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裸の王様 その一

日曜の元気なご挨拶。

パロディ昔話第五十一弾。

今回は『裸の王様』です。

とある私の大好きなものと勝手にコラボしてますが、気にせずお楽しみください。

 昔々あるところに、とてもおしゃれで賢い王様がいました。

 王様は人前では決して冠を取らず、服も羊毛百パーセントの特別製にこだわっていました。

 ある時城に、旅の仕立て屋を名乗る男がやってきました。


「おしゃれな王様に特別な服を持ってまいりました。『馬鹿には見えない服』でございます」


 仕立て屋がそう言って箱から何かを取り出しましたが、何も見えません。


「おいじじい。どう思う」


 王様の問いに先代の王は、得意げな顔で答えました。


「任せろフッフッフッ。ワシはおしゃれをよく知ってる。この服の着こなし方を教えてやるよ。リラックスした気分で安心しておれ」

「……そうか。占い師、どう思う」


 占い師は(……何も見えませんが……)と思いつつも、先代の王に恥をかかせないよう、頷きました。


「素朴な素材のいい服です……。私が保証しますよ」

「……そうか。おい側近。お前はどう思う」


 自分と同い年の側近に話を振ると、少し考えて、


「僕は服には詳しくないので何とも言えない。お二人の意見を支持するよ」


 と答えました。


「そうか。剣士、お前はどうだ」


 陽気な剣士は、大袈裟なリアクションで答えました。


「ん〜、イーイーッ。トレビアンだよト・レ・ビ・ア・ン! 俺の分も頼むぜ」

「……そうか。おいコソ泥娘。お前はどうだ」


 城に忍び込んで捕まった後、何やかんやとごねて居ついた娘は、目を丸くしました。


「何が何だかわからないけど、服って一体何の事なの……?」

「そうか。おい、モクを寄越しな」


 王様は煙草をふかすと、鋭い目で仕立て屋を見ました。


「俺もちょいと珍しいものを持っていてな。このタバコなんだが、面白い効果がある」


 ふぅー、と煙を吐くと、周りを見回します。


「五分以内に嘘をついた者が少しでも煙を吸うと」


 すっと、鼻の頭を指さしました。


「鼻の頭に血管が浮き出る」


 すると驚いた一同が鼻の頭を触ります。

 娘だけが(みんな、何やってんだ!?)と見回しました。


「嘘だろ王様!」


 鼻の頭を押さえた剣士の言葉に、王様はニヤリと笑いました。


「ああ嘘だぜ! だが……、マヌケは見つかったようだな」

「あっ!」


 仕立て屋が驚きの声を上げました。

 皆が仕立て屋に目を向けます。

 すると、仕立て屋は顔に凶悪な色を浮かべました。

 先代が王様に問いかけます。


「孫よ、なぜ仕立て屋が嘘つきだとわかった?」

「やれやれ、情けねーじじいだ。てめー歳のせいで注意力がにぶった事にしてやるぜ。とても血の繋がりがある俺の祖父とは思えねーな」

「シブいねェ……。まったくおたくシブいぜ」


 呆れた声を上げる王様に、正体を現したニセ仕立て屋はにやにやと笑いました。


「おい! 貴様は確かに旅の仕立て屋の証明を持っていた! 本物の仕立て屋はどうした!?」

「ククク、本物の仕立て屋は既に宿屋のベッドで寝ぼけてるぜ……。俺が奢った酒をたらふく飲んだからな……」


 占い師の言葉ににやにや答えるニセ仕立て屋。

 その余裕の顔に、王様がビシッと指を指しました。


「それじゃあてめーは、牢屋の床で寝ぼけな!」

「自慢じゃあないが俺の逃げ足は素早」

「オラオラオラオラオラ!」


 王様はニセ仕立て屋が腰を浮かせた瞬間に飛びかかり、拳を叩き込みます。


「ゲボーッ。は、配下よりも早く、こ……、攻撃してくるなんて……、そんな」


 ニセ仕立て屋はそう言うと気絶しました。


「おい占い師。何か言ってやれ」


 王様にそう言われて、占い師は咳払いを一つ。


「……オホン。我が国の王を騙そうなんて……」

「十年早いぜ」


 調子の良い剣士が後に続きました。

 すると王様がペンと手帳を取り出して何かを書き始めました。


「おや王様。何を書いているんだい?」

「お前達がありもしない服を誉めた事さ。忘れっぽいんでな。メモってたんだ」

「マジか孫よ! マジに言ってんの? お前」

「仕立て屋があんな男だとは思わなかった」

「全く嫌な気分だな。仕立て屋に化ける詐欺師なんて……」

「あの野郎、どうも仕立て屋ってのが嘘くさかったんだよな」

「やかましいッ! うっとおしいぜッ! お前らッ!」


 王様の一喝で、皆の表情が一変します。


「な、何でこんな所に詐欺師が来るの?」

「せ、先代……。わ、私すごく恥ずかしいです……」

「信じてくれ! 僕を信じてくれ!」

「……ごっ、ごっご、ごめーん! ワァーッ!」


 背を向ける王様に、なおも言い募る一同。


(カッコイイ……。しびれる〜ゥ)


 嘘をつかなかった娘だけが、うっとりと王様の含み笑いの横顔を眺めていたのでした。


 めでたしめでたし。

読了ありがとうございます。


ちなみに王様の冠は、髪の毛と一体化してます。

服は何か黒くて、ぶっといチェーンが付いてます。


セリフのパロディネタを探すために久々に単行本を読み返しましたが、やはり面白いッ!

グッド!


次回はお正月。

めでたい感じで『鶴の恩返し』でいこうと思います。

よろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 面白かったです! この王様、色々と破天荒なところがあって、家臣や国民を驚かせることが多そうですが、その行動の裏には深謀遠慮があって気付いたら上手に国を運営していそうですね。 この王様の…
[一言] 背を向ける前に一言、 「やれやれだぜ」というセリフが 私の心眼に映りました。
[一言] えっ!? そもそも、詐欺師だってバレたら、「バカには見えない服」が存在しないじゃん! てか、王様だれかに似てる!
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