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泣いた赤鬼 その三

日曜の元気なご挨拶。

パロディ昔話第六十三弾。

二度ある事は三度ある、『泣いた赤鬼』その三となります。

ふと、「村人の前で見せた喧嘩って、プロレスみたいだな……」と思ったところからこの話が生まれました。

プロレスにはあまり詳しくないので、雰囲気だけ楽しんでもらえたら嬉しいです。

後はBGMに『sunrise』(スタン・ハンセンのテーマ)のようなプロレスのテーマをかけると、多分盛り上がります(個人の感想であり、効果を保証するものではありません)。


どうぞお楽しみください。

 さぁ大変な事になってまいりました!

 山から降りてきた青い鬼!

 その丸太のような太い腕を振るって暴れ回っております!

 私を含め、村の者になす術はありません。

 このままこの村は鬼に蹂躙されてしまうのか!?

 滅びの運命はもはや確定的なのか!?

 おおっとここで野太い足音が響く!

 何と! 何と二体目の鬼だ! 赤鬼だ!

 これは決定的だ!

 もはや我々は村を捨てて逃げるより生きる術は残されていないでしょう!

 な、何だぁー!? 赤鬼が青鬼にドロップキックだー!

 まさかこの赤鬼は我々を助けてくれるのか!?

 救世主と呼ぶべき存在なのか!?

 おっと、倒れた青鬼が立ち上がり、赤鬼に掴みかかります!

 これを真っ向から受け止める赤鬼!

 息詰まる睨み合い!

 おっと青鬼が体をかわし、よろけた赤鬼の背中に水平打ち!

 これは痛い! 赤鬼、地面に転がり悶絶ー!

 さらに青鬼のストンピング! 容赦ない追い討ち!

 赤鬼、転がって距離を取り、立ち上がります!

 おっと青鬼に向かって走り出した赤鬼!

 凄まじい勢いで赤鬼の腕が青鬼の首を刈るー!

 赤鬼の腕を支点に、回転するように倒れる青鬼!

 ここで赤鬼が近くの木箱に登り、まさか、まさか!

 跳んだー! フライングボディプレスだー!

 赤鬼の巨体が青鬼を押し潰すー!

 なす術なく食らった青鬼! これは立てないか?

 いや、立った! 立ち上がった!

 俺はまだやれると言いたげな不敵な笑み!

 凄まじい闘志! 蒼き炎と呼ぶべき猛々しさ!

 赤鬼にかかってこいと言わんばかりの手招き!

 赤鬼も不敵に微笑み、再び助走!

 またあの凄まじいラリアートが炸裂するのか!

 な! 何と! 青鬼、身体を低く潜り込ませ、そのまま掬い上げるように持ち上げる!

 赤鬼の身体が弧を描き、ブレーンバスターが炸裂ー!

 地響きすら感じるこの衝撃!

 倒れた赤鬼に青鬼はさらなる追撃を重ねようと跳んだー!

 エルボードロップが突き刺さるー!

 胸を押さえて苦しむ赤鬼!

 これはもう無理か!? 立てないのか赤鬼!?

 いや! まだだ! 立ち上がる!

 ダメージは小さくないはずですが、それでもそのファイティングポーズは揺るぎません!

 それはまるで赤き巨石!

 村を守ろうとする鉄壁の盾!

 村人が声援を送ります!

 いいぞ赤鬼! 頑張れ赤鬼!

 いや、この激闘を見て、青鬼へも声援が送られています!

 負けるな青鬼! 頑張れ青鬼!

 おっと青鬼、村人を威嚇!

 お前達のために戦っているわけではないと主張しているようです!

 しかし我々の魂には火がついてしまった!

 もう消す事はできません!

 さぁ再びがっぷり四つという組み合い!

 ぎりぎりと力が均衡しています!

 あっと、青鬼が体をかわして赤鬼の後ろを取った!

 そのまま持ち上げ、ジャーマンスープレックス!

 これは効いたかー!?

 首を振って立ち上がる赤鬼に迫る青鬼!

 おっと青鬼のラリアートをかわした赤鬼、何と、パワーボムを決めたー!

 先程のお返しと言わんばかりの表情!

 立ち上がった青鬼も、不敵な笑みで返します!

 まさに互角! まさに一進一退!

 ほとばしる力! 飛び散る汗!

 男と男の勝負はまだまだボルテージを上げていきます!




 日が傾いてきました。

 両者体力も限界でしょう!

 おっと青鬼が仕掛けた!

 残る力を振り絞ってのドロップキックだー!

 何と赤鬼! 真正面から受け止めた!

 そのまま足を掴んで、ジャイアントスイングだー!

 回る! 回る! このまま空も飛べそうな勢いで回り、あっ! 天高く放ったー!

 地面に落ちた青鬼ー! 立ち上がれません!

 赤鬼が右腕を高々と上げました!

 赤鬼の勝利です!

 泣いています! 泣いています!

 赤鬼が勝利の涙に濡れております!

 村人達が駆け寄り、手ぬぐいで赤鬼の身体を拭いています!

 青鬼にも人々が駆け寄って、手当を始めたようです!

 あっと、赤鬼が青鬼に駆け寄ります!

 赤鬼が差し伸べた手に、青鬼も身体を起こしてがっちり握手!

 素晴らしい闘い、そして闘いが終われば爽やかな友情を見せてくれた両英雄に、大きな拍手が巻き起こります!

 おっとここで村長が二人を名誉村民として迎える事を発表!

 誰の異議も上がりません!

 青鬼が、いや俺は、ともごもご言っていますが、耳を貸す村人は一人もおりません!

 おっと村の奥様方が、家からあり合わせの食事を持ち寄り始めました。

 これは……、宴会だー!

 激闘を讃え、また新たな村人となった二人を祝い、宴会が始まろうとしているー!

 酒が注がれ始めました!

 こうしてはいられない!

 本日の実況はここまでとさせていただきます。

 実況は私、新太刀しんたち二郎じろうがお送りいたしました。

 あ! 乾杯待ってー!

読了ありがとうございます。


青鬼「あ…… ありのまま 今 起こった事を話すぜ!

『おれは 赤鬼と八百長勝負をしていたと思ったら いつのまにか村に迎え入れられていた』

な… 何を言っているのか わからねーと思うが おれも 何が起きたのか わからなかった……」


プロレスの熱気の前には種族の違いなど無駄無駄ァ!


なお新太刀二郎って誰やと思う方は、パロディ昔話第三十七弾『おむすびころりん その一』をお読みください。

解説好きのよくわからん奴という事がわかります。


さて次回ですが、冬が終わりそうなので『マッチ売りの少女』で行こうと思います。

よろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 途中から二人とも八百長じゃなくて本気になってないでしょうか(笑) 定期的に二人の試合が興行として行われるようになって、それを見に来る客で村が繁栄しそうですね。 そのうちプロレス団体を村人…
[良い点] 手に汗にぎる名勝負。 赤鬼青鬼のファンタスティックなまでの死闘に、村人たちも魂を揺さぶられたのでしょう! ハッピーエンド、良いですね♪
[一言] 訳がわからぬうちに、作戦成功!?
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