金のがちょう その一
遅くなりましたが日曜の元気なご挨拶。
パロディ昔話第五十八弾。
今回は『金のガチョウ』です。
色々考えたのですが原作がぶっ飛んでるので、素材を活かした味付けにしてみました。
そうしたら伸びる事伸びる事……。
散りばめた小ネタをつまみに、お楽しみください。
昔々、ある森に小人が住んでいました。
小人は不思議な力を持っていましたが、それを目当てにするものばかりになり、嫌気がさして森に隠れ住んでいたのでした。
その結果、たまに森に入る人間をからかうのが唯一の趣味となるまで、ひねくれてしまったのでした。
「この世に打算なしに親切にするような奴はいねぇんだ」
ある日、森にひとりの男がやって来ました。
木を切るその男に小人は近づいて言いました。
「なぁあんた、わしは腹が減っておる。あんたの持っている食べ物と飲み物を少しだけ分けてはくれんか?」
「嫌だね。俺の分がなくなるじゃねぇか小汚いジジイが。お前にはそこら辺の木の実がお似合いだ」
小人はせせら笑う男に魔法をかけました。
すると男の手が滑り、斧で掌が浅く切れました。
「おおおおおおおれェェェェェェのォォォォォてェェェェェがァァァァァ~~!!」
大した傷ではありませんでしたが、手のひらが切れてしまってはもう木を切る作業はできません。
男は泣きながら帰っていきました。
小人は腹を抱えて笑いました。
翌日、昨日の男によく似た男が来ました。
その男にも食べ物と飲み物をせがみましたが、同じように断られました。
そこで小人は、同じように魔法をかけました。
すると男の手が滑り、斧で足が浅く切れました。
「おおおおおおおれェェェェェェのォォォォォあしィィィィィがァァァァァ~~!!」
怪我は大した事はありませんでしたが、男は泣きながら帰っていきました。
小人はやはり腹を抱えて笑いました。
翌日、また男がやってきました。
前の二人と顔は似ていましたが、みすぼらしい服装でした。
しかし表情は明るく、うきうきとした様子でした。
小人はその男に近づいて言いました。
「なぁあんた、わしは腹が減っておる。あんたの持っている食べ物と飲み物を少しだけ分けてはくれんか?」
「いーよ!」
「えっ」
男は自分の持っていた弁当を丸ごと渡してきました。
これには小人も目を丸くしました。
「お、お前さん、自分の分は?」
「あ、そっか。でもお腹空いてるのなんていつもの事だし。あははー」
「……お前さん、あまりご飯を食べさせてもらっていないのか……?」
「うん。でも僕末っ子で、兄ちゃん二人より馬鹿だから仕方ないんだってー」
「……」
衣服を見ても、家で大事に扱われていないのは明らかでした。
それなのに太陽のような笑顔。
小人はその末っ子の顔をまじまじと見ました。
「お前さん、将来どうなりたい?」
「んーとね、みんなが幸せになれたらいいなー」
「……そうか」
小人は一本の木を指差しました。
「あの木を切りなさい」
「うん」
末っ子は素直に木を切りました。
すると金色に輝くガチョウが、切り株の上に座っていました。
「そのガチョウを持ってお城に行くと良い。お前さんの願いはきっと叶うよ」
「ありがとう」
「何か困ったらすぐここに来るんだよ」
「わかったー」
末っ子は言われるまま、金のガチョウを持ってお城に向かいました。
その見事なガチョウを見て、宿屋の娘が声をかけます。
「そこの素敵なガチョウを持ったお兄さん! うちに泊まらないかい? 安くしとくよ?」
「でも僕お金ないよ」
「大丈夫さ! そのガチョウの綺麗な羽根を二、三本くれたらただにしたって……、あれ?」
宿屋の娘がガチョウに触れた途端、娘の手が離れなくなりました。
「あ! お姉ちゃん! 自分だけずるい! 私も欲しい! ……えっ、ちょっと、何で、取れない!」
「お姉ちゃん達どうしたの? 何遊んでるの? って、きゃあ! ちい姉ちゃんから手が離れない!」
宿屋の三姉妹は、順に繋がってしまいました。
「あ、でもお城に行かなきゃ。ついてきてー」
「えっ、待って待って!」
「手が離れないのよ!」
「いやー! おかーさーん!」
末っ子が気にせず突き進むと、三姉妹もそのままついてきました。
すると道ですれ違った司祭が、
