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王様の耳はロバの耳 その一

日曜の元気なご挨拶。パロディ昔話第四十二弾。

今回は『王様の耳はロバの耳』です。

ハロウィンに絡めて遊んでみました。

どうぞお楽しみください。

 とある王国の理髪店。

 そこに頭を布で覆った王様が入ってきました。


「ちょっとえぇかな」

「いらっしゃいませー」

「んふふー、今日な、ハロウィンパーティ行かなあかんねんけどな」

「はい」

「パーティ行くのに髪ぼさぼさのままいうのもかっこ悪いやんか。そと出歩であるけへんやんかー」

「あーそれでその布。せやったらささっとやってまいますね」

「はよ頼むでー」


 椅子に座る王様。

 それを前にして理髪師はしばし固まります。


「……あのー」

「何や」

「その頭の布、取ってもらえませんかね?」

「え?」

「いや、『え?』やなくて。髪切るんですよね?」

「せやで」

「せやったら外してもらわんと」

「そこを何とかでけへん?」

「無理ですわー。髪切ってんだか布切ってんだかわかんなくなりますわー」

「プロやったら何とかできるやろ」

「プロかて限界はありますて。プロの料理人かて皮むいてから料理させてくれ言いますよ」

「皮言うなや。まぁでもそれももっともな話や。わかった取る。取るけどな。ワシの耳の事、誰にも言うたらあかんぞ」

「何でですか」

「えぇから言うなよ! えぇな! 絶対やぞ!」

「そこまで言うならわかりました」


 理髪師の返事を確認して、王様は頭に巻いた布に手をかけました。


「よし取るで」

「え! 王様、耳ロバやないですか! わー、びっくりや。ぱしゃっと」

「おい今写メ撮ったやろ! 何しとんねんお前」

「王、様の、耳、ロバ、なう、と」

「ちょいちょいちょい! 何SNSで拡散しようとしとんねん! お前話聞いてた!?」

「え、絶対言うなよっていうからフリかと」

「フリちゃうわ! あほかお前!」

「SNSでの投稿は『つぶやき』言うても口では言うてへんし、えぇかな、と」

「言うより凶悪な広がり方するやんけ! 怖いわー。お前の発想怖いわー」

「えぇやないですか。どうせ今日はハロウィンですし、ネタやと思って盛り上がりますって」


 理髪師の言葉に、王様の目が丸くなります。


「え、ホンマ?」

「ホンマですって。ほら、みんな仮装の投稿してますし」

「そっかー。仮装と思ってもらえるかなー」

「じゃあ投稿っと」

「おま、心の準備が!」


 すると理髪師の携帯に通知が来ました。


「お、さっそく反応が」

「何て?」

「『インパクトが弱い』」

「えぇ!? どういう事!?」

「まぁ年々仮装はレベルアップしてますからねー」

「ホンマか……」

「あ、他にも。『やるならゾウ耳くらいやらんと』『耳だけなら誰でもできるやん』『ケモナーの俺もこれには食指が動かない』」

「ぼこぼこやんけ! これやったらただの中途半端にスベった人やないか!」

「ぷっ、ホンマですね」

「何わろてんねん! しばくぞ!」


 理髪師は笑いを抑えながら、王様に聞きました。


「そもそも何でそんな耳になったんですか?」

「神さんの音楽対決で、みんなが竪琴えぇやんて言うから、いや笛のがえぇやんって言うたら竪琴の神さんキレよって、耳ロバにされてもうたんや」

「えぇー、それはひどないですか」

「ひどいやろ? 思たまま言うたらこれやで?」

「ならその神さんの話も拡散しましょか」

「え、大丈夫かそれ」

「まぁ僕も耳変えてみたいですし」

「仮装感覚でなるもんとちゃうけどなぁ」

「えーっと、『王様の耳がロバになったのは、神さんが音楽対決で自分に票入れなかったかららしいwww 竪琴の神さん沸点低すぎwww』と」

「煽るなぁ。……ん? 何や急に曇ってきたで」


 するとその時、雷が天井を突き抜けて、理髪師を直撃しました。


「ぎゃー!」

「わ! 部屋ん中に雷が! 大丈夫か理髪師!」

「え、えぇ、何とか……」

「あ! 頭アフロになっとるで!」

「わ! ホンマですやん! 耳はどうなってます!?」

「アフロでよう見えんけど……。あ! 豚の耳になっとるでお前!」

「ホンマですか!? やった! これはバズる!」

「えぇのかそれで……。それにしても神さん反応早かったなぁ」

「常時エゴサーチしてるんでしょうね」

「神さん暇か!」

「あ! 拡散に反応した他の人も、耳変わった言うて喜んでます! ゾウ耳もいますよ! 祭り確定ですね!」

「必死に隠しとったワシがあほみたいやないか……」

「さ! 町に繰り出しましょう!」

「……せやな!」




 こうして神様のおかげでハロウィンは大盛り上がり。

 耳を変えてもらった人達から、

「さすが神」

「これがほんとの神業」

「神様仕事早い」

「また神の話してる」

 と大いに褒められて、神様もご機嫌になり、翌日王様を含めたみんなの耳を元に戻しましたとさ。


 めでたしめでたし。

読了ありがとうございます。


冒頭で斧とインディアン衣装とあのリズムが浮かんだ人、僕と握手!


次回は『ブレーメンの音楽隊』で書こうと思います。

よろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 結果として耳を元に戻して貰えて王様良かったですね。 機嫌の良くなった上位存在に嫌なものを取って貰う、なんとなくこぶとり爺さんを思い出してしまいました。 下手に隠すからみんなが暴こうとする…
[気になる点] エゴサーチしてる神 [一言] ハロウィンの日だけ働いてくれたらいいのですけどね。神様(笑)。
[一言] えっ!? 床屋、アクション早っ! 余談ですが、この王様は、神様に「何でも金に変える力」をもらって、暴走。 酷い目にあっているそうです。
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