住み着き、桃太郎一行と仲良く幸せに暮らしましたとさ。
めでたしめでたし。
読了ありがとうございます。
可愛いは正義。
正義は勝つ。
つまり可愛いしか勝たん(三段論法)。
子ども達に話す時は、可愛い動物で鬼達を全面降伏させていましたが、今回お頭とのやり取りを追加してみました。
仮面の下は美少年、良いですよね。
そして気の強い系姐さんの手のひら返し、大好きです(迫真)!
次回は『人魚姫』で書こうと思います。
よろしくお願いいたします。