「これこれ、年頃の娘さんが男を追いかけるなどはしたない。おやめなさい。……おやめなさいと言うのに……、おや?」
宿屋の末娘の袖を掴むと、そのままくっついてしまいました。
それを見た司祭の従者が、
「あ、司祭様! どちらに……? あ、あわわ! 司祭様から手が離れませーん!」
そのままくっつきました。
それを見ていたお百姓が、
「何してるだみんなして? 手が取れねぇ? そんな事ねぇだろ。おらが引っ張って……、およ!?」
くっつきました。
ガチョウにくっついた皆をぞろぞろと引き連れて末っ子が城下町に入ります。
その頃お城では、王様が笑わない一人娘のお姫様に頭を悩ませていました。
数多のお笑い芸人の心を折ってきたお姫様に、とうとう王様は、
『娘を笑わせた者を、婿として城に迎える』
とお触れまで出していました。
そんなところに末っ子が大勢を引き連れて到着しました。
おりしもお姫様が、王様と城下を眺めていた時でした。
「……姫や。今日こそ何か面白いものが見つかると良いな」
「……ぷふっ」
「! 今姫が、笑った……!?」
王様が姫の視線の先を見ると、金のガチョウを持った末っ子を先頭に、わあわあ言いながら歩く一団が見えました。
宿屋の娘三人に、司祭、従者、百姓と何ともまとまりのない組み合わせに、何とも言えないおかしさが漂っていました。
「笑った! 姫が笑った! おい! 誰か! 城下の金のガチョウを持った一団を連れて参れ!」
「はっ!」
兵士達に連れられて末っ子達は、王様とお姫様の前に来ました。
改めてその姿を見たお姫様は、再び笑います。
その途端、皆の手が離れました。
「あーん! やっと離れたー!」
「もう! ずっとお姉の袖とくっついてるかと思ったわ!」
「……私はそれでも良かったけど。ねぇ、ちい姉……?」
「いやはや、女性の袖に掴まるなど、神の怒りに触れなければ良いが……」
「司教様、それでしたら先月行ったあの店の方が……、あ、な、内緒でございました!」
「おら、野良仕事に戻らねぇと……」
思い思いに部屋を出て行く自由な一行に、お姫様は再び笑いました。
その様子に喜びつつも、王様は残った末っ子の姿がみすぼらしい事に不安を感じました。
「これで僕、お姫様のお婿さんですか?」
「いや、その……」
(こんな奴を姫の婿にして、国の王にして良いものか……)
そこで王様は末っ子を試す事にしました。
「城の蔵のワインを飲み干せる者を連れて来てみよ」
「わかりました」
末っ子はとりあえず森に行って、小人に相談する事にしました。
すると小人と会ったところに、男が一人座っていました。
「なぁあんた。私にワインを飲ませてくれないか。私はワインならいくらでも飲めるんだ」
「じゃあ一緒に来てください」
末っ子は男を連れて城に戻りました。
男は王様の言う通り、蔵のワインを全て飲み干しました。
驚いた王様は続けてこんな事を言いました。
「城の大釜のパンを食べ尽くせる者を連れて来てみよ」
「わかりました」
末っ子はまた森に行って、小人に相談する事にしました。
すると小人と会ったところに、男が一人座っていました。
「なぁあんた。私にパンを食べさせてくれないか。私はパンならいくらでも食べられるんだ」
「じゃあ一緒に来てください」
末っ子は男を連れて城に戻りました。
男は王様の言う通り、大釜のパンを全て食べ尽くしました。
王様は、
(こんなすごい男なら、もっと国の利益になるものを命じれば良かった……)
そう思って、海も陸も走る船を頼みました。
末っ子は再び森に行きました。
そこには小人がいて、水陸両用の船が用意されていました。
「これを王様のところに持って行きなさい。それでお前さんは次の王様だ」
「ありがとうございます。でも何で僕にこんなに尽くしてくださったんです?」
「お互い様でさぁ。お前さんに食べ物を分けてもらった時は、もっと嬉しかった……」
読了ありがとうございます。
小人に昼飯あげたら王様になれたでござるの巻。
その動機を少し掘り下げたら、なぜか無免許名医の名台詞が浮かんでしまったので、こんな流れになりました。
冗長ですみません!
次回は『雪白と薔薇紅』で書こうと思います。
よろしくお願いいたします。




