オオカミと七ひきの子ヤギ その一
パロディ昔話第四弾。今回はオオカミと七ひきの子ヤギとなります。
童話の一番の悪役にして被害者であるオオカミの活躍にご期待ください。
昔々、お母さんヤギと七ひきの子ヤギが住んでいました。
ある日、お母さんヤギは町に出かけることになりました。
「お前たち、お母さんは町に行って来るけど、お母さんが帰るまで、決しておうちの扉を開けてはいけないよ」
お母さんはそう言うと、町へ出かけて行きました。
「うへへ……。あの家には子どもだけか……」
それを見ていた悪いオオカミが舌なめずりをしました。
「よし、母親のふりをして、忘れ物をしたとか言って家に入って、あの子ヤギたちを食ってやろう」
オオカミはお家に駆け寄り、扉を叩きました。
「みんな〜。お母さんよ〜。忘れ物をしちゃったから、ここを開けて〜」
お家の中で、話し合う声や、何かごとごとと音がしています。
(気付かれたかな……?)
しかし程なくしてカギが開く音がしました。
オオカミは喜び勇んで飛び込みました。
「さぁ子ヤギども、食ってやぶんっ!」
オオカミは落ちてきたタライに頭をぶつけました。
「わなというものは あいてにふしんかんをいだかせずに はめるもの だ」
「つ〜! 何をしやがるこのガキ!」
オオカミは手近にいた子ヤギに飛びかかりました。
しかし足元に縄跳びの縄が貼られていて、盛大に転びました。
「あしもとが おるすになってますよ」
「いてて……! お前らぁ!」
起き上がったオオカミは、顔を真っ赤にして追いかけ、一匹を捕まえました。
「まだあわてるような じかんじゃない」
「うるさい! まずはお前からだ!」
その時、他の子ヤギがオオカミの尻尾に辞書を落っことしました。
「まったくおもてえなぁ」
「ぎゃあ!」
思わず手を離したオオカミ。尻尾にふーふーと息をかけます。
「やりやがったな!」
辞書を落とした子ヤギを、オオカミは追いかけます。そこに別の子ヤギが、ミニカーを置いたからたまりません。
「ぼんぼやーじゅ(よいたびを)」
「う、わ、おっ、とっ、と……!」
勢いのまま滑るオオカミの顔の高さに、椅子に登った子ヤギがバットを構えます。
「かったばかりのばっとの なぐりぐあいをためさせろ」
「くらうか!」
ひょっと頭を下げるオオカミは、振り返って舌を出します。
「そんな手に引っかかるわけないだぶらばっ!」
「すきをしょうじぬ にだんがまえ」
もう一匹が構えていたフライパンに後頭部を強打され、頭が丸く平べったくなるオオカミ。
オオカミの頭の周りには、星とひよこが飛び回っています。
「……お・の・れ・ら〜……!」
頭を振って立ち上がると、子ヤギたちが寝室に逃げ込むのが見えました。
「待てぇ!」
頭から湯気が出そうなオオカミが寝室の扉を開けました。
「やくしつない あつりょくじょうしょう」
「あんぜんそうち かいじょ」
「たーげっとすこーぷ おーぷん」
「でんえいくろすげーじめいど にじゅう」
「えねるぎーじゅうてん ひゃくにじゅっぱーせんと」
「たいしょっく たいせんこうぼうぎょ」
大きなゴムにくくりつけられたベッドが、子ヤギたちに引き絞られていました。
「わ、ちょ、やめ」
「はっしゃ」
子ヤギたちの手を離れたベッドは、オオカミに向かって一直線。
「やーなかーんじー!」
ベッドの直撃を受けたオオカミは、玄関から森の彼方へと飛んで行きました。
「やったね」
子ヤギたちはハイタッチをして喜びました。
その後オオカミは海の向こうまで吹き飛ばされ、そこで自分の経験を元にアニメを作り、大人気になりましたとさ。
めでたしめでたし。
読了ありがとうございます。
まさかあのアニメの原作者がオオカミだったなんてー(棒)。
ト◯とジ◯リーにはいつもお世話になっております。
子どもに語る時は「オオカミは待ち構えていた七ひきの子ヤギにボコボコにされました」で終わりでしたが、書き起こしに際して漫画の名台詞を埋め込んでみました。元ネタが分かった人は僕と握手!
オオカミの酷使は労基から何か言われそうなので、次回は日本の童話「一寸法師」でいこうと思います。
しょうもない話ばかりですが、お付き合い頂けましたら有り難いです。